百三十一話 奇襲
「到着っと。周りに人の気配は無いですね」
「そのようですね」
「ここがドラグリア……なんと言うか、凄く個性的な土地にありますね」
「そう言えば、アリシアさんはここへ来るのは初めてでしたか。ようこそドラグリアへ。国外からここへ来た人は皆、この見た目に驚くんですよ」
アリシアを歓迎すると、グレンさんは少し微笑んで冗談を言うようにそう言った。
「それで、竜王には何時に行くって伝えてあるんですか?」
「特に時間は決めていません。いつでも構わないと竜王も言っていたので、こちらの都合のいい時間に行かせてもらうとは伝えています。とは言え、あまり待たせてしまうのも申し訳ないので、早速向かいましょう」
そうして、グレンさんを戦闘に俺達はドラグリア正門へと繋がる階段へ向かった。
「何だか、これから竜王様に合うと思うと緊張してきました」
「そんなに気を張る必要はありませんよ。ああ見えて子供と話すのは好きみたいなので」
「確か、俺とシンが修行してる時もずっとアレクと話してたんですよね? どんな話をしてたんですか?」
「残念ながら、それはアレク君の許可がなければ話せません。彼のプライベートな話なので」
「そう、ですか……」
(そう言われると余計気になるけど、こればっかりは仕方がないか)
「ところで、竜王様はどんな人なんですか?」
「んー、見た目は寡黙で落ち着いてて、かっこいい大人の人って感じかな」
「と言うのは表の姿で、その実裏では結構天然なんですよ。気づいたらいつの間にか日向で寝てるなんてこともありますし」
「へぇ、あの人が日向で寝てるところなんて想像できないな」
「ふふっ、こんな事を言っては失礼かもしれませんが、可愛いお人なんですね」
そんな他愛もない話をしながら階段を降りる俺達3人。国の現状も一時忘れ、平和を満喫しているのも束の間、その異変は起きた。
ドンッ!
「「「っ!」」」
(っ! 何だ……この、押し潰されるような濃い魔力!)
「こんな、強大な魔力は初めてです……」
「嗚呼、それにこの方角……っ! グレンさん、もしかして」
「えぇ、恐らくは……竜王が何者かと交戦中です」
そう静かに呟いたグレンさんの表情は、太陽の光でよく見ることができない。
「一刻を争う自体だ。二人とも、私の腕に掴まってください。少し乱暴ですが、ここから飛びます」
「「は、はい!」」
そうして俺とアリシアはグレンさんの腕へと掴まり、グレンさんは体の一部だけを竜化し、背中へ巨大な翼を生やして空へと飛んだ。
▽▲▽▲▽▲▽▲
グレンさんの飛行速度は凄まじく、あっという間に竜皇殿へと到着した。
(短い時間だったけど、距離が近づくにつれさっき感じた魔力の他にもう一つ、何者かの魔力が感じ取れてきた。グレンさんの反応を見る限り、さっきの魔力が竜王の物だろう。だとしたらこっちは竜王が戦ってる奴の魔力か。離れている場所でも重く感じるほどの魔力の重圧、相手も相当な実力者だ。にしても……)
「何だ、この嫌な魔力は……」
竜王の押しつぶされそうなほど重い魔力に対して、もう一方はヌルッと体にまとわりつくような薄気味悪い、不気味な魔力のようにレオは感じていた。
「っ! 急ぎま――」
ドゴォッ!
グレンさんがそう言いかけた時、通路の奥から何かが飛び出し俺達の目の前に立つ柱へと轟音を立てて衝突した。
ガラ、ガラガラ
「何だ!?」
「あれは……」
砂埃が晴れ、柱へ衝突したものが見えそうになった時、通路から人影が現れた。
「全く、舐められたものだ」
「事前にこっちの情報は手にいれてたっていうのに、まさか二人しか引き連れて来ないなんてね」
人影は二人。どちらも服装は同じだが、方や長い黒髪を腰あたりで縛り、もう一方は白い短髪と真逆な見た目だ。
「ん? 何だ……戻っていたのか、グレン」
「あれ、本当だ。いつの間に?」
「クロユリ、ビャクラン。何があったのかと、中の状況を教えてください」
クロユリとビャクランと言うらしい二人組は、俺とアリシアを見て一瞬戸惑ったような表情を見せるが、事前に今日俺が来ることは知っていたのか、すぐに状況を飲み込みグレンさんへ説明を始めた。
「襲撃だ。敵の主力は3人。その内の二人が今そこで気を失ってる奴らだ。残りの1人は襲撃してきた組織の頭。竜王が奥で今相手をしている」
「どうしてここを通した? お前達がそう簡単に突破されるとは思えない」
「悔しいけど、俺達にも何が何だかさっぱり」
「奇襲だよ、それも殺気を一切隠さずにな。突然空から現れたかと思えば、一瞬で背後の通路へと進まれていた」
(殺気を消さずに奇襲? そんな事ができるのか?)
「それで、その後は」
「もちろん、相手は殺気を放ってる侵入者だ。後を追って問答無用で攻撃をしかけたさ。だが……」
「そこからしばらくの間の記憶が無いんだ。まるで時間を飛ばされたみたいに、ぼーっとしちゃってさ。気づいた時には周りをスケルトンに囲まれてた」
(スケルトン!? まさか……!)
レオは3人のやり取りの中である事に気づき、先程柱へ衝突していた物の方を見る。するとそこには――
(やっぱり! あの見た目、魔族の魔人か!)
「スケルトン……時間稼ぎの足止めですか」
「だろうな。とは言っても、相手は下級モンスター。どれだけ群れようとも我々の敵ではない」
「雑魚はすぐに片付けて奥に進んだんだけど、扉を開いたらちょうど竜王と敵のリーダーが戦闘を始めた所でさ。リーダーの援護に回ろうとしてたこいつらを俺達が引きずり出して来たってわけ」
「なるほど、だいたい状況は把握しました。私達は竜王の元へ向かうので、2人は引き続きその敵を見張っていてください」
「了解」
「あいよ。竜王は任せたぜ」
二人の答えに、グレンさんは一度頷いて返事を返す。
「レオ君、アリシアさん。申し訳ないのですが付いて来てくれますか?」
「はい!」
「私達にできることであれば協力させてください!」
「ありがとうございます。では急ぎましょう」
そうして、俺達は竜王が戦っているであろう皇の間へ向かった。




