百十六話 休憩②
――七層・入口前広場――
七層において偶然合流をした俺達は、休憩がてら互いの経過報告をする事になった。報告も一段落し、今は俺、アレク、サクラ、カエデの四人でその報告を元にこの先の方針や予想を立てている真っ最中だ。
「なるほど、ここまでの話を照らし合わせるとこの迷路は一本道に見えて実は巨大な迷路みたいになってるってことか」
「そうみたいだな。レオ達が進んだ道をA、俺達が進んだ道をBだとするなら、Aがその階層の最深部に辿り着くまでの間Bの道を進む者と鉢合わせないように遠回りをさせられていた。という事だろう」
俺の予想ではその階層自体がとてつもない広さで1枚の壁で分断されてるんだと思ってたけど、どうやら一本道と曲がり角を使って攻略時間がずれるように上手く誘導されていただけらしい。
「どうりで……別の道を進んでるのに出てくる魔物が一緒やと思ったら、そういうことやったんやな」
「でも、左右の道で攻略にかかる時間が変わるんなら、なんで今合流できたん?」
そう疑問を述べたのはサクラだ。
「多分だけど、階層が変わる事に遠回りする道もAとBで変わってたんじゃないか?」
「十中八九そうだろうな。まぁ、その辺は個人の実力によって誤差は出るだろうが、大体は近い時間になるだろう」
「つまり、ここで合流したのは偶然ではなく必然だったってことですね」
「はぁ〜、なんや上手いこと手の上で転がされてる気分やなぁ」
確かに、ここまで綺麗に誘導されると意図的な何かがあるんじゃないかと考えてしまうな。
「……」
「どうかしたのか、アレク?」
「いや、今のカエデの言葉が少し気になってな」
「うちの?」
「あー、手の上で転がされてるって奴か」
「嗚呼、あまりにも上手く誘導されすぎている気がしてならないんだ」
どうやらアレクも俺と同じ事を考えていたらしい。
「何にせよ、態々分かれ道を進ませていたのにここで合流させたという事は少なからず意味があるはずだ。考えられる理由としては……」
「敵が今まで以上に強くなるってことか」
「そういう事だ。まぁ、現状言えるのは警戒を怠らないってだけだけどな」
「それでも、とりあえずの方針が決まったならええんちゃう? それよりも、問題なんはこの後どうするかやろ?」
そう言うと、カエデは辺りを見回した。
「あー、確かに。だいぶ人増えたよな」
「合流したってことはここからは一本道やろうし、この人数で行くのはちょっとせまいなぁ」
現在の人数は俺達アストレア組が八人、ソルヴァレス組がその半分の四人で計十二人の大所帯だ。
「その件についてですが、私から一つ提案があります」
「グレンさん、何かいい案でもあるんですか?」
「いいかどうかは皆さん次第ですが、ここで先に進むメンバーと引き返すメンバーに分けてはどうでしょう」
(メンバーを分ける?)
