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第5章 神竜国ドラグリア編 八十六話 予想と仮説

今回はシン視点です。


 グレンさんと共に修行の間へと入るとそこは辺り一面真っ白な何も無い部屋だった。


(グレンさんが言っていた通り本当に物が何も無いな。唯一あるのはあっちにある扉だけか)


 恐らくあの扉の先にも部屋がありそこに武器や食料衣類等が置かれているんだろう。

 ちなみにグレンさんはと言えば修行の間に入ってすぐに扉の横にある魔力結晶をなにやら操作し始めていた。


(あの魔力結晶で外との時間の流れを変えているのか)


 しばらくすると設定が終わったのかグレンさんがこちらへやってくる。


「さて、準備も終わったので早速始めましょう」

「その前に1ついいですか」

「はい、何ですか?」

「ここに来る前に門の前で言いましたよね。俺について詳しい事は中で話すって。それについてまだ何も聞いていません」

「そう言えばその事について竜王に詳しく聞いていませんでしたね。先程も言いましたが私は君に関することは何も知らない」

「……そう、ですか。分かりました」


(やっぱり、詳しい話を聞くにはここから出た後じゃないと無理か)


「これは、私の予想と仮説でしかありませんが、それでもよろしければお話できます」

「予想と、仮説?」

「えぇ、この国に代々伝わってきた書物の中にこんな文が書いてあります。神竜国は元々別の場所に有った。その場所が襲われ滅ぼされた際に双子の王子だけが生き延びそれぞれ別の道を歩んだ。兄は巨大な大森林の中で国を起こし子孫を繁栄させ、弟は人の世界に紛れ幸せに暮らした」


(それって、もしかして……)


「はい、恐らくこの時に生き延びた双子の王子の弟の方があなたの祖先にあたる人物でしょう」

「なるほど、それがさっき言っていた予想ですか?」

「はい、次にこれは仮説ですが私には先見眼と言うスキルがあります。竜王に説明した時はあまりこの能力を理解していなかったみたいですがこのスキルは自身の身に起こる幾つかの未来の中からランダムに1つ見れる能力ともう1つ、目の前にいる人物の名前と基礎能力の様な物を見ることができる能力が備わっている」

「それが何の仮説になるんですか?」

「本題はここからですよ。基礎能力と言っても筋力や魔力と言った物を見れる訳ではなくなんて言えばいいんでしょうか、その人の地位と言うか種族のような物物です」


(なるほど、そのスキルと言う奴で俺を見た時に何かに気づいたということか)


「ご名答。確かに私が君を見た時、種族は人族となっていました。ですがそれと同時に竜人の血統と王族の末裔と言う称号も見えた。その結果から私は君が大昔に生き延びた王子の内、弟の子孫で長年の時を経てあなたの血統は竜人の血が薄まり種族が人間となったのでは無いかと言う仮説です」

「確かに、その仮説なら納得できます」

「恐らく、これまでの年月で薄まってしまった竜人の血を君はたまたま色濃く受け継いでしまったのでしょう。その類まれなる魔力量と聖剣に選ばれたのも竜人族の王族ならば説明が着きます」


 王族の血統、それも人間ではなく太古から世界に存在しつつげた圧倒的な強者の種族である竜人族の王族ならばポテンシャルが高いのも不思議じゃない。グレンさんの言いたいことはそういうことなんだろう。


「なので確証はありませんが、あなたが竜人族の王族に関係している可能性が高い事だけは保証できます」

「確証が持てない不確定要素だったから関係していると言いきれなかったんですね」

「はい、門の前で君の事を王子と呼んだのもちょっとしたサプライズと君が少しでも何かを知っているんじゃないかと探りを入れるためにやった事です。驚かせてしまって申し訳ありませんでした」

「いえ、そう言う事なら大丈夫です。教えてくれてありがとうございます」

「いえ、気にする必要はありません。仮説と予想なんてどこまで行っても所詮可能性が高いだけの空想でしかないんですから。話も一段落した所でそろそろ始めますか?」

「ですね、お願いします!」


 そうして、俺はグレンさんの指導の元実力向上の修行を始めた。



 ▽▲▽▲▽▲▽▲


「はぁはぁ、はぁはぁ」


 修行を初めてからかれこれ2時間弱まさかこんな事になるとは想像もしていなかった。


「どうやらお疲れみたいですね。この辺りでしばらく休憩にしましょう。程よい休息はより良い結果に繋がりますからね」

「はぁはぁ……はい」


 そう言うとグレンさんは修行を始めてから初めてその場所から足を動かした。


(結局、この修行を始めてから2時間、あの人を動かすことはできなかったな)


