では、こうしましょう!
アンナリーゼの卒業式の2日前、公より政略結婚が言われた翌日の話です。
「母上、アンナリーゼに好かれるにはどうしたらよいでしょうか?」
昨日、公からの政略結婚の話を聞いて以来、悩みに悩んだが、結局答えは出なかった。
なので、同じ女性である母に聞くことにした。
できれば、親に恋愛相談はしたいと思えなかったけど、政略結婚が決まっているとはいえ、初恋の相手だ。
好かれたいと思う。
「ジョージアは、アンナリーゼにどんなことをされれば嬉しいですか?
お話できれば?手を繋げば?ダンス?それともお散歩かしら?
かっこいいと言ってもらったり、頼りになるなんて言われたらどう?」
「どれもこれも嬉しいですね」
「では、こうしましょう!」
母は、パンと手を打つ。
「そっくりそのまま、アンナリーゼにしてあげればいいのです。
あなたが嬉しいと思うことを。
ただ、押しつけがましくなったり、望んでいないことはしてはいけません。
ちょっとした確認が必要です。
仕草であったり言葉であったり……
それを見極めるのがあなたに1番必要ね!
あと、可愛いとか好きだとか愛しているだとか、毎日言ってあげて!
そんな気になるから……
私、あなたのお父さんのこれに騙されたのよ……」
父も母に言わせれば、ひどいいいようだ。
騙されたか……
あの子が騙される気は全くしないけど……
「ジョージア、アンナリーゼは、他に想い人がいるのね。
一緒に踊っていたあの金髪の男の子かしら?
両想いって感じだったのだけど……」
母は、なかなか鋭いようだ。
まさにその金髪の男の子が、想い人だと俺も思っている。
「母上にもわかりましたか。
アンナの想い人は、トワイス国宰相子息ですよ」
「あら!ジョージアより優秀な方なのね……
よく、アンナリーゼは、うちの子を選んでくれたこと」
俺もだんだん悪く言われ始めた。
図星なので、何にも言い返せれない。
確かに、成績優秀で筆頭公爵家な上に顔もかなりいい。
学園でも人気は高かったはずだ。
ただ、噂ではみんな口をそろえて言う言葉がある。
『アンナリーゼ様以外、ヘンリー様の隣はいらっしゃらないわよね!』だ。
アンナにも聞いたことがあるが、幼馴染でデビュタントのパートナーだったらしい。
その印象がみんなに残っているのだと笑っていた。
「だいたいね、ジョージアは、はっきりしないのがダメなのよ!
だから、変なのに好かれる……
あっ!アンナリーゼに好かれるのは一向にかまわないのよ!
あんな娘が欲しかったのよ、私!
正直、あなたより私が溺愛するわ!!」
まさかのここで宣戦布告……
俺が相談したんだよね……?
母の話をうんうんと聞いているとだんだん自分に自信を無くしていくようだ。
「あのね、ジョージア。
そこは、俺のほうが!とかいうところよ……
そういうところよね!
アンナリーゼに愛情を注ぐんだ!ぐらいの気概が欲しいわね。
今のあなた、なんにも感じない!!」
母の怒っている部分がイマイチわからない。
「それは、どういうことですか?」
「なんていうか、情熱的な?
そういうのが、垣間見えないとダメね……
ホント、あの人の子供なのか疑いたくなるわ……」
「母上が疑ったら、まずいと思うけど」
「それもそうね!
れっきとした私とあの人の子供よ!
なら、できるでしょう!
アンナリーゼを振り向かせるような情熱的なもの」
考えたが、ただ、想うだけだった……
「そういえば、明後日、卒業式だな」
「それよ!!!!!
今すぐ、そこの薔薇切って、ドレスコードきて行ってきなさい!!
アンナリーゼは、1人であの花道を歩くのよ!
そんな惨めな思いさせてわダメよ!!
ほら、暢気にしていないで、間に合うようにいきなさいって!!」
母に叱られ、アンナを想う。
確かに、今年は、誰もエスコートしないことも想定できる。
彼女自身が、ローズディアまできて、俺との婚約を直談判までしたのだ。
すべての申し出を断ってしまうだろう。
「すぐ、いくから……」
そうは言っても馬を飛ばしても2日半はかかる。
今からで間に合うのだろうか……
ジョージアは、すぐに着られるスーツに着替え玄関に行くと、母が庭から青薔薇を切ってリボンでまとめてくれた花束を渡してくれる。
薔薇が萎れないよう水分を含ませてくれてある。
馬まで用意してくれていた。
「母上、ありがとう。いってきます!」
「いってらっしゃい!」
見送ってくれる母の顔は、大層満足そうであった。
それから、2日。
馬も休ませながら街道をただただ駆ける。
間に合うのだろうか……
いや、必ず間に合わせる!!
休ませた馬にまたがり、学園へと急ぐのであった。




