百二十六話 謎の声と双剣
「レオ君、なんかいいの見つかった?」
「いや、これといったものは無いな。どれも俺には必要なさそうなものばっかりだ。サクラは何か良さそうなものあったのか?」
「そうやなぁ、何本か使えそうな刀もあったんやけど、うちはまだこれでいいかな。愛着もあるし」
「そっか。まぁ、武器とかは使い慣れてる物の方がいいもんな」
「そう言うこと。それじゃあ、うちはもう少し何かないか探してくるわ」
「嗚呼」
そうして俺はサクラと別れ、何か使えそうな物が無いか探し始めた。
(って言っても、なかなか良さそうなものは見つからないな。槍は使った事ないし、盾も戦闘で使うとなると重そうだ。強いて言うなら、魔道具は便利そうな物が沢山あるな。どれも使い方は分からないけど)
そんなことを考えつつも、何かの参考になればと、レオは魔道具を異空間収納へしまっていく。
「よし、とりあえず使えそうな物は回収したかな。サクラ達の方は……ん? なんだあれ、……扉?」
一通り物色を終えたレオが辺りを見回すと、視界の端に黒い扉を見つけた。すると、レオは吸い込まれるかのように扉へと近づき、手をかける。
(中は……暗いな。目を凝らせば見えそうだけど、一応明かりはつけるか)
そうして、レオは光魔法で辺りを照らす。
「ここは、お墓……ではなさそうだな」
(けど、何となく似たような雰囲気は感じる。あんまり長居したい場所では無いな)
「ん? あれは……」
早々に戻ろうとしたレオだったが、部屋の先に刺さる物を見て、引き返す。
「剣……だよな。それも二本」
(刺さってはいるけど、傍に鞘もある。明らかに宝物庫にあった武器とは違うな)
保存の仕方もそうだが、何より素人であるレオの目から見ても、目の前に刺さっている二本の剣は、宝物庫で見た武器よりも遥かに優れた物だった。
「ここは一体……」
『レオ』
「っ!」
なんなんだ、そう言いかけたレオの耳に、どこからともなく謎の声が聞こえてきた。
「この声、どこから……」
『レオ』
(まただ、誰かの声が直接頭に流れてくる)
「っ! この声……もしかして、対抗戦の時の!」
『そう、君の答えは正解だ。けど、時間が無い』
「どういう事だ、お前は一体……」
『その質問に答えるのは、今じゃ無い。すまないけど、要件だけ伝える』
「要件?」
『その剣を、君に託す。どうか使ってやってくれ』
「この剣を、俺に?」
『その剣は、僕が友人達から貰った物だ。名前は……っと、どうやら時間みたいだね』
「時間って……」
『本当にすまない。でも、こうして会話ができること自体奇跡みたいな物なんだ。その剣の名前は竜の子にでも聞くといい、それぐらい知っているだろう』
「竜の子?」
『それじゃあ……またねレオ』
「あ、ちょっと、待てよ! まだ何も……」
『大丈夫。またいつか、こうして話せる時はくる。その時まで、僕はずっと……待ってるよ』
そう言い残して、謎の声は聞こえなくなった。
(一体、あいつは何者なんだ……)
「おーい! どこだー、レオー!」
「レオくーん!」
数秒、レオが考えていると宝物庫からダリスとサクラの声が聞こえてくる。
(いや、考えるのは帰ってからにしよう。今はとりあえず……)
レオは目の前に刺さる二本の剣を引き抜いて鞘へとしまい、宝物庫へと戻った。
「悪い、遅くなって。三人はもういいのか?」
「おう、一通り欲しい物は探し……って、お前その剣どうしたんだ!?」
「さっき、うちと話した時は持ってなかったみたいやし、今見つけてきたん?」
「あ、あぁ、ちょっとこの先にな。けど、これ以外は殆ど何も無かったよ」
「見ただけでも分かる、かなりいい剣やねぇ。刀やったら業物間違いなしや」
「業物って言うのがよく分からないけど、やっぱり凄い武器なのか」
(これは、余計あの謎の声が誰なのか、気になってきたな)
「とりあえず、さっさとここから出ようぜ」
「そうだな、アリシアも待ってるだろうし」
「もぅ〜、レオ君にはうちがおるやろ〜?」
「ちょ、おい、くっつくなって!」
「サクラ、そんなに迷惑かけたらあかんで。あんまり遅いと、ユキノ達も心配するやろし、はよ戻らんと」
「はぁ〜、まぁ、仕方ないな。うちもさすがに疲れとるし」
カエデの助力もあり、何とかサクラから解放されたレオは、そのままアレク達を送った時同様に転移門を開いた。
「それじゃあ、帰るか」
こうして、レオ達の迷宮探索は無事に終了した。
▲▽▲▽▲▽▲▽
「おや、どうやら帰ってきたみたいですね」
グレンの言葉に釣られ、眠っているアレク以外のその場に居た六人が一斉にグレンの視線の先を見る。すると、視線の先にある柱の影からカエデ、サクラ、ダリスそしてレオの順番で姿を表した。
「ふぅ〜、やっと地上に戻ってきたなぁ」
「カエデさん! お怪我はないですか?」
「うちがそんな簡単にやられるわけないやろ。でも、心配してくれてありがとうな、ユキノ」
「いえ、信じていたので」
「ユキノはほんま大袈裟やなぁ。迷宮から戻ったぐらいでそんな死地から帰還した〜見たいな空気出さんでもええのに。あ、シロウただいまぁ〜」
