カツアゲされそうでした……
「おにぃーさん、何してるの?」
そこには、つばの大きな麦わら帽子をかぶったストロベリーピンクのふわっと髪の女の子が立っていた。
「ん?嬢ちゃんなんだ? 」
「女性に嬢ちゃんは失礼じゃない?
そこの人、私の彼氏なの。
絡んできた強そうな男を見上げてその女の子は、にこやかに笑っている。
「こりゃ、上玉じゃねぇーか。
こんな品素な男やめて、オレと遊ぼうじゃないか?」
5人いた男たちの下卑た笑いを軽く聞き流して、僕のとなりにやってきたのは、トワイス国侯爵家、アンナリーゼ嬢だった。
服装は、町娘が着ていそうなノースリーブのワンピースを着ているので、最初誰だかわからなかった。
「セバスチャン、大丈夫?変なことされてない?」
男たちに聞こえないくらいの声でこちらの状況を聞いてくる。
「特に何も。これから、カツアゲされるところかと……
それより、アンナリーゼ様は……」
「アンナよ。街中で本名は名乗っちゃダメ」
「あ……アンナ様は、すぐに逃げてください!」
「アンナだって。様はつけちゃダメ。セバスは、んー走れる?」
「いや、そうじゃなくて……」
「セバスも逃げれるなら一緒に逃げるし、ダメなら、倒してしまうから……
どうかな?」
「……無理です。逃げられそうもありません。
でも、お金で済むなら……アンナ様は……」
「もう……アンナですよ……」
ごにょごにょしている私達に男たちは、イラついているようだ。
「逃げる算段はついたかな?」
「まぁ、こんな上玉の嬢ちゃん、にがしゃしないけどなぁー」
男たちは、ニタニタとヤラシイ笑いを向けてくる。
「あの……私たち逃げないとダメ?
私の彼氏、ちょーっと病弱で逃げきれないのよね……」
「それはそれは……さぞ、夜の方も……」
「まだまだ、純愛ですから。手すら握ったこともないわ!」
アンナリーゼは、リーダー格の男に言いきった。
するとさらにゲスの笑みを男たちがする。
「この人たちの顔見てるのももう嫌だし、
じゃあ、ちゃちゃっと、やっつけちゃいましょう!」
「嬢ちゃん、彼氏の前で可愛がってやるぜ!」
アンナリーゼを掴みかかろうとする男の手を僕は見ているしかなかった……
なのに、だ!
アンナリーゼは、あっさり、リーダー格の男を昏倒してしまう。
「ち、な、み、に! アンナって名前聞いたことある?」
残っている他の4人にアンナリーゼは話しかけると、青くなっていく。
そして、膝を折り平伏しはじめた。
「アンナ様とは露知らず、大変ご無礼を……」
「「「申し訳ございません……」」」
「ん。わかればいいのよ。今回は見逃してあげるけど、
次見つけたらどうなるかわかってる?」
「は……はい……もちろんです。
今後、このようなことがなきよう、努めますので、どうか今回は……」
「わかった。じゃあ、セバスは連れて行ってもいいかしら?」
「もちろんでございます!セバス様、先ほどは大変失礼いたしました」
「今後はこのようなことはないよう重々、仲間にも伝えさせますので……」
「あ…あぁ、いや…その…」
僕は、混乱していた。
突然現れたアンナリーゼが、屈強そうなリーダーを倒し他の4人を平伏させているのだ。
何がどうなっているのかわからない。
「セバス、こっちに」
そう言われたのでアンナリーゼについて大通りに出る。