百十三話 迷宮攻略③
「ふぅ、やっと終わったなぁ。数が多くて気色悪いけど」
「協力感謝する。が、どうしてお前達がここに?」
「サクラちゃんの我儘に付き添ってるんよ、新しい迷宮に行きたい〜ゆうから仕方なく」
「サクラさんも来てるんですか?」
「えぇ、さっきの分かれ道で別の道に行ってもうたけど」
と言うことは、あっちも今頃レオ達と再開してるかもな。
「それより、こっちもほんま助けられたわ。そちらさんが前の部屋の蜘蛛どうにかしてくれたお陰で、うちらも随分と楽やったなぁ」
「ですね、あそこで魔力を使っていたら今頃どうなっていた事か」
「なら、お相子という事だな」
「せやせや、人間困った時は助け合いやで。ところで……そっちは彼、あの首席の子ぉは一緒に来とらんの?」
「いや、こっちも今は別行動だ。ちょうど四階層の分かれ道でな」
「なるほど、それはサクラちゃんも喜ぶやろなぁ。あの子、そっちの首席君の事えらく気に入っとったみたいやから」
ピクッ
「へ、へぇ、そうなんですね。ちなみにお聞きしたいのですが、具体的にはどんな風に気に入ってたんですか?」
「ア、アリシア? どうしたの?」
どうやらサクラがレオのことを気に入っているという単語にアリシアのセンサーが反応したらしい。
「そうですね、対抗戦が終わってしばらくの間はずっと彼の話をしていました。それはもう、毎日学院に幾度に」
「へぇ、他には?」
「ほ、他ですか? 他は……」
「そう言えば、一回大好きやぁ〜言うてたこともあったなぁ」
「ダイ、スキ?」
「せや、大好き」
アリシアの呟きに対して、わざとなのか無意識なのか律儀にそう返答するカエデ。
(いや、これはわざとだな。見ろあの顔、狐みたいに口角が上がっている。どうせアリシアの反応を見て楽しんでるんだろう)
「そう、ですか。ではレオ君にもしっかり伝えておかないといけませんね」
「その必要は無いかもしれんで、ほら、さっきも言った通りあの子も今別行動中やから。もしかしたらあっちはあっちで再開しとるかもしれんし、直接言ってるかも?」
それを聞いてアリシアの身体から徐々に魔力が漏れ始める。
(はぁ、そろそろ止めないとまずそうだ)
「その辺にしてくれるか。あまり内の王女様をからかわないでくれると助かるんだが」
「あら、やっぱりバレてしもうた? ごめんなぁ、ちょっとからかいすぎたわ」
「な、何だ、冗談だったんですね」
「いえ、今言った事は全部事実で……むぐっ」
「はい、ストーップ。ユキノ、それ以上は言わん方がええ事もあるんよ。それより、そちらも引き続き奥に進むんやろ? 見ての通りうちら二人やから手数が足らんくてなぁ。良ければ一緒に行ってもええか?」
「嗚呼、構わない。こちらも人手が増えるのはありがたいからな」
「それじゃ、早速行こか」
そうして、アレク達はカエデ、ユキノと共に、第五階層を進んだ。
□
第六階層へと降りたレオ達は、最初に見つけた部屋の魔物を狩り、休憩がてらしばらく談笑をしていた。
「じゃあ、サクラ達も他の奴らと別行動してるのか」
「せや、まぁ、キョウヤは仕事があって来れてないんやけどな」
「それは残念だ。彼とはもう一度手合わせしてみたかったんだけどね。ところで、さっきのスケルトンはどうやって倒したんだい? 魔法は効かなかったはずだけど……」
確かに、それは俺も気になっていたところだ。あのスケルトンの来ていた鎧は魔法を打ち消してしまう。なのにサクラの攻撃は普通に聞いていた。何か特殊な倒し方でもあるのか?
