百三十二話 竜王VS魔王①
少し短めです
ドゴォッ!
「凄い、戦闘の余波が部屋の外まで……」
「一体中はどうなってるんだ……」
(俺は竜王の戦闘を見たことは無い。強さだって肌で感じた威圧感と立ち振る舞い、魔力量で判断してるだけだ。考えたくはないけど、最悪の場合竜王が押されてる状況だって……)
「大丈夫です」
「っ! グレンさん……」
「あの人が、竜王が負けるはずありません」
俺の懸念を感じ取ったのか隣を走るグレンさんはそう言った。希望的観測にも取れるその言葉だが、今はそれを信じるほかない。
「見えました、皇の間です!」
「あっ、あれ! グレンさん、扉が!」
「戦闘に巻き込まれたのか……どちらにせよ、あれだけ崩れていれば開ける手間はかかりませんね。巻き込まれないよう注意しつつ、このまま入りましょう」
「「はい!」」
そうして俺達は皇の間へと足を踏み入れた。その時……
ドゴォォォッ!
「ガハッ!」
俺達が皇の間へ入ると同時に、何者かが入口の左上へ衝突した。
「っ! 離れて!!」
「「ッ!?」」
ゴガガガガガガッ!
グレンさんは叫ぶと同時に、俺とアリシアの2人を抱えて部屋の隅へと飛び去る。次の瞬間、俺達が立っていた場所は黒い竜巻に巻き込まれないよう床ごと削り取られていた。
「今の声、グレンか。想定よりも早く着いたみたいだな」
その声は低く威圧感を放ち、どこか聞き覚えのある声だった。その声の主は間違いなく、あの人だ。
「この声、もしかして……!」
「竜王! ご無事でしたか!」
「当然だろう、この程度の小童に負ける訳にはいかん」
そう言って土煙の奥から姿を現したのはこの神殿の主にしてこの国の王、竜王ゼファー本人だった。
(となると、さっき壁に衝突してたやつが敵の親玉か……)
「ッテテ……ホント、容赦ないなぁ」
その声が聞こえた方向に目を向けると、1人の青年が瓦礫の下から手を出し這い上がってきた。
「竜王、彼奴が今回の首謀者ですか」
「嗚呼、襲撃者の頭にして、新たな魔王だ」
「っ! あれが、魔王? どこからどう見ても……」
「レオの考えは間違っていない。正真正銘、あいつは人間だ」
土煙の中姿を見せた青年は、魔王でありながら見た目通りの人間だった。
「まさか、人間が魔王を倒したとでも言うんですか?」
「想像はできんが、目の前の奴こそが真実だろう」
(信じられない、人間が魔王って言うのももちろんそうだけど、そこじゃない。前に読んだ本には魔人は人間よりもはるかに魔力量が多く、体も頑丈で身体能力も高いと書かれていた。その中でも、魔王はずば抜けた実力を持つとも。ただの人間が戦って勝てるような相手じゃない)
「何か卑怯な手を使ったのか、もしくは……」
「あいつの能力に仕掛けがあるか、ですね」
俺の言葉に対しグレンさんは静かに頷く。
「その二択であれば、恐らく後者だろう。戦っている最中も何か違和感があった」
「竜王が言うなら間違いないのでしょう。警戒してあいてをしなければ」
「いや、ここは俺に任せておけ」
「っ! ですが竜王!」
「奴の能力に関しては大方検討がついている。俺一人で十分だ。それより、絶対に奴には近づくなよ」
「……っ、分かりました。何かに勘づかれているようですし、私が出た所で足でまといになるだけでしょう」
「すまんな。だが、そういう事だ」
「いえ、お気になさらず。貴方がそういう人だと言うのは私が1番知っているので」
そうして、グレンさんは1歩下がり、竜王は服の汚れを払っている敵を一瞥した。そして……
「ちょうどいい。レオ、この戦闘をよく見ておけ」
「っ! 俺……ですか?」
「嗚呼……奴の力は、お前の力のヒントになるかもしれん」
(俺の力? っ! もしかして……!)
「分かりました。必ず何かを見つけてみせます!」
俺の答えに満足したのか、竜王は一度首を縦に降り敵の方へと足を進めた。
「もうお喋りはいいのかい?」
「わざわざ待ってくれるとは気が利くな。だが、手は抜いたりせんぞ」
「ま、そうだよなぁ。現状じゃまだあんたには勝てそうにないし、逃げればよかったかな?」
「戯言を、逃げようと思えばいつでも逃げられたろうに。そうしない理由があったんだろう」
「ふふっ、ご名答。いい鴨も現れた事だし、もう少し遊ばせてもらうよ」
そう口にした魔王の視線は、まっすぐと俺達3人へと向けられていた。いや、正確には……俺と隣に立つグレンさんの方へと。
「させると思うか?」
「やってみせるさ。何事も障害があった方が燃える性分なんでね」
「ふっ、面白い。相手になってやる」
そうして、竜王と魔王の戦闘は再度幕を上げた。