「各々持参してきた魔力ポーションで魔力自体は回復しているみたいですが体力まではさすがに回復しきれていません。限界が近い人も中に入るでしょうし、その人達には上の入口か外の街で休憩していてもらう。という事です」
「なるほどなぁ。確かに、うちの方もシロウなんかは疲れてきてるみたいやし、その案は正直ありやな」
「嗚呼、俺も賛成だ。第一この人数じゃ連携も取れないしな」
「では、決まりということで」
という訳で、今後の作戦も決まった訳だが、そうなるとまた新たな問題が発生してくる。
「それはいいとして、じゃあ誰がこの先の階層に進むんだ?」
「人数も決めないとだな。多くても今の人数の半分辺りまでは減らしたいか」
「うちはまだまだ行けるで。さっき貰ったポーションのおかげで魔力はもちろん、レオくんが途中の蜘蛛を倒してくれたから体力も残ってるしなぁ」
「ならうちも行こか。サクラが行くんならお目付け役が必要やし、さっきも言った通りシロウは限界が近そうやからな」
「分かった。レオ、こっちはどうする。俺はまだ行けるが……」
「そうだなぁ、俺も大丈夫だけど」
(そもそも、先に進むか引き返すかは俺が決めていいことじゃない気もするしな)
俺は判断に困り、行動を共にしていたグレンさんに目を向ける。
「そうですね、アレク君達の方は分かりませんがこちらからシン君は引き返させます」
「シンを?」
「はい。本人は嫌がると思いますが、気づいていないだけでかなり体力を消耗しています。現に一つ上の階層では戦闘の質が落ちていた」
そうだったのか。隣で戦ってたってのもあるだろうけど、それでも全然気づけなかった。
「恐らく彼に決めさせれば行くと答えるでしょうし、ここは家庭教師として私が判断します」
「けど、シンが引き返すとなるとサヤちゃんもそれについて行くだろうな」
「嗚呼、そっちの三人の内回復魔法が使えるやつはいるか?」
「一応うちは使えなくも無いんやけど、恥ずかしい話、自分の傷を直すのも時間がかかるんよ。それも傷の治りを早くする程度で塞ぐことは無理やし、他人の傷を治すなんてとてもじゃないけどうちじゃ不可能や」
アレクの問いかけに対してカエデがそう答える。
「なら回復役はアリシアに頼もう。そうしよう」
「決断が早いな……まぁ、それに関しては異論は無い。他に回復魔法が使える奴もいないしな。アリシアにはこの後お前から伝えておいてくれ。それと、ダリスにも頼む。俺以外にもう一人土魔法が使える奴が欲しいからな」
「了解」
「こっちからはうちとサクラで行くわ。ユキノも体力が多い方じゃないしな」
「分かった。それじゃあとりあえずはこの六人で決まりだな」
そうして、この先に進むチームが決まった。
メンバーはアストレア側から俺、アリシア、アレク、ダリスの四人。ソルヴァレス側からはサクラとカエデの二人の六人だ。
▽▲▽▲▽▲▽▲
「はぁ〜」
「そう落ち込むなって、シン。また皆で来ればいいだろ。この迷宮の仕組みはもう分かったんだし」
「そうだよ、シン。今日は一緒に戻ってゆっくり休もう?」
「分かったよ……」
口ではこう言ってるけど、納得はできてなさそうだな……
「アレク君、ちょっといいですか?」
「大丈夫ですけど、何ですか?」
「これを渡しておこうと思いまして」
「……これは?」
「神竜国特性の魔力ポーションです。レオ君とサクラさんにはもう飲んでもらったのでよっぽどの事が無い限り大丈夫だとは思いますが、この先何があるかわからないので」
「なるほど、それじゃあ有難く受け取っておきます」
「アレク、準備できたか……って、それ神竜国で作られた魔力ポーションだよな?」
「らしいな、今グレンさんに貰ったんだ」
(なるほど、そう言うことか)
「君たち二人は魔力量も多いですが、その分魔法で使う魔力量も常人より遥かに多いですからね。持っていて損は無いでしょう」
「確かに。でも大丈夫かアレク? それ結構味濃いみたいだぞ」
「なんだ味濃いって、不味いのか?」
「うーん、不味くはないけど……」
「いや、それ以上は言わなくて大丈夫だ。今の反応で大体察した」
「そ、そうか……でも、薄めれば大丈夫みたいだし何とかなるだろ」
「えぇ、使う際はレオ君かサクラさんに聞いてください」
「分かりました」
「よし、それじゃあ迷宮攻略再開するか!」
そうして俺達は二組に別れ、シン達は地上へ、俺達は迷宮の奥へと進んだ。
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「組織を追放され、絶望した重力魔道士。この世界で生きる気力を無くしたので二度目の人生に希望を託し転生します! 〜人の世界を救った英雄のはずなのに組織から裏切られた俺は、二度目の人生を幸せに生きたい〜」
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