15.仲間と共に
「ミリアちゃんはもう眠りましたか?」
「はい。ありがとうございます。お風呂がとても気持ちが良かったようで、喜んでいました。」
「さて、ルルー、話をしようか。」
「はい。」
「あの後、君達の行った郵便屋に手の者を向かわせた。君の言う受付嬢と責任者等数名は既に殺されていて、手がかりが掴めなかった。他のものは何も知らなかったし、バラの封蝋を見た事がある者も居なかった。ただ、こちらの手の者を配置したので、もう同じ手は使えないはずだ。」
手の者。やっぱりこの人達はただ者じゃないんだろうな。
「ドーラが調べた所、小瓶の花びらには不思議な力があるようだが、既にその力は殆ど失われていて、どんな力なのか判断出来なかったそうだ。」
「さて、ルルー、君の話をしよう。もう君を追う郵便屋はいない。これからクランブルに向かうのだろう?私達と一緒に行かないか?」
「道中も馬車で行くから、早いし、ミリアちゃんも楽だと思うわ。」
思いがけない申し出だった。
「いいんですか?」
「こちらから誘っているんだ。」
嬉しい。正体が分からないけど、いい人達だと俺は信じてる。
「お願いします。一緒にクランブルに行かせて下さい。」
「よし。ドーラ、明朝出立するから用意を頼むよ。」
「お兄さん、お任せ下さい。」
「ルルー、君も必要な物があれば、ドーラに伝えて用意してもらうようにね。」
「はい。」
「ふふ。お兄さんは猫ちゃんがお気に入りですね。」
「え?」
「ドーラ、君もだろう?ルルーは中々面白いよ。」
ちょっと笑顔が怖い。やっぱりこの人達怖いなぁ。
翌朝、白猫姿でミリアと馬車に乗り、オーガスタ、ドーラと共に屋敷を後にした。
初めての馬車にミリアは大興奮だ。
「ルルー!すごぉい!速い!景色がどんどん流れていくよ!」
ミリアは窓から体を乗り出さんばかりだ。もう、危ないのに困ったなぁ。
「ミリアちゃん、危ないから座ってね。」
「はい。」
お、ドーラの言うことは聞くんだ。ミリアはお姉ちゃんっ子だからなぁ。
大人しく座ると、ミリアは俺のしっぽで遊び始めたので、相手をしてやる。右に左に動くしっぽを追いかけて楽しそうだ。そのうち眠くなって、俺をクッション代わりにして眠ってしまった。ミリアが暖かくて、俺もそのまま眠ってしまい、気がつけば馬車は町に着いていた。
「オーガスタさん、ここはなんという町ですか?」
「ここはアルノーという町だよ。そして、鮮紅の騎士の館がある町でもある。」
「赤野郎の?!」
「あら、そんな呼び方をしてるんですか?」
ドーラがくすくすと笑う。
あの赤野郎の家。もしかしたら、サーラはその館にいるのかも。あいつ、会ったら今度こそギッタギッタにしてやる。覚悟しとけよ!
「館はどこにありますか?」
「一人で行くつもりかい?それはちょっと無理だろうね。」
「オーガスタさん、お願いします。教えてください。」
「今から人に会わせるから少し待ちなさい。」
「オーガスタさん!!」
「館の案内のできる人だよ。闇雲に館に入ってもただ捕まるだけだ。そういう時はその道のプロに頼るべきだよ。」
そうか、そうだな。焦るな俺!
「よろしくお願いします。」
馬車は町の中央に向かう。大きな宿屋の前で降りて中に入る。
「ここは私の常宿なんだよ。」
宿の部屋に入り、本棚の本を動かすと、鏡の中に入れるようになった。
「こんな仕掛けが!」
「お兄さん、私とミリアはここにいます。」
「ドーラ、頼んだよ。」
俺とオーガスタは鏡の中に入る。中には下に降りる階段があり、壁には灯りが点っていて足元が見えるようになっていた。
一体この人は何者なんだろう。
「オーガスタさん、一体あなたは?」
「それはまた今度。」
階段の突き当たりには扉があった。オーガスタが扉を開くと、そこに一人の男が居た。
グレーの服を着たその男は、いわゆる中肉中背で、特徴の無い男。きっと次に会っても気づかない。
「ルルー、彼が会わせたい人だ。」
「初めまして。ルルーです。」
彼は黙って頭を下げた。声を聞かせたくないんだろうか?
「ルルーを鮮紅の騎士の館に連れて行って欲しい。目的は少女の奪還。」
「少女?」
男の声は見た目通り特徴の無い声だった。抑揚もなく、何となく人口音のような不思議な声。
「俺達の家族です。あいつに突然攫われました。」
「その少女の特徴は?」
「若草色の髪、緑の瞳、15歳のとても可愛い少女です。」
「聖女と間違えられた少女だな。」
「間違えられた?」
「そう。聖女に似た外観を持つけど、聖女の力が使えない少女。鮮紅の騎士が間違えた相手だ。」
「その少女はどうなったんですか?!」
「正直、危険だと思う。」
「そんな!!オーガスタ!行かせてください!!」
「ルルー、危険だと思うし、行ってもサーラは救えないかもしれない。それでも行くかい?」
「行きます。」
男が無言で立ち上がり、部屋の奥の扉に向かった。
俺はその後に続いて扉に向かう。
オーガスタも扉に続こうとすると男はその肩を押してその場に留める。
「あなたは来てはいけません。ルルー、あなただけ。」
「わかったよ。ルルー行っておいで。」
「はい。行ってきます。」
俺はその男を追って扉の奥に向かった。