「それについては私からお答えしましょう」
「何でグレンさんが?」
「グレンさんはすぐにでしゃばる。目立ちたがり屋」
「うっ、今の言葉、否定できないだけになかなか刺さるものがありますね」
サヤちゃんの何気ない言葉にグレンさんは予想以上のダメージを受けているみたいだ。精神的に。
「それより、どういう原理か分かったなら教えてくださいよ」
「はい、スケルトンがサクラさんの手で倒された後、その亡骸を見たのですが、見事なまでに灰になっていました。では何故、彼女があのスケルトンを倒す事が出来たのか、その理由は攻撃方法と場所にあります」
「攻撃方法と」
「場所?」
「えぇ」
「そうなのか、サクラ?」
「ご名答、あの一瞬の内にそこまで見てるとは、流石は竜王の副官さんやなぁ」
どうやらグレンさんの解答は当たっていたらしい。
(なるほどな、今のグレンさんの答えで何となく分かってきたぞ)
「それで、どんな場所を攻撃したんだい?」
「鎧の着ていない、本体の部分や」
「? それなら俺達もやってたけど、再生が早すぎてとてもじゃないが倒しきるなんて無理だ。なぁ、レオ?」
「嗚呼、けど、サクラのあの攻撃なら別だ。グレンさんが言った攻撃方法って言うのはそう言うことですよね?」
「はい、サクラさんは刀に魔法を乗せる事で、魔法攻撃と物理攻撃を同時にぶつけた。それも、火属性の魔法で」
「なるほど、そう言うこと」
「サヤも分かったのかい?」
「うん、何となく」
どうやらまだ答えにたどりつけていないのはシンだけみたいだ。
「座学の不出来なシン君にも分かりやすく説明すると、ただの魔法攻撃や物理攻撃ではただ骨が外れるだけですぐに再生されてしまいます」
「はい」
「ですがそれを魔法と物理同時にぶつけることによりただ切るのでは無く骨を焼き切っているのです」
「なるほど?」
「そうして焼き切ることで再生を遅らせ、その間に炎で骨全体を燃やし尽くした」
「っ! そう言うことか!」
グレンさんのミニ授業によりようやくシンも理解ができたようだ。
「仮にあの鎧を反魔法の鎧だとするなら、魔法を無効化できるのはあのスケルトンでは無く鎧です。なら、骨自体を攻撃すれば魔法も通じる」
「それで、骨が剥き出しになっている場所に、魔法と物理同時に攻撃する事で再生を遅らせて再生される前に燃やし尽くした、って言うことですよね!」
「はい、そう言う事です」
強敵を倒した方法を理解し、シンの目は輝きに満ちている。
「まさか、こんなあっさり見破られるとは思わなかったなぁ」
「あの人、恐ろしく動体視力が良いですね」
「それがレオ君達の味方をしてる言うんやから、尚更恐ろしいわ」
「ただでさえ強い彼らに、さらに強い上位者が協力関係にある。ほんと、味方で良かったですね」
「せやね」
「何話してるんだ?」
「んー? いや、ただでさえ強いレオ君達に、とんでもないバケモンが味方しとるなーって話してただけよ」
確かに、既に慣れてしまっているが、初対面の人から見たらグレンさんの強さと言うか、身に纏う雰囲気は化け物に見えるか。
「グレンさん化け物か、ふっ、間違っちゃいないな。あの人ニコニコしながら超スパルタだし」
「なら、間違いないなぁ。それより、うちはレオ君の話も聞きたいんやけど? 対抗戦の後の事、話せる限りでいいから聞かせて欲しい」
「そうだな、それについては歩きながら話すよ。十分休憩もしたし、そろそろ出発しようぜ」
「せやね、ほな行こか」
そう言うと、サクラはその場から立ち上がり、俺の腕を抱き寄せる。
「ちょ、おい、何してっ!」
「いいやないのぉ、これぐらい。べつに減るもんやないし」
「そ、そう言う事じゃなくて!」
「レオ、浮気?」
「ち、違うから! サヤちゃん、この事絶対にアリシアに言うなよ!?」
アリシアは意外と嫉妬深いんだ。日常生活では分からないけど普段から一緒にいる俺には分かる。こんなこと知られたらどうなることか……
「やましい事が無いなら知られても困らないはず。レオは何かやましい事でもあるの?」
「全然っ、やましい事なんて何も無いから!」
「なら報告する」
「な、そんな……」
「レオ君、それよりうち、聞き捨てならないんやけど、浮気ってどういうことなん?」
「それは……」
(そんな目で睨まれて言えるわけないだろ!)
「レオはアリシアと付き合ってる。公にはしてないみたいだけど、みんな勘づいてる」
「え、そうなの?」
クラスメイトならまだしも、まさか国民にまで広まってたりしないよね?
「ふぅーん、アリシアってあの子やろ? 対抗戦の時に一緒にいた金髪の」
「そ、そうなんだよな……あっははは」
もはや乾いた笑いしか出てこないぞ……
「そっかそっか、確かに仲良うしてたもんなぁ? あの子めっちゃ可愛らしいし。レオ君もそんな事付き合えて嬉しいやろなぁ」
「えっと、サクラさん? もしかして怒ってたりします?」
凄い腕を抱く力が強いんですけど……痛い痛い!
「別に怒ってへんよぉ? うちが怒る理由なんてあらへんし」
「で、ですよねぇー」
「でも、なーんか虫の居所は悪い気ぃするなぁ」
「な、何で!?」
「ふふっ、サヤさん、これは修羅場という奴ですね!? 面白くなって来ましたよぉ」
「何でグレンさんは楽しそうなの?」
そうだそうだ! 当事者である俺のことも少しは考えろ!
「サクラさん、いい加減にしないとカエデさんに報告しますからね!」
「あら、何か文句でもあるんか? シロウ」
「イエ、ナンデモナイデス」
シロォォォウ! 何故今諦めた! もう少しいけただろ!
「すいませんレオさん、こうなったサクラさんは誰にも止められません。少しの間耐えてください」
「嘘、だろ……」
「ほな、行こか」
そうして、俺はサクラに引きずられながら、迷宮攻略を再開することになる。
はぁ、一体どうなる事やら……
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「組織を追放され、絶望した重力魔道士。この世界で生きる気力を無くしたので二度目の人生に希望を託し転生します! 〜人の世界を救った英雄のはずなのに組織から裏切られた俺は、二度目の人生を幸せに生きたい〜」
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