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18.封印の証

翌朝、応接間に呼ばれたミリアは周りを不思議そうに見回した。勘のいい子だから、周りの雰囲気を感じ取っているのだろう。


サーラがミリアに近づき、ミリアの手を取って話す。

「ミリア、久しぶりにお姉ちゃんにミリアの本当の髪を見せてくれる?」

「うん。いいよ。」


瞬く間にミリアの髪色が変わる。ほとんど白く、僅かに緑ががった髪。まるでゲームで見た、妖精のようだ。


「あ、あぁ。そんな、どうして・・・。ミリアいつからそんなに白く・・・。」

「お姉ちゃん?」


涙をボロボロ零しながら、サーラはミリアを抱きしめる。影であるサーラにとって聖女はとても大切な存在なんだろう。


「あのね、お姉ちゃんを追いかけてロアで船を待っていた時に会ったおじちゃんに言われたの。今日から私の髪は白くなるって。」

「ちょっと待ったミリア。いつ会ったんだ?俺は知らないぞ。」

「ルルーが夜居なかった日があったでしょう?目が覚めたらルルーが居なくて、宿の周りを探していたらおじちゃんに会って、宿まで送ってもらったの。」

あぁ、あの歌姫して稼いでいた時ね。


「そのおじちゃんが言ったの。私の髪は白くなるって。そうなったら私は幸せになるって。私が分からないって言ったら、そのうちわかるよって言ってた。」


幸せになる?では、その男はミリアに何をしたのだろうか。俺は聖女ってよく分からない。狙われるならミリアが聖女でなくなってもいいと思う。俺は二人が笑ってくれればそれでいい。


「サーラ嬢、どういう事なのかな?」


オーガスタとドーラは相変わらず微笑んでソファに寛いでいる。


本当にこの人達は何者なんだろう。時々不安になる事がある。いい人だとは思うけど、あまりにも場馴れしてるって言うか、そんなに年も離れていないのに、落ち着きがあるって言うか。はっきりとは言えないもやもやしたものを感じる。


ミリアを撫ぜていたサーラの手が止まり、小さく息を飲む。サーラの視線の先にあったのは、ミリアの右耳の下にある、あのバラの封蝋と同じ形のバラの痣だった。


「まさか、封印。」


「サーラ嬢、説明を。」


真っ青になったサーラは首を左右に振り、二三歩後ずさったと思ったら、ふらつき後ろに倒れそうになった。


「サーラ、危ない。」


俺が支えようと差し出した手は、サーラに避けられた。

サーラは俺を睨んでくる。え?どうして?


「ルルー、どうしてこんな事したの?ひどい!」

「え?なんの事?」

「あなたしかできない事でしょ?どうしてミリアに封印をしたの?封印を解いて!」

「俺、知らないよ。サーラ、分からない。」


サーラは目に涙を浮かべながら俺を睨んでくる。

だから、なんだって言うんだ!


「お姉ちゃん、ルルーじゃないよ!」

「ルルーじゃない?」

「当たり前だ!俺を信じろよ。」


「サーラ嬢、封印とは?」


サーラは一瞬躊躇った後で、オーガスタに向き直った。


「聖女の力を封じるものです。」

「封じる?それがルルーとどう繋がるのかな?」

「封印は守護者にしか使えない力です。」

「解除は?」

「それも守護者だけ。」

「ふーん。守護者は一人じゃないんだね。」

「いえ、一人だけです。」

「それでは、ルルーは守護者じゃないと言うことか?」

「で、でも、ルルーには守護者の気配があります!」


俺以外に守護者がいるのか。どこに?守護者ならミリアの傍にいるべきだろ?


「じゃあ、ルルー解除してみたら?」

「できないよ。やり方分からないし。」

「サーラ嬢、教えてあげたら?」

「ごめんなさい。私にも分かりません。」

「では仕方ないね。」


ゲームだと、手をあてて【解除】とでも言えば、チャチャッとできるけど、まさかね。


「やってみていい?」

「うん?」


「【解除】」


封印の痣がスーッと消えた!まさか、こんなもの?単純過ぎない?


「おや、できたね。じゃあ、今度はもう一度封印してみようか?」

「う、うん。【封印】。あ、できた。」


「ちょっと待って下さい。解除して下さい。なんでまた封印するんですか!」


あ、サーラが怒ってる。でも解除しようと思ったらオーガスタに止められた。


「相手の動きを知る為にはそのままの方がいいと思うよ。」


サーラは不満気だが、封印はそのままにする事になった。

頷くサーラは顔に血の気がない。


「サーラ、少し休んだ方がいいんじゃないか?」

「いえ、私は。」

「お姉ちゃん、お休みしよう。ミリアがついて行くから。」

「そうだな、ミリア。サーラを部屋に連れて行って、付き添ってあげて。」

「うん。ルルー。お姉ちゃん行こう。」


サーラはミリアに手を引かれて、部屋を出ていった。


「何?ルルー。その聞く気満々な顔。君も顔色悪いんだから、少し休めば?」

「後でゆっくり休みます。聖女の説明して下さい。」

「サーラ嬢に聞けば?」

「俺、あなたに聞きたい。」

「あら、猫ちゃんはお兄さんが好きなの?」

ドーラがくすくす笑う。オーガスタもニヤニヤ。

やっぱりこの兄妹は性格悪い。


「そういうんじゃない!あなた達の方が何かと詳しい気がするんだ!」

「なんでそう思うの?」

「えっと、性格悪そうだから?」

「傷つくね。教えてあげない。」

「ごめんなさい。教えてください。お願いします。」


「猫ちゃん、お兄さんに振り回されてたらだめよ。」

「ドーラ、私ほど優しい人間はいないだろう?誤解を招くような事は言わないで欲しいな。」

「あら、そうだったかしら?でも猫ちゃんはそう思っていないみたいだけど?」

「そうなのか?ルルー。」

「えっと、オーガスタさんはとても優しい、いい人です。」

ドーラが声をあげて笑った。だって仕方ないだろ?


「まあいい。で、何を聞きたいの?」

「聖女って何?」

「昨日聞いただろう?特別な力を持った存在だよ。」

「どうして教会が聖女を攫おうとして、サーラを攫った上に殺そうとしたんだ?」

「それは私にも分からないな。例えサーラ嬢が聖女じゃないとしても、あの髪色は利用できる。私ならば殺そうとはしないね。」

「そうだよな。それから、聖女の力についても、もう少し詳しく教えて。死者すら生き返らせるって力について。」

「聖女の詳しい記録は残っていないから、はっきりはしないけど、生き返らせる程の力は一人にしか使えないらしい。また寿命を延ばすこともできたらしいけど、それも一人だけらしい。」

「なんで記録が無いの?普通残さない?」

「失われたらしいね。」

え?ずさん。大事な記録じゃないのか?


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