百二十四話 『凡才』アレックス・フォン・アルカード
『あぁ、神の子よ……』
5歳の誕生日。自身の魔力属性を知ったその日に、俺は教会の神父にそう言われた。
家柄もあるのか、王国中に俺の適正が四属性だと広まるのにもあまり時間はかからず、それ以来街中や入学、何かのイベントの度に天才などともてはやされてきた。
挙句の果てには神童なんて言う二つ名まで付けられるほどだ。
天才でも何でもない。しかし、そんな俺の心情なんてお構い無しに、民衆は俺を天才だと褒め称える。
普通の年頃の子供なら、それは成長を促す良い起爆剤になったかもしれないが、前世の記憶を思い出したことで精神年齢が青年程度まで上がった俺には、大きなプレッシャーでしか無かった。
(俺は自分が天才だなんて思った事は一度もない。記憶を取り戻したあの時から、この身に余る力も何もかも、俺は運が良かったとしか思っていない)
その気持ちは、高等部に上がり自身より上のレベルを体験することで、より強くなった。
(ほら見ろ、俺より才能のある奴なんてこれだけいるんだ。こいつらに比べて俺は天才でも何でもない。他の人よりできるこ とが多いだけで、一つ一つのやれる事は何ら変わらない。逆に言えば、選択肢が増えることで考える事も増えるとなれば、その道だけを突き進む者より劣っているかもしれない)
だが、そうして努力を重ね強くなったところで、その過程を知らない者は、アレクの強さを才能から来るものだとしか理解ができない。
それは、秀才であるアレクを天才だと決めつけ、表面上のステータスだけしか見ていないと言う証拠だ。
勝手に天才と持ち上げられ、自身の行ってきた努力は認められない。そんなもの、アレクからすれば他人の迷惑を考えず、自身の利益の為だけに取り入ろうとしてくる、エゴイストと同類だった。
(自分の意見を押し付けて、相手の感情は一切考慮しないだと? ふざけるのも大概にしろ……)
「俺は……ただの凡才だ」
その言葉と同時に、アレクは魔物の足元へと指していた一番近いカードへ魔法を放ち、カードを起動させる。すると、魔法の当たったカードから円を描くように、次々とカードへ魔力が灯り、最後の一枚まで魔力が灯った時、アレクの言葉でそれは起動する。
「『簡易結合式魔法陣・八重』」
アレクの言葉で、八枚のカードからそれぞれ欠けた魔法陣が浮かび上がり、次々と重なり合って一つの魔法陣が完成した。
「グ、グォォッ!?」
突如足元に現れた魔法陣が何なのか、魔物には理解出来ず、発動した魔法陣から発せられる雷魔法により身動きを封じられていた。
「八重……八枚のカードを使い、相手の動きを止めて攻撃する魔法。上下左右の四枚を消費して動きを止める為の魔法発動し、残りの四枚を消費してカードに込められた分の魔力を全て攻撃魔法に乗せる」
「グ、グォォ」
「その魔力量は、起動させる際に手前のカードへぶつけた魔法の威力によって変わる。そして、さっきの俺の攻撃には、この魔法陣を起動させる為の魔力だけを残し、それ以外の残る全魔力全て乗せた。これが、その一撃だ!」
アレクの気迫を間近で感じ取り、その危険度を悟ったのか、どうにかして逃げようと藻掻く魔物。しかし、アレクの魔法に捕まったその巨体は思うように動かす事はできない。
「くらえ、『雷撃』」
――ドッガァァァァァッ!
一瞬だった。轟音と共に、魔法陣から天へと登るような稲妻が現れ魔物の巨体に直撃。その数秒後には、魔物の体を黒い灰へと変えて言葉通り消滅させていた。
「ハァハァハァ、クッ……」
(さすがに……体も、魔力も、何もかもが限界か……)
ドサッ
「――レクッ! ――クッ!」
疲労から、アレクはその場に倒れる。そんなアレクの姿を見てレオ達が駆け寄るが、その声は届かずアレクは目を閉じた。
▲▽▲▽▲▽▲▽
「――ンッ、ここは……」
「お、起きたかアレク」
「レオか……悪い、気絶してしまったみたいだ。俺はどれぐらい気を失ってた?」
「正確な時間は分からないけど、5分ぐらいだな」
「そうか、思ったより短くてよかった……」
「多分、気絶した後すぐにグレンさんから貰った魔力ポーションを飲んだおかげだろ。同時にアリシアが回復魔法もかけてたし」
「なるほど、そういう事ならあまり時間もかけてられないな。早速奥の部屋へ行こう」
「いいや、お前はここでアリシアと戻れ。さっき少し見てきたけど、この先には部屋は一つで、そこが迷宮の宝とかがある部屋っぽいし、魔物はもう出てこない」
「しかし……」
「それに、目は覚めたけど見た感じ立つのだってやっとだろ。迷宮に入った時に人が集まらなさそうな所は探しておいたから、帰りはそこに俺の転移門を開く。ちょっと卑怯ではあるけど、二人は先に戻ってシン達と合流しといてくれ」
「……ふっ、分かった。そういう事なら先に戻らせてもらう」
「おう」
そうして俺は帰り道の転移門を開きアレクとアリシアを見送った。
「さてと、俺達もこの先のお宝を持って帰るとしますか」
「そうだな、これだけ苦労したんだ、どんな凄ェ物があるのかワクワクするぜ!」
「うちは実用性のあるもんがええなぁ」
「そうやねぇ、新しい刀とかあるとええんやけどなぁ。レオ君は何が欲しい?」
「俺も珍しい魔道具とか、それこそ今使ってる魔装にも限界が来てるし新しい魔装か、その素材になる物が欲しいな。まぁ、ここでいつまで話してても時間の無駄だし早速行こうぜ」
俺の提案に三人は首を縦に降り、俺達は最後の部屋、宝物庫へと向かった。
数話前から主人公がアレクなのではと作者本人ですら錯覚していますが、この作品の主人公は間違いなくレオです。(アレクの方が主人公っぽいことしてるけど……)
ちなみにアレクが最後にあの魔法を使うと決めた理由は、出血させずに有効打になりうる魔法があれしか無かったって言うのもありますが、戦闘中ちらっと視界に移ったレオ達が、何度も蘇る相手を燃やし尽くして倒していたからやろうと思えた、と言う経緯があったりします。
さて、長く続いた第6章も残すところあと数話。次章は果たしてどんな話が待っているやら、乞うご期待。
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以下タイトル
「組織を追放され、絶望した重力魔道士。この世界で生きる気力を無くしたので二度目の人生に希望を託し転生します! 〜人の世界を救った英雄のはずなのに組織から裏切られた俺は、二度目の人生を幸せに生きたい〜」
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