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異世界魔王が強すぎて  作者: new1ro
勇者編
10/31

エルミロイ要塞防衛戦 (3)

とりいそぎ文字で地図追加してみました。

(スマホでも画面横にすると見れるはず……)

          川川

            川川

              川川

         陣竜     川     陣

         竜陣 陣竜   川    陣

            竜陣   川        陣陣   陣

                 川川    陣竜 陣陣   陣

                 川 川   竜陣

                 川  川     陣陣   川川川川

                  川  川川      川川

        水水水水水      川川川川川川川川川川

       水水壁壁壁水水                      道

       水壁   壁水                     道

    勇→ 橋門   門橋         陣陣         道

森      水壁   壁水         陣陣         道

森      水水壁壁壁水水                   道

森森      水水水水水                    道

森森森森                             道

森森森森森森                  森森森森森森森   道

森森森森森森森森            森森森森森森森森森森森森森  道

森森森森森森森森森森森森      森森森森森森森森森森森森森森森  道

森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森   道


要塞上空に再びワイバーンの姿が現れ火のついた箱をいくつか落としてきたが、ヨルの魔術防壁ですべてはじくことができている。魔族側も、こちらの様子をうかがっているようだ。


要塞を守っていた魔術兵たちは疲労困憊していて、動ける者は残り3名だけ。次に備え、ほかの負傷者たちに混じっていまは休んでいる。


ソフィアは何人もの兵士たちの命を救った。魔法でなければ治せない致命傷に近い傷を負っている者を選別して回復魔法を行使する。魔力量には限りがあるため、すべての者に魔法を施すことはできない。ソフィアは医療兵や、負傷した者のなかから動けるものを見繕い、骨折や裂傷の応急措置は任せていた。


ラキリは東西それぞれの城門を守っていた士官を呼び集め、手短に状況を確認しながら早急に下すべき決断を済ませ当座の時間を確保すると作戦の検討へと移った。


要塞には司令室もあるものの、ラキリはそこは使っていない。建物の中にあり周辺の様子を見ることができないからだと思う。士官らとともに魔術兵たちが詰めていた物見台へ登ると、要塞と戦場の様子をじかに眺めながら作戦の検討を進めている。ヨルと俺もその場にいた。


要塞は南側の森を背に、北側に流れる川を一望する位置に建てられている。魔族側の本陣は川を挟んだ向こうの北東側だが、川を渡って要塞の北と東に布陣しエルミロイ要塞を攻めている。東は街道を警戒しているためか動きがあまりない。北側にはワイバーンを擁する2つの陣があり、要塞に入る際の攻撃は魔術防壁で防がれた。竜兵の数を減らすことはできたものの、損害はあまり与えられていない。


「敵本体が動く前に、北を制圧する。」


ラキリが言った。


「魔術兵らには酷だが、北にはヨル=ミレツバウム魔術兵も投入する。戻ってくるまでの間、持ちこたえてもらう必要がある。」


「しかし、3名では夜明けまで持つかどうか……。」


「ワイバーンの数は減らした。常時展開でなくていい。防壁は2層に分けるよう指示。落下物の速力がないうちに軌道をずらすことができるなら魔力消費を抑えられる。加えて見張りの数を増やし魔術兵の負荷を下げる。見張りには負傷兵を充てろ。払暁後、索敵は目視のみに切り替える。」


「要塞周辺、地上の防備はいかがされますか? 東側の敵陣を先に叩くべきでは?」


「この要塞の堅牢さは、現時点で魔族に攻め入られていないことが証明している。東は歩兵が中心の編制だ。敵本隊に渡河の動きがなければ考えなくていい。下手に手を出すと本隊に合流される恐れもある。」


士官たちは不安な様子だ。わからなくもない。上空からの危機をヨルが防いでいる今、次の驚異は要塞周辺にひしめいている魔族の兵士たちだ。その魔族の兵士たちは東側の陣地からやってくる。それをそのまま放置するのは怖い。


「東側の敵本隊への合流は、拮抗状態を生みます。時間の猶予があれば我が方に有利です。」


「東側を攻めたのち防備を固め、援軍を待つべきでは。」


「援軍の目処は?」


「いまのところまだ……。しかし伝令は届いているはずです。城郭からは馬で1日。明日には到着するでしょう。」


「それは敵も承知だ。だからこそ急襲している。そして伝令が確実に届いている保証はない。」


考えたくない可能性をつきつけられ、若い士官は言葉に詰まった。彼だけではない。ほかの者も援軍の存在を前提に思考を巡らせていたようだ。言葉を発する者はいなくなったが、それはラキリの考えに同意しているからではないことは明らかだった。


士官たちはある種の興奮状態にあるように見えた。アドレナリンが出ている状態、とでもいうのか。この世界の戦場で何度か目にしたことがある。敗色濃厚の戦況の中でどうにか精神を保つために、過剰に興奮してしまっているときの、狂ったような目。ラキリに対してあからさまに反抗的な態度の者もいる。


上官に歯向かう態度を隠さないのは少し異様に見える。指揮命令系統が乱れ意思決定者が不在のなか、魔族という異形の兵士たちに襲われているのは確かに普通の精神ではいられないのも理解できるが――。