 最初にグレンさんの出した修行内容は実戦形式の物だった。その内容と言うのがグレンさんを今立っている場所から1歩でも動かせたら俺の勝ちと言うルールだった。

 正直、やってみる前はバカにされているのかとも思ったがいざ始まってみれば何のことは無い。俺がどれだけ攻撃しようとグレンさんは結局その場から動くことも無くましてや俺の攻撃を全て片手で捌ききったのだ。


(身体強化の上から身体に光魔法も付与(エンチャント)してたんだぞ。なのにあの人を1歩も動かせなかった。

 武器に関してもそうだ、俺の武器は聖剣と呼ばれるこの世界でも有数の名剣。それに対してグレンさんの使う武器は物置き場にあった模擬戦用の剣だ。学院のと違って木ではなく鉄で出来ているとはいえ聖剣と比べたら遥かに劣る。それなのに……)


「どうして自分の聖剣と互角に打ち合えているのかと考えていますね?」

「……っ」

「その理由は簡単です。我々竜人族は戦闘の際に(オーラ)と言う物を纏って戦っています」


 グレンさんの説明では気には幾つかの種類があるらしい。


 主に精霊や天使、悪魔が使う魔力と精神力を底上げするのが霊気。


 人族や亜人、獣人が使うのが全体の身体能力をバランス良く向上させる闘気


 そしてグレンさんや竜王達竜人族と竜族が使う筋力、体力、防御力、魔力量、この4つの基本能力を極限まで上昇させる竜気


 この3つが今世界に存在している(オーラ)らしい。


「と言ってもこの気は誰でも使えるという訳ではありません。厳密に言うと全員が使える素質は持ち合わせていますが過酷な修行を乗り越えなければその力に目覚めることは無いだけなんですがね」

「と言う事は俺がグレンさんを1歩も動かせなかったのはグレンさんは気を纏っていて俺がそうで無かったからですか?」

「まぁそう言う事です。と言っても私や竜王レベルになると竜気だけではなく同時に闘気や霊気も纏っているのでただ闘気を纏っただけでは今と大して変わりはしないと思いますよ」


(なるほど、ただ闘気を使えるようになるだけじゃダメって事か)


「と言っても、君と私では才能や元の身体能力が違います。確かに身体能力では竜人族の私が勝っていますが才能であれば人族でありながら竜人族の王族の血筋であり聖剣にも選ばれ膨大な魔力を保持するシン君の方が遥かに上です」

「なるほど……」

「ですが、それは闘気だけならの話です。今回の修行で君には闘気と同時に竜気も習得してもらいます」

「りゅ、竜気って、人間の俺にできるんですか?」


 てっきり竜気は竜人や竜族しか使えないものかと思っていた。


「普通は使えませんが君は祖先の血を色濃く受け継いでいる。そんな君であれば使えない事は無いでしょう。ですが、闘気と併せて2つの気を習得するとなれば当然修行もより過酷な物となります。着いてこれますか?」

「はい、もちろんです」


(今よりも強くなれるのであれば何でもする。それがどれだけ過酷な修行であろうとも絶対に俺はその力を手にしてみせる!)


「よろしい、それでは休憩もした所ですし早速修行を再開しますか。目標は10年後までに闘気と竜気を会得し極める。その為にも早速始めましょう」

「はい!」


 そうして、グレンさん指導の元、俺の過酷な修行は開始した。


(ごめん、サヤ。ここを出たら直ぐに助けに行くから。だから、もう少しだけ待っていてくれ)


 

 決意を固めたシンは首から下げたネックレスを掴み、その場から立ち上がった。

 それに呼応するかの様に、遥か遠くの地にある小屋の地下でも1人の少女がネックレスを固く握りしめその時を待っていた。


「信じて、待ってる。だからシンも頑張って。私も、シンが来てくれるまで絶対に耐えてみせるから」


 少年と少女は、遠く離れた地で時間の流れも違うにも関わらず奇跡的に心を通わせていた。

 

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