百二十三話 迷宮攻略⑪
この世界に転生する前……前世の世界で学生だった時に、俺には仲のいい友達がいた。
そいつは決して自分から目立とうとする訳でも無く、勉強や運動だって平均より少し高い程度。テストではギリギリ上位に入らないし、授業でスポーツをやっても運動部の影に隠れてしまう。
でも、俺はそんな友達にいつの間にか憧れていた。
運動や勉強に限らず、何でもそつなくこなしてしまう器用な友達がかっこよくて、自慢で、一緒に居るうちに憧れるようになった。
けど、その憧れは時間が経つにつれ泡のように消えて、最後 には劣等感となって全て俺にのしかかってきた。
俺はこいつには勝てない。どんなジャンルで勝負しても、一歩手前で追いつくことができない。
そう悟ってしまった俺は、自分の中で勝手に自分はあいつの友達にはふさわしくないと決めつけて、自然と距離を置くようになっていた。
ある日を境に距離を取り始めた俺を……多分、理由を分かった上であいつは触れないでいてくれたんだろうな。
今では、もうそいつと話すことも出来ないけど、この世界に転生したことは悪い事ばかりではなくて、逆に俺はチャンスだとも思った。
幸い、この世界では才能に恵まれたらしく、四属性の魔法を扱える神童だと周りからはもてはやされた。
だが、才能だけで生きていける程この世界は甘くない。その才能を十分に発揮するにはその分だけの身体作りと、それを扱い切れるだけの知識が必要だった。その両方を身につけてやっとスタートラインに立つことができる。技術や応用はその後だ。
そうして、日々鍛錬を欠かさず魔法学院に入学、中等部までは成績トップだったものの高等部に進学し、その世界は変わった。
隣には常に希少な二属性を使いこなし、俺よりも多い魔力量と魔法への知識で規格外の事を成し遂げるレオ。
対抗戦では勇者と呼ばれ、聖剣に選ばれたシン。二つ名は無いものの帝国の王子でありながら協力な魔法を使いこなすベリアル。そしてこれら3人を凌駕する剣聖。
この4人を見たら、自分より上なんていくらでもいると痛感してしまった。
挙句の果てに……この中で少なくとも二人は今も尚、新しい事を吸収して成長しているときた。
けど、最近その二人を近くで見ていると、自身の心のどこかで負けたくないって気持ちが芽を出した気もする。
「全く、情けない話だ……」
いつでも、どこに居ても、俺は自分が周りの人間より劣っていると諦めて、自分自身で成長の芽を摘んできていた。才能がありながら、成長を止める。傍から見たら宝の持ち腐れでしかないでは無いか。
「こんな簡単な事を、今になって気づくなんてな」
(俺にはあいつらにだって負けていない才能がある。それを使いこなせるかどうかは俺次第だぞ、アレックス・フォン・アルカード!)
あいつらに追いつくためにも、期待してくれている者の為にも、俺はこの程度の実力で立ち止まる訳には行かない。ましてや、自分で自分の成長を止めるなんて以ての外だ。
(ここから、更に強くなるために。自分のなりたい自分になるために)
「……こいつは、俺一人で倒す」
降りしきる雨の中、自分に言い聞かせるかのように、アレクは眼前の悪魔を睨みつけ、静かに呟いた。
▲▽▲▽▲▽▲▽
バリッ!
「ふっ!」
ドゴォッ!
「グォォォッ!」
(まずいな、服が水を吸っているせいか体が重く感じる。今は何とかこいつの筋肉を麻痺させて数秒動きを止められてはいるが、相手もこれに慣れてくればいつかは動きを捉えられる。その前にもっとスピードを上げておくか)
バリッバリリッ!
体に纏わせている魔力の総量を増やし、アレクは今より更にスピードを上げて魔物へと連打をあびせる。
ドッ!バキッ!ドガァッ!
「ゴッ、グッ、グォォォッ!」
(もっとだ、もっと速く!)