「さ、サクラさん! 次は一体何をしでかしたんですか!」
「? 急にどないしたん。帰り道に頭でも打った?」
サクラが首を捻るのも仕方ないだろう。何故ならアリシアシロウ達と合流した後のやりとりを、地下に居たサクラが知れるはずも無いのだから。
「あっちの四人は元気だね。それで、宝物庫どうだったんだい?」
「そうだな、俺はなかなかいい物が手に入ったぜ」
「俺も、一応収穫はあったかな」
そうして、レオは宝物庫の先で手に入れた二本の剣をシン達に見せる。
「へぇ……確かに、俺の聖剣と同等の雰囲気を感じるね」
「ほう、これはなかなか……っ!」
「グレンさん? どうかしたんですか?」
突然様子の変わったグレンを見てシンがそう、声をかける。
「……レオ君、これをどこで?」
「えっと……宝物庫の先の小部屋? みたいなところです」
「そうですか……この剣、しばらく私が預かってもよろしいですか?」
「えっと、はい、大丈夫ですけど……」
グレンの頼みを聞いて承諾して剣を渡したレオは、謎の声が言っていた事を思い出す。
『竜の子にでも聞くといい』
「っ! もしかして、この剣について何か知ってるんですか?」
「えぇ、この剣は二本で一対の双剣です。名は天海、冬の空のように白い霜天と海の底のように暗い深海、二本の名前から一文字ずつ取っていると聞いています」
「天海……」
「この剣について、竜王なら何か知っているかもしれません」
「本当ですか!」
「はい……なので後日、時間のある時にドラグリアへ行きましょう」
「分かりました」
(あの声について、ゼファーさんなら何か知っているかもしれない)
「あの〜、お話中に申し訳ないのですが、もう外も暗くなり始めてるのでそろそろ帰りませんか?」
アリシアに声をかけられて入口の方を見ると、太陽は既に沈みかけ空は茜色から漆黒へと変わり始めていた。
「そうだな、話は来週学院でもできるし。あ、でも……サクラ達はどうするんだ?」
俺はここからヤマトまでの距離を考え、隣で話していたサクラに声をかける。
「今日の所は宿屋で休んで。明日の早朝に帰る予定やね。近くの街に宿もとってあるし」
「そっか、それじゃあここでお別れだな」
「寂しいけど、こればっかりは仕方ないなぁ」
「嗚呼、キョウヤにもよろしく伝えておいてくれ」
「うん、分かった。あ、ごめんなレオ君最後に一つお願いしてもええ?」
「どうした?」
「少ーしだけ。しゃがんでくれへん?」
「?」
何をしたいのかは分からなかったが、とりあえず俺は言われた通りに、サクラの身長に合わせて屈んだ。すると、サクラの顔がゆっくりと近づき……
チュッ
「なっ!」
一瞬、何が起きたのか理解が追いつかなかったが頬に触れたその感触に、俺はすぐに状況を理解した。
「ふふっ、これで当分の間のエネルギーは補給できたわ、ありがとぉな」
「いや、お前何して!」
(こんな事がアリシアにバレでもしたら大変なことに……)
考えただけでも額から冷や汗が流れてきたが、俺の体が死角になってアリシアには何とかバレていないようだった。しかし……
「あら〜、サクラも大胆やねぇ。レオ君もこればっかりは責任とるしかないんやないのぉ?」
「さ、サクラさん、なんて事を……」
「ほんと、レオは人気者だね」
「レオ、浮気はダメ」
そんなふうにカエデ、シロウ、シン、サヤの四人からからかわれてしまう。いや、シロウに関しては違うな、白目向きかけてるし。サヤのはからかってるのか?
「? どうかしたんですか? レオ君」
「あっ、いや、何でもないよアリシア。怪我が無いか心配してくれただけだから」
「そうですか、それならいいのですが……」
「う、うん、大丈夫……」
(ふぅ、何とか誤魔化せたか?)
「本当、アリシアに見られて無くて良かったね。これが見られてたら多分、レオ君今頃氷漬けだよ?」
「か、考えるだけでも恐ろしいな……」
(もしかしたら、アリシアから死角になったのも全てサクラの計画通りなのかもしれないな……今度からは気をつけよう)
「それじゃあレオ君、また今度会おな〜」
「あ、嗚呼、それじゃあ……」
「アストレアの皆さんもお元気で、寝てるアレク君にもよろしく言っといてな」
「はい、カエデさん達もお気をつけて」
そうして、サクラ達は迷宮を後にし、それに続くようにして、俺達も人気の無い所に開いた転移門で王都へと帰った。
最初から最後まで色々あったけど、俺達の初迷宮探索は無事に、終了した。
これにて、長く続いた第6章も最終話です。次回からはまた新たに第7章がスタートします。(タイトルは未だ考え中)お楽しみに。
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「組織を追放され、絶望した重力魔道士。この世界で生きる気力を無くしたので二度目の人生に希望を託し転生します! 〜人の世界を救った英雄のはずなのに組織から裏切られた俺は、二度目の人生を幸せに生きたい〜」
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