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ハニーローズ - 君想 -   作者: 悠月 星花
ディルの場合

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26/27

暴いたとしても変わらず

アンナリーゼ杯という催し物を公世子主催で行われ、連日、嬉々として参加していたアンナリーゼ様。

公爵夫人としては、少々お転婆が過ぎるように思うが、ジョージア様のいないこの屋敷を見事に支えているアンナリーゼ様にも、息抜きは必要だろうと思い目を瞑っているところだ。

今日は、決勝も行われ、公世子から褒美ももらえたといって喜んでいる。

その姿は、子供のようにあどけなく、可愛らしい女の子であった。




初めてお会いしたときから、すでにお転婆の傾向は見られていたが、公爵家の夫人を名乗るには、それくらいの方がいいのだろう。

勉強は苦手、本人が申告した通り、ジョージア様の何倍もの努力をしても足りない。

毎日、遅くまで勉強をしているとデリアから報告を受けていた。



公爵領のことなど勉強してどうするのか……疑問に思っていた。

奥様も領地のことには、全く関心も寄せずに日長のんびり読書をしたりお茶をしたりと過ごしている。

このアンナリーゼという女性は、それだけでは足りないという。

それに、知ることは楽しいことなのだそうだ。



反対に公爵夫人としての礼儀作法は、すでに完璧であった。

さすが、トワイス国王太子妃候補と言われただけある。

本人は、ガサツだよっと笑っているが、公人として旦那様や奥様の前に出るときは完ぺきな夫人である。

こんな見事に切り替えられる女性など、見たこともなかった。

普段を知るだけに、初めて見たときは、かなり驚いたものだ。



どういう縁によってか、公世子の妃に望まれていたのを直談判で断り、ジョージア様の夫人におさまったのだ。

それだけ聞いても豪傑な令嬢であったことは察するに余りある。




私は、このアンナリーゼという女性がとても好きになった。

恋愛的でなく、人間的にだ。

見れば見るほどおもしろい。

これほど、魅力あふれる女性は、後にも先にもこの人だけだろう。





「アンナリーゼ様、今、旦那様にお子様が生まれたことをお伝えしてきましたが……」

「戻ってこないんでしょ?

 どうしたの……?」

「いえ、何故わかったのかと……

 大変申しにくいのですが、旦那様は、あちらでお子様と過ごすと……」

「いいのよ!

 気にしないで!

 私には、この子がいるから……」



さっきまで泣いていたであろう目元は赤いが、気丈に振る舞う彼女の姿は、れっきとした公爵夫人そのものだった。



だからだろうか?

旦那様にも思ったことはなかったが、アンナリーゼを主と仰ぎ仕えたいと思えたのは。


服毒事件のときもアンナリーゼの指示があったと、デリアが言っていた。

披露宴での見事な采配もそうだ。

そして、毒を盛った張本人まで捕まえ、証拠らしいものも握っている。

黒幕までわかっているのだろう。


それに領地で処分に困ったもので、カゴバックなるものを領地内で作らせ、領地外へ売り出したと聞いている。

こちらも売れ行きがかなり好調で、今期用意したものは全部売れたと喜んでいた。

稼いだお金は、懐に入れるわけでもなく、領地で作ったものへ還元したらしい。

利益の一部は、何かまた友人たちとコソコソと企てている。

パルマに聞いてもこればかりは教えてくれなかった。



端々で見せる彼女の機転と優秀さが目に付くことが多い。



出会ってから、すでに目を離せない程、私は、アンナリーゼという人間に未了されていたのだ。




だから、ジョージア様に見捨てられたとわかっても自ら膝を折った。




「アンナリーゼ様……

 私は、筆頭執事として、あなた様にアンバー家を託そうと思っております。

 どうか、私達を導きください」




乳飲み子を抱え、この大きな屋敷のことを導いていくのは大変だろう。

給金も実は、別宅の侍従より多くもらっている。

これも、何かしらコソコソとして還元してくれているらしい。

さすがに、私も金勘定に関しては見せてもらっているので、わかる。

そのおかげか、本宅に努める従者は皆アンナリーゼを慕っているのだ。

いや、お金だけでは決してない。

ちょっとした気配りができるからこそ、好かれているのだろう。




この屋敷が、奥様の代と全く別の『あたたかな居場所』に変わったように感じているのは私だけではないのだろう。





あの杯が終わってから、たまに私をじっと見てくるアンナリーゼ。

それも目が合えば、ニコニコっと笑って逸らしてしまう。




執務室に2人きりになった。

今日も視線を感じ、見つめ返すとまた、ニコニコと笑う。

しかし、今日は、違った。




「ディル、そこに座って!」




指し示された応接セットのソファに座るよう指示をされたため私は、黙ってしたがう。

すると、対面にアンナリーゼ様が座る。




「ディルは、お義父様の従者?それともジョージア様の従者?それか、私?」




小首を傾げて実に可愛らしく質問をしてくる。




「私は、元々大旦那様の従者です。

 正式には、旦那様の従者ですけど、今は、この本宅を預かっていらっしゃる

 アンナリーゼ様の従者と言っても過言はありません」

「そう、私の従者。

 じゃあ、私と公か公世子の間者だったら、やっぱり公か公世子を優先するのかしら?」




言われたとき、質問の意味がわからなかった。




「公か公世子ですか……?」

「あれ?違ったの?

 あなたのお父様もお兄様も公の従者よね?

 もう1人のお兄様は、別の公爵家の従者だったはずだし、

 弟も公爵家の従者のはずよ?」

「えぇ……そうです」

「じゃあ、ちゃんと答えて!

 多分、公の間者だと思うの!

 公世子様は、私とジョージア様が別居していること知らなかったから!

 ジョーのことを、公世子は、女の子だって知ってた」




この人は、どこからそんな発想にいくのだろう。

そう、我が家は、公の間者である。

公爵家の筆頭執事は、全員我が家の男児がなることになっている。




「アンナリーゼ様はなぜそのように?」

「たまにね……ちゅんちゅんと小鳥が囀るのよ!

 これは、たぶん、ディルの飼い猫さんより優秀よ!」




ニッコリ笑って、私を見据える。




隠し通せるものでもないことを私は悟った。




「約束を破ってしまい、申し訳ございません。

 ご処分はいかようにでも……」

「そんなことどうでもいいわ!

 国として必要なんでしょ?

 初代公は、疑り深い人だったって何かで読んだことあるし。

 例え、間者だって暴いたとしても変わらずあなたが……

 ディルが私に必要なのは変わりないのだもの!

 それとも、こんな私が主では、ダメかな?」




不安そうに私を見てくるアメジストの瞳。

この人は、するっと人の心に入ってきて、鷲掴みしていく。




「滅相もございません。

 むしろ、あなた様のお役にたてるなら、家族の縁を切ってでも務めさせて

 いただきたい所存です」

「ありがとう!」




パッと花が咲くように笑う。




アンナリーゼは、とてもよく笑う。

怒っているときも悲しいときも感情を隠したいときも……




今の笑顔は、本心からの笑顔だろう。

アンナリーゼに一番よく似合う笑顔であるのだから……

私もアンナリーゼの笑顔につられ、微笑むのであった。

本編のハニーローズも読んでいただけると嬉しいです!

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