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1話 マリー・エトラント その1


「マリー、今日は俺のベッドに来いよ。可愛がってやるぜ」


「えっ、何言ってるの……?」



 Aランク冒険者チーム「リビングウェイ」のリーダー、ギアス・ノース。私はそのギアスに呼び出された。場所は冒険者ギルド街の中にある私のアジトの2階。


「意味が分からないんだけど……私達、付き合ってるわけでもないのに」


「んなこと分かってんだよ、若い二人の男女が2階で出会ったらどうすんだ? 寝るしかないだろ二人で」


 本当にこの男は何を言っているんだろう。私は18歳でギアスは22歳……確かに若い男女ではあるけど、なんで二人して寝ることに繋がるのか。


「洗濯とか料理の後片付けは全部終わったんだろ?」


「終わったけどさ……」


 私の所属しているAランク冒険者チームのリビングウェイは冒険者ギルドの中でも上位に位置している。でも、私は低級ヒーラーだから、ヒーリングクラスの回復魔法しか使えない。私が加入した2年前はCランクだったから、まだ違和感はなかったんだけど……それからギアス達は力を付けて、Aランクに上がって行った。


 私の成長スピードは遅く、明らかに他の仲間から出遅れていた。冒険に連れて行かれる回数も徐々に減って行き……私は悪いと思ったので、リビングウェイのチームの世話、つまりはアジトの掃除から洗濯、料理まで身の回りのことのほとんどを私が担当することにした。


 リビングウェイには私以外に4人の仲間が居る。彼らが冒険から帰って来た時には、ベッドシーツも新調していて、手の込んだ料理も出来ているって寸法。私自身、これでどの程度Aランク冒険者チームに貢献しているかは分からなかった。


 だってこういうのって、周囲が判断するものだから。ギルドの受付をしている友達のシンディは十分とは言ってくれてたけど……私はチームの仲間が認めてくれるまで必死で頑張るつもりだった。



 でも、今日のギアスの言葉は流石に違うと思う……彼からは何度かセクハラを受けたこともあるし、他の仲間からも役立たずと罵倒されたこともあるけど……。



「お前はAランク冒険者チームに居たらいけない人間なんだぜ? そのところわかってる?」


「そ、それは……うん、わかってる」


「だよな? んん?」


「う、うん……」


 Aランクレベルの報酬の分け前も貰っている……私の取り分は平均して1日3000ゴールドくらいだから、他の仲間の4分の1くらいだけど。3000ゴールドって言ったら、一般的には10日分の生活費くらいだろうから。


「料理、洗濯、掃除、その他の家事や買い出し……それだけでは、とても足りないのは分かってるよな?」


「えっ? う、うん……」


 私はそう答えるしかなかった。おそらく、ギアスも私が頷くことを分かっていたはず。一応、5人分の洗濯、掃除、料理を1人で毎日ってなると結構大変なんだけど、ここでは言わないでおく。命を懸けてる人達に申し訳ないと思ったから。


「なら、分かってるんだろう? 俺の慰み者になってもバチは当たらないんじゃないか?」


「な、慰み者って……!」


 それが正当かどうかはともかく、ギアスの口からそんな言葉が出て来たのが信じられなかった。女癖の悪い人だという噂は絶えなかったけど、まさか真実なわけ……?


「2年間、一緒に暮らした仲じゃねぇか? そんなに怖がるなよ。SSランク冒険者のジークみたいな気性でもないんだぜ、俺は」


「ジーク……」


 ああ、SSランク冒険者チーム「ヘイムダル」のリーダーの名前か。あの2メートル近くある大柄な人よね……前に酒場で見かけた時は、口も悪かったし態度も大きくて怖かったけど、意外と女性に対して紳士な人だという印象が強かった。


 流石に、今のギアスと比べるのは失礼過ぎる気がする……とにかく、私の回答は一貫して一つしかない。大事な処女を慰み者なんて形で奪われてたまるものか。


「いい加減にして、ギアス。私が首を縦に振るわけがないでしょ?」


 私は強い眼差しを彼に向けていた。これは遠慮するところではない……はっきりとわかったから。


「そうか……残念だ。じゃあ、お前は用無しだし、今日限りでパーティ追放だな」


「はい?」


 何かの冗談かしら……? パーティ追放とか聞こえたんだけど……。






 

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