いや待て、そうか。魔族の軍隊に襲われているからだ。それが彼らを追い込んでいるのだ。


ヒューム同士の戦争であれば最後の手段として、白旗を掲げることも視野に入れられる。しかし見るからに生き物としての種類が違う魔族を相手に本当にそれが通用するのかわからない。司令官や副司令官あたりは、もしかしたらその選択肢も持っていたのかもしれないが、もういない。ゆえに残された士官たちは、援軍の到着まで要塞を死守するという選択肢しかなくなってしまっている。


立て続けに戦場での意思決定者を失った彼らが、異形の軍勢を前に希望を見出すとしたら援軍くらいだろう。


対魔族の戦場という異常な状況下で、どうにか精神を保ってきた唯一の希望を奪おうとする者がいれば、反感を抱くのは自然だ。敵意むき出しの彼らの態度が、それを示していた。


張り詰めた士官たちの気配の中で、ラキリはしかし、そんな彼らに高圧的な態度をとることはなかった。


「……なるほど、すまない。私も気が急いてしまっていたようだ。なにしろ、つい先刻まで魔族どもと剣を交えていたばかりだからな。」


士官たちの視線が、一斉にラキリヘと集まる。


「前提として、私は現状を悲観していない。むしろ逆だ。勝ち戦としての落とし所を思案している。」


「か、勝ち戦?」


「そうだ。貴官らの働きにより敵は夜襲に失敗しつつある。もうじき夜明けだ。日が登れば上空からの攻撃は不利となる。」


ラキリは士官たちそれぞれの目をまっすぐに見ながら語りかける。


「加えて奴らの立場になってみろ。白昼に敵の領内、東西南北どこからヒュームが攻めてくるかわからない平地で孤立無援の陣地をかかえるわけだ。補給線もない。この要塞を奪い、息継ぎとしたかっただろうが、貴官らの奮戦と要塞の堅牢さの前に、その願望は叶わずにいる。」


誰かの、つばを飲み込む音が聞こえた。


「加えてもう一つ、重要な要素がある。」


ラキリは士官の1人を見据えて訊ねる。


「現時点での、彼奴らが最も欲しているものが何かわかるな?」


「はい、……。」


困った様子の士官の思案を、ラキリは黙って待つ。


「……この、エルミロイ要塞でしょうか。」


「そうだ。わかっているじゃないか。この点が重要なのだ。敵にとってこの要塞は奪うべき対象であり、徹底的に叩き潰す対象ではない。破壊してしまえば、敵地での拠点を失ってしまうからだ。」


「……!」


「わかったか? 敵は何としてもこの要塞を奪いたいと考えている。グズグズしていればヒュームの大群が駆けつけるかもしれない。そう考えてみろ。要塞側から飛竜への攻撃が見られるようになったとしても、それが敵の攻撃を手をゆるめる理由にはならない。要塞を奪取することが至上命題なのだ。いずれ残りの飛竜を使って、より攻勢に出るはず。その前に、飛竜の拠点を潰しておけば彼奴らの思い通りにはいかなくなる。……損害は確かに小さくはなかったが、貴官らはこの状況を作り上げたことを誇っていい。」


「しかし……、勇者さまとミレツバウム魔術兵殿が揃っていれば、その、要塞の守りもより堅固となり、かつ、より確実に竜兵の数を減らすことができるかと……。」


反論じみた言葉を吐いている彼も、さきほどまでの語気の強さはもうない。周りの士官は彼を抑えようともしている。


「何だ貴様、私だけでは不服か? 要塞の指揮は私の責任において行うと伝えたはずだが。」


「い、いえ……。」


ラキリは表情を崩し笑顔を見せ、冗談とわかる口調で士官たちに語りかける。


「まあ確かに、イルグミリオ殿には及ばないかもしれない。経験は劣るだろう。……そうだな。私が指揮官として無能であったのなら、再び一兵卒として剣を取り、魔族どもを斬り伏せよう。実力は先に見せたはずだから文句はないな? この場で私よりも剣技に秀でた者もおるまい?」


魔族の返り血で盛大に汚れたラキリの鎧姿は、少なくても戦士としての働きぶりを雄弁に物語っていた。それはこの要塞を死守してきた士官たちの姿とも重なり、彼らがラキリを信頼に足る上官として認めるには十分な根拠となっているようだった。安堵できたのか、ラキリにつられて笑みを浮かべる者もいる。


ラキリは要塞の防衛に関する作戦を士官たちに告げ、それぞれに役割を任じ指示を出していく。復唱する士官たちの面持ちは、ずいぶんと変わって見えた。


若い士官たちから憔悴したり狼狽えているような気配はなくなり、解散するころにはそれぞれが、自分自身のすべきことがわかっている、というような頼もしさを感じる風貌となり物見台を降りていった。


俺とヨルは、敵本陣への攻撃に関する指示と、作戦失敗の条件を補足された。厳しい内容も含んでいたがとにかく手短。ただの業務連絡といった様子。もう少しさっきまでの朗らかな感じでいてくれてもよかったのに、とも思ったが、そこは信頼されていると受け取ることにする。

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