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ハニーローズ - 君想 -   作者: 悠月 星花
サシャの場合

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妹のクマさん

「……おにぃーしゃま」


 真夜中の訪問者が、大きなクマのぬいぐるみを引きずりながら、部屋に入ってきた。どういうわけか、大粒の涙を流しながら、グズグズとしている。


 僕の妹アンナリーゼは、おてんばでそこら辺を跳ねまわっているような女の子だ。まだ、4歳になったばかりのアンナは、父に買ってもらったばかりのクマのぬいぐるみをいたく気に入ったらしく、最近はいつも一緒に遊んでいた。


「どうしたの?おいで、アンナ」


 アンナと同じくらいの大きさはあるぬいぐるみを連れて、僕のベッドに潜り込んできた。


「怖い夢をみたの?」

「……」

「僕が側にいるよ」


 僕、アンナ、クマのぬいぐるみと川の字になると、隣からすぅすぅと寝息が聞こえてきた。怖かったのも本当だろうが、眠かったのだろう。抱きついたまま眠る妹の頭を撫でてやる。ストロベリーピンクの髪はフワフワとしており、優しい香りがしてくる。目に溜まった涙が零れたのか、頬を伝う。起こさないように手で拭って、僕も目を閉じた。


 ◇


 次の日の朝。よく眠れたのか、小さな訪問者は、大きなあくびをして、僕の隣で伸びをしていた。

 メイドが隣の部屋に入ったとき、アンナがいなくて騒ぎになっているようだったが、この妹は、きっと、気にしていないのだろう。


「おにぃーしゃま、ありがとうございました」


 大きなアメジストのような瞳を輝かせて、ニッコリ笑う。「いいよ」と頭をもう一度撫でると、目を細めて喜んだ。



「サシャ様、おはようございます。朝早くにしつれ、……いました! いましたわ! アンナリーゼ様は、サシャ様の部屋で眠られていたようです!」

「おはよう、コリン」

「……お騒がせいたしました。アンナリーゼ様がお部屋にいらっしゃらないと、少々騒ぎになっていましたので。お許しください」

「いいよ。昨日の夜中に突然入ってきたんだ。そのお友達と一緒に」


 アンナの隣で寝転んでいる大きなクマをさし、「仕方がないよね」と話をしていたところに、我が家の女王様が部屋に入ってきた。


「サシャ、アンナが見つかったって……」


 きょとんとしているアンナを女王様が見て、安心したような呆れたような表情を向けていた。遅れて寝癖がついたままの執事のような父が、眠そうに部屋を覗く。


「ほら、そんなに心配することはないと言ったじゃないか」

「……確かに」

「おはよう、サシャ、アンナ」

「おはようございます」

「おはようございます、おとうしゃま、おかあしゃま」


 叱られると思ったのか、クマのぬいぐるみを引き寄せ、僕の後ろにコソコソっと隠れたアンナが挨拶すると、女王様が近寄ってきてベッドに腰掛けた。


「アンナはどうしてサシャの部屋にいるの?」

「……怖くて」


 視線を逸らすアンナは、いつもの元気な様子ではなく怯えているようだった。さっきまで、普通だったのに、昨日の夜みた夢の話になると、途端に口を閉ざした。


「……いいわ。アンナが無事なら」


 女王様は僕ごとアンナを抱きしめる。母の温もりに僕もなんだかホッとしたようだ。反対側に、父も来て、僕らを抱きしめた。


「おとうしゃま、おかあしゃま……ごめんなさい」


 消えるような声で謝るアンナに父はクスっと笑い、「いいんだよ」と呟いた。


「もし、何か困ったことがあったら、私たちを頼ってほしい。私もアイリスも二人の親だからね、守ってあげるよ」

「おとうしゃま、だいしゅき!」


 僕にしがみついていたにも関わらず、父の方へ身をよじって抱きついている。アンナが、離れてしまったことが少し寂しく、背中が冷たい。


「サシャも、アンナの兄として、よくみてくれたね。ありがとう」


 父の大きな手で頭を撫でられると、急に嬉しくなる。


 アンナは僕にとって可愛い妹だから。


 言葉に出来なかったが、そんな僕に気付いてくれたのか、母が僕の肩に手を添えてくれる。誇らしい気持ちになった。


「僕、アンナが泣いていたら、助ける!」

「よくぞ言いました。期待しているわ! おてんばな妹に振り回されないようにね?」

「……アイリス」

「なんでしょうか?」

「サシャに期待しすぎるのは、良くないぞ? きっと、アンナにはアンナの良さをわかってくれる友人ができるはずだ」

「あら、サシャにもサシャのことを好きになってくれる可愛い女の子ができるはずですわ。私があなたを好きになったように」

「……す、好きはまだ早い!」

「さっき、アンナに大好きと言われて締まりのない顔をしていたのはどなた?」

「それはだな。可愛い娘が言ってくれたんだから、仕方がないじゃないか?」


 子どものように拗ねた母と慌てる父を見比べ、アンナが僕の服のちょんちょんと引っ張る。


「どうしたの?」

「おとうしゃまとおかあしゃま、仲良し?」

「うん、とっても。僕らも仲良くしよう!」

「おにいしゃま、だいしゅき! クマしゃんもだいしゅきだって!」


 そういって、クマのぬいぐるみを引き寄せて、僕にクマのぬいぐるみを押し付けてくる。


「クマさんと、一緒にお散歩に行こうか?」

「しゅてき!」

「私たちも一緒に行くわ! まずは、朝食を取りましょう」


 両親に連れられ、アンナは部屋に戻っていく。身長と同じくらいの大きなぬいぐるみを引きずって、「またね!」と出ていった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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