「っ!」
ただでさえ、常人では目で追うことすら出来ない速度まで到達しているにも関わらず、今以上にスピードを上げようとしていたアレクだが……一瞬、1秒にも満たないその間で振りかざした右腕に違和感を感じ、動きを止めた。
「ちっ……そろそろ限界か」
(いくら使い慣れている魔法で、尚且身体強化で魔力耐性を上げていると言っても、これだけずぶ濡れの状態じゃあ俺自身も感電するのは時間の問題だ。想定していた事とはいえ、予想よりも早かったな)
自身の見に起きた異常の原因が分かったアレクは、何とか右腕を振り上げ、悪魔の左頬を殴り一旦下がる。
「……あまり、時間はかけてられないな。だが、準備はもう済ませてある。次が、最後の攻撃だ」
(この一撃に、俺の出せる限りの魔力全てを乗せる!)
▲▽▲▽▲▽▲▽
アレクが魔物と一対一の戦闘を繰り広げる中、レオとカエデは後方で待機しているアリシア達と共にその姿を見守っていた。
「ここからでも分かるぜ。アレクの体をとんでもねぇ量の魔力が包んでやがる」
「先程のサクラさんの攻撃も凄かったですが、今のアレクさんからはそれと同等か、もしかしたらそれ以上の威力が出るんじゃないかってプレッシャーを感じます」
後方から今までの戦いを見てきたダリスとアリシアが、目の前の魔物と対峙するアレクを見て各々の感想を口にする。
「嗚呼……多分、アレクはこれで決めるつもりだ」
(でも、一体何を……)
そうしてレオがアレクの狙いを考えていると隣で休んでいたサクラが声をかける。
「今のレオ君の考えてること、当ててみよか?」
「え?」
「どうせ、アレク君が何をするんや〜って考えてるやろ」
「う、うん。よく分かったな」
「レオ君は考えてる事が顔に出やすいからなぁ。ちなみに、レオ君が求めてる答えのヒントは魔物の足元にあるで」
そう言いながらサクラは魔物の足元を見るようにと指を指す。
「魔物の、足元……?」
「うちはあれ見ただけじゃよぅわからんけど、これまで一緒に戦ってきたレオ君なら、何かのヒントにはなるんやない?」
「あれは……」
水溜まりの反射や戦闘の形跡で見えづらい中、レオが目にしたのは、地面に刺さったアレクが戦闘の際に使用するカード型の魔装だった。
(確か、あれには事前に魔法陣が書いてあって、それを媒介に詠唱無しで強力な魔法が使えたはず。そのカードが1、2、3……8枚、魔物の足元に刺さっている。単純に考えれば強力な魔法を8発発動するってことか?)
「いや、アレクの事だ。もっと何か別の方法を考えてるかもしれないな」
「レオ君、何か分かったんですか?」
「残念ながら。まぁ、どちらにせよ、アレクが一人でやるって決めたんだ。俺達はそれを信じて見守るしかないよ」
「ふふっ、そうですね。私達はアレクさんが戻った時に休める準備をしておきましょう!」
「そうだぜ、あんだけ魔力使ってんだ、もしかしたら魔力切れでぶっ倒れるかもしれねぇからな」
「そしたら気ぃ失ってる間に、顔に落書きでもしたろか?」
「お、いいなそれ。面白そう」
「なら、うちはおでこに目書きたいなぁ〜」
そうしてダリスとアリシアは魔力ポーション等を用意し始め、俺とサクラ、カエデの3人は、できるかも分からないイタズラの作戦会議で盛り上がっていた。
長くなりすぎたので2話に分割します。本来は次の回とセットで一話の内容なのでぜひ続けて読んでいただけるとありがたいです。、
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以下タイトル
「組織を追放され、絶望した重力魔道士。この世界で生きる気力を無くしたので二度目の人生に希望を託し転生します! 〜人の世界を救った英雄のはずなのに組織から裏切られた俺は、二度目の人生を幸せに生きたい〜」
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