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百三十話 激突

遅くなってしまい申し訳ありませんm(*_ _)m


 周囲を校舎に囲まれた中庭。そこの花壇の前に置かれたベンチで、レオは魔王が代わると言う状況について思考を巡らせ、アリシアはレオが何か結論を出すのを、静かに隣で待っていた。


「……」

「何か、思いつきましたか?」


 考え始めてから約五分。レオの表情が変わった事で、結論が出たのだと察したアリシアは、そう問いかける。


「嗚呼、どんな状況になれば魔王が代わるのか考えてみたけど、思いついたのは3つだな」

「3つ?」

「まず1つ目だけど、単純に世代交代。って言うのも、後継者がこのタイミングで見つかったとか、次期魔王として育てられた人がやっと認められたとかだな。2つ目は、何らかの事情で魔王が魔王としての役目を果たせなくなった。例えば、病気とか怪我とかね」

「どちらも有り得なくは無いですね。人間界で王が変わる時も、その多くはレオ君が今言った理由だと思いますし」

「だよな。そして問題は3つ目、多分これが一番最悪の場合だ」

「最悪……ですか?」

「そう、3つ目は魔王が何者かに殺害された」


 レオの考えついた結論の最後となる3つ目、その内容を聞いたアリシアの顔は一瞬青ざめる。


「っ! 大丈夫かアリシア? ごめん、ちょっと刺激が強すぎたな」

「いえ、少し目眩がしただけですので、大丈夫です。でもどうして、それが最悪の場合に? 確かに……殺害されてしまったという場合は悲しいですが、それだけではないですよね?」

「うん、人間界と魔界は今まで友好関係にあっただろ? 今までは魔界の中心にある魔王領の王、つまりは魔王と人間界の四大国、その王同士が仲良くしてたから友好関係にあったんだ」

「はい」

「それが正しい後継者や、長く育てられた魔王候補が次ぐなら引き続き友好関係は続けられると思う。でもその予定とは打って変わって、外部の何者かが魔王を殺し王位についたとしたら……」

「っ! もしかして!」

「そう、友好関係なんて破棄されて、攻撃されてもおかしくない」


 実際の所、人間と魔族の友好関係がどうやって結ばれたかなんて分からない。正式な書類の元に約束されたものなのか、あるいは口約束のような拘束力の緩い物なのか。だが、もし後者であったなら……


「そ、そう、ですよね……そういった可能性も、ありますよね……」

「い、いや、と言ってもまだ憶測の域を出ない話だし、こんな物語の中みたいな事にはならないと思うよ」

「そうだといいのですが……やっぱり、少し不安です。先生方もあれだけ慌ただしくしていましたし」

「そう言われると確かに……まぁ、何か騒ぎがあったのは確実だろうけど。だとしても、その時は大人達が何とかしてくれるさ。今俺達にできることは大人の出す結論を待つことだけなんじゃないかな」

「です、ね……レオ君の考えを聞いてたら、少し気が楽になってきました。ありがとうございます」

「そっか、なら良かった」


 アリシアが不安になるのも無理はない。命のかかった実戦経験なんて、大半の生徒は夏合宿が始めだろう。それだって、前例の無い緊急事態で、生きる為には戦わなければいけないという状況に無理やり引きずり込まれた結果に過ぎない。所詮、俺達はまだ子供なんだ。

 夏合宿で一度戦場の空気を感じているとは言え、事前に戦争をするかもしれないと言う状況になれば、誰しも少しは怖いものだ。

 尚且つ、アリシアは他の人よりも少し境遇が違う。王城に住んでいるという環境では、嫌でも国内の情報や他国との関係が耳に入ってくるだろう。それに加え、夏合宿では二人のクラスメイトの死を目の当たりにしてしまっている。不安を駆り立てる材料としてこの二つの理由は十分すぎるぐらいだ。人一倍優しく、正義感の強いアリシアが他者より不安を感じてしまうのも仕方が無い。


(だとしても、さっき言った通り俺達に出来ることは何も無い。こればっかりは大人に任せるしか……)


「お待たせしました。レオ君、アリシアさん」

「グレンさん、もう皆帰ったんですか」

「はい、さすがはAクラスと言った所でしょうか、皆さん聞き分けが良く、私の仕事もすぐに片付きました」

「それじゃあ、早速行きましょう」

「えぇ、ここに来るまで辺りを見て来ましたが、人の気配は無かったので、空間魔法を使ってもバレないでしょう」

「なら、安心して使えますね」

「そうですね。ただ、繋げる先は気をつけた方がいいかもしれない。街中や竜皇殿の外に開いてしまうと人の目に付いてしまう可能性もありますし、一応ドラグリアの出た先の森にしましょう」

「分かりました。『転移門(ゲート)』」


 そうして、俺はグレンさんの指示通りにドラグリアの外にある森の中へと転移門を開いた。


 ▽▲▽▲▽▲▽▲


 ――竜皇殿・皇の間――


 重く閉じられた瞼をゆっくりと開き、玉座に座る竜王は静かに呟いた。


「……来たか」


 その直後、3人の人影が靴音を鳴らし、皇の間へと現れる。

 否、内2名はどうやら人間ではないようだ。


「へぇ〜、ここが最奥か。道中と変わらず殺風景な部屋だなぁ」

「貴様ら、何者だ。ここへ来るまでに神官が何人か居たはずだが、そやつらはどうした?」

「そう言えば……何人か居たな、邪魔してくるやつ。全然こっちの話を聞いてくれないもんだからさ、消えてもらったよ。結構大変だったんだぜ?」


 リーダーと思しき真ん中に立つ男がそう答えると、怒りを抑え込むかのように、竜王は拳を握りしめ答える。


「そうか……それで、ここへは何をしに来た」

「白々しいぞ、竜王。俺の正体も目的もとっくに分かってるくせに。最初の何者だって奴も、中々面白い茶番だったぜ?」

「ふっ、どうやら……事前調査は万全みたいだな」

「嗚呼、その上で単刀直入に言わせてもらう」


 そう言うと同時に、男……アッシュは両手に魔力を貯め始めた。


「竜王の力とこの国を、奪い(もらい)に来た!」

「そう容易く奪わせるものか。いい機会だ、この竜王が直接教えてやろう。貴様の倒した魔王はな、王の座に着いてまだ500 年の若造だった。先代の魔王に会いに行った時は遊びがてらよく手合わせをしてやったが、当然相手にもならん」

「この状況で昔話とは、随分余裕なんだな?」

「当たり前だろう。言ったはずだぞ、教えてやると。魔王と比べ、竜王と精霊王はより精霊に近い。精霊に近いと言う事は魔力との親和性も高く、実力も桁違いに跳ね上がると言う事だ。あの魔王(ガキ)を殺した程度で調子に乗るような奴が、竜王を倒そうなど……思い上がるなよ、人間!」


 そして遂に、竜王が玉座から立ち上がる。


「格の違いを、見せてやる」

「ははっ、そう来なくっちゃなぁ! 面白くなってきた!」


 そうして、二人の王が今、激突した。


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