アンナからの指令Ⅲ
アンナからの指令Ⅱの続きです。
アンナの指令で1番の難関は、サラサ公爵家のメアリーだった。
全く、僕には、接点がなかったのだ。
アンナの開く秘密のお茶会では、顔を合わせることもあったがそれ以上はなかった。
「殿下、サラサ公爵家のメアリーとは親しいですか?」
アンナの『予知夢』では、将来の寵姫となる予定のメアリーのことを殿下に尋ねた。
「メアリーなら、よく顔を合わせるぞ?
アンナからの贈り物は、メアリーにもあるのか?」
「そうなんです。
何度か顔は合わせているんですが、ほぼ接点のない僕が、
アンナの指令とはいえ、メアリーに贈り物をしているのは
あんまり褒められたものではないので……」
「それに関しては俺もそんなに変わらんぞ?
まぁ、近いうちにシルキーに会いに来てくれるから、そのときに渡そう」
殿下の言葉に僕は、ニッコリ笑ってありがとうございますと言う。
「そなた、今の顔は、アンナそっくりだったぞ……」
「そうは言われても、僕たち兄妹ですからね。
似てないと困ります」
同腹の弟妹がいない殿下とひとりっ子のヘンリーは、そんなものなのか?と2人で顔をみあわせているが、僕がアンナを大事にしていることを踏まえてそんなもんかと片付いたようだ。
「それにしても中身が気になる!」
「ハリー、そなたのとこのを分、封をきれ!
リボンだから、結び直せば、バレないであろう!」
「いやですよ!
イリア、そういうの目敏いから、バレるじゃないですか!」
「殿下こそ、大きいんだから、見せてくださいよ!」
アンナの贈りもので、やいのやいのと僕の前で言い合う殿下とヘンリー。
幼馴染だけあって、気安い感じで言い合っている。
ここにアンナも入ってたのか?
むしろ、アンナが、率先して巻き込んでいたんじゃないかと思うと、僕は頭痛がしてきた。
「じゃあ、こうしよう!」
「どうするのです?」
「2つともあける!」
「殿下がどうしてもみたいから開けたってイリアにはいいますからね!」
「そ……そなた!」
殿下もイリアに叱られるのは嫌なようで、代替案を考えている。
イリアもこの二人とアンナの幼馴染だ。
「では、シルキーにも同じことを言おう!」
「殿下が、見たいからみんなでみたと?」
「いや、ハリーが、どうしても見たいからみたと言う!」
やれやれ、2人とも見たいが、見るきっかけは自分におわせたくないようだ。
「僕がどうしても見たいと言ったからでいいですよ?
国のトップに立とうという2人がこんなことくらいで……」
はぁあっと、おっきなため息をつくと、2人ともこちらを向いてニマニマしている。
あ……あれ?
墓穴掘ったかなぁ……?
なんだか、ぎくりとして背中がぞわぞわする。
「こ……今回に限りですからね!
殿下には、エミリー様に贈り物を渡してもらいますから!」
思わず、僕は念押しをする。
「あぁーはいはい。
今回に限ってね!」
「今回だけだ!」
2人の目は、笑っていないので、やらかした……と、思わずには言われなかった。
次回も、きっと『僕が……』っていうに違いない。
とりあえず、それぞれのリボンを解く。
殿下の方から出てきたのは、小さな子どもがはいりそうな大きなカゴであった。
その中にカバンが入っている。
「なんだ?」
中に手紙が入っていると思うので、読んでみてください。
『 殿下 へ
そのうち必要になると思いますので、贈ります。
簡易のベビーベッドとして使ってください!
きっと、気持ちいと思いますよ!
必ず、生まれたら、使ってくださいね!
感想もください!
そして、アンバー領特産品でって宣伝してください!
よろしくお願いします!
アンナリーゼ 』
「なんて書いてあったんですか?」
顔がほんのり赤い気がする殿下。
「あ……いや……ベビーベッド……にって……」
「あぁーなるほど!
って、どうしたんですか?」
赤くなったり青くなったりにへらっと笑ったり百面相を始めた殿下。
「殿下?」
「あぁ、ハリー
今すぐ、侍医を呼べ!
ついてこい!」
そういって、僕とヘンリーは、殿下に付き従う。
その場所は、シルキーの部屋の前だ。
追いついた侍医は、息を切らしながら、駆けてきている。
「何事ですか?」
「さぁ、殿下がいきなりそなたを呼んでついて来いって言われたのだが、
私達にもわからぬ」
シルキー部屋の前で4人が佇んでいる。
コンコンと殿下がノックをすると入出の許可が下りた。
「ジルベスター?
こんな時間にどうしたのじゃ?」
シルキーもいったい何事かと不思議に思っている。
「侍医、シルキーの脈を取ってくれ!」
「は……はい。
シルキー様失礼します!」
「何事じゃ?
わらわは、ちょっと風邪を引いただけじゃ……
大げさな……」
そういって、侍医の脈診を拒もうとした。
すると、殿下がスッと側に行き、膝を折り、シルキーの両の手をくるむようにして優しく触れる。
「シルキー、そなた懐妊しておらぬか?」
「解任?はしておらぬぞ?」
「その解任ではない」
その瞬間、シルキーは意味を悟ったのか、熟れたトマトのように顔が真っ赤になった。
「侍医、見てくれ!」
「はい、かしこまりました」
シルキーの脈診をしていく。
「少し微熱があるようですが、脈にそれらしい反応がございます!
シルキー様、ご懐妊でございます!」
侍医の言葉を聞き、シルキーは、泣き始める。
見た目も幼いシルキーは、幼子のように泣きじゃくっている。
それを優しく殿下が慰めている。
殿下も喜んでいるらしく、シルキーをたくさん褒めている。
「何故、わかったのじゃ?
わらわも、わからなんだ……
侍女たちも……」
「アンナからの贈り物が来たんだ」
「アンナリーゼから?
何が届いたのじゃ?
わらわもみとう!」
殿下におねだりしているシルキーを満足させるため、ヘンリーと僕は殿下の執務室へ駆ける。
また、シルキーの部屋の前まで戻ってきて、息を整えてから部屋に入った。
「殿下、お持ちしました」
「ありがとう!」
僕たちが、持ってきたベビーベッドとカバンをのぞいて不思議そうにしている。
「これは……なんじゃ?」
「ベビーベッドだそうだ。
アンナから、贈ってきた!」
「アンナがかえ?
なんていうタイミングじゃな!?」
殿下とシルキーは、アンナのタイミングの良さに笑っている。
「手紙も入っていたから、呼んで返事をしてやるといい。
アンナのことだから、きっと喜んでくれるぞ!」
「そうするのじゃ!
アンナもお腹が大きくなったであろうな?」
4人は、それぞれ、アンナに思いをはせる。
僕の妹は、『予知夢』の能力がある。
ただ、今回のは偶然だったのだろう。
殿下やシルキーが喜んでくれるものを、きっと贈りたかったのだと僕は思うことにした。
「そうそう、使い勝手を教えてほしいと書いてあったぞ?
宣伝もしてくれと!
シルキー、頼んだぞ!」
「任せておくのじゃ!
アンナリーゼのためなら、わらわは、がんばるのじゃ!」
ここにも熱心なアンナの信奉者がいるのか……改めて、妹のすごさを実感することになったのである。




