百十二話 再開②
「はぁはぁ、やっと追いついた。一人で先に行かないでくださいって言ったでしょ、サクラさん!」
息を切らし、先に現れたサクラに愚痴を零したのは同じくソルヴァレス学院の生徒、確か名前はシロウだったか?
「あんたが遅いだけやろ、シロウ。それにしても、何ヶ月ぶりやろなぁ、レオ君」
「え? あ、あなたは、アストレア学院の!」
「あぁ、覚えてたのか。君は確かシロウだったよな?」
「こちらこそ、覚えていてもらえたなんて、有難いです」
「俺の他に唯一の闇属性の使い手だったからね。よく覚えてるよ」
対抗戦に出場していた生徒達、中でも光魔法を使っていたシンと闇魔法を使っていたシロウはよく覚えている。
「あれ、君たちは確かソルヴァレスの……何はともあれ助けてくれてありがとう。あいつの相手は中々面倒だったんだ」
「あら、誰かと思えばセイクリッドの勇者さんやないの。ん? でもその制服はレオ君と同じアストレアの……」
「色々あって今は留学中でね、あそこにいるサヤと二人でアストレアに通ってるんだ」
「なるほど、そうでしたか。お二人の話は聞きましたよ、何でも学院を襲ったテロリストを倒して捕虜にしたとか」
「そう、だな……」
(俺に関しては、二度も同じ相手を取り逃してるんだけどね)
「……?」
「……っ! と、とりあえず、積もる話もあるとは思いますが今は下に降りましょう。レオさん達も先に進みますよね?」
「あ、あぁ」
どうやらシロウは言いづらいことがあると察してくれたらしい。サクラの方は頭を傾げている。
「俺達も下へ進むので、良ければ一緒に行動しませんか?」
「嗚呼、二人に手伝って貰えるなら心強いよ。三人もそれでいいか……って、あれ?」
(グレンさんどこ行ったんだ? 二人が来るまでは確かサヤちゃんと一緒にいたはずじゃ……)
「いやぁ、これはお見事。綺麗に燃やされてますね」
ババッ!
「っ!? あの人、いつの間に後ろに」
「気ぃつけやシロウ。あいつ、ただもんやない。気ぃ抜いたら死ぬで」
「って、ストップストップ! 何やってるんですかグレンさん!」
「は?」
「え?」
「すいません、あのスケルトンをどうやって倒したのかつい気になってしまったもので」
「だからって気配を消して移動しないでくださいよ」
(二人が完全に臨戦態勢に入っちゃってるだろ)
「えっと、レオ君の知り合いなん?」
「自己紹介が遅れましたね。どうも、グレンと言います。今は訳あってシン君の家庭教師をしながら、レオ君達のクラスの副担任もしています」
「そ、そうやったんか。てっきり新手の敵かと……でも何で先生何かが一緒に?」
「生徒の前に、シン君は私の弟子でもあるので。弟子から誘われたとあれば行くしかありませんよ」
(いや、確か誘ってはいないよな。監視がある以上着いてきただけで)
「勇者の師匠って、あんた一体何ものなん? ただの先生、じゃないやろ?」
サクラにそう聞かれたグレンさんは一度俺の方を見る。恐らく自身の出身について明かしていいのかと言う確認だろう。
(さすがに、この二人レベルになれば勘づくか)
俺は腕で丸を作り、グレンさんへ返事をする。
「では、許可も得たことですしお答えしましょう。私の出身は神竜国ドラグリア。そこの長である竜王の副官を務めている者です」
「神竜国って、まさかあの伝説の国の!?」
「おとぎ話の中の作り物かと思っとったけど、実在したとは驚きやなぁ」
「ちょっと待ってください、神竜国出身って言うことはグレンさんは人じゃないんですか?」
「はい、このとおり、竜人です」
グレンさんは、背中から二つの大きな翼を出し、目の前の二人に見せる。
「ほ、本当に……」
「隙のない動き、洗練された佇まい。そして、完璧に隠蔽された圧倒的な気、ただもんや無いと思っては居たけど、まさか竜人とは思わんかったわ……」
「貴方方も、中々の実力を持っているみたいですね。見事に練られた気だ。それに、一目で私の隠蔽に気づくとは」
「そりゃ気づくわ、底がしれない程の気を完璧に隠すなんて、違和感で逆に気持ち悪いで」
「ふふっ、褒め言葉として受け取っておきます。それより、続きは歩きながらするとして、今は先へ進みませんか?」
「そ、そうですね」
「そうやな、他にも気になる事はあるけど、今は先に進もか。レオ君にも聞きたいことは山ほどあるし」
そう言ってサクラは俺へと視線を向け、上唇を艶めかしく舐める。
(ははっ、これは色々と疲れそうだ……)
そうして、俺達四人にサクラとシロウも加わり、六人で迷宮探索を再開した。
□
「『地獄の炎』」
ゴォォォウ!
「これで終わりか。お前達、もういいぞ」
「ほ、本当にもう居ない? 大丈夫?」
そうして怯えながら、岩壁の奥で待機していたサリーが姿を見せる。何故こんな事になっているかと言えば、原因はさっきまでいた大量の蜘蛛だ。
「嗚呼、原型も残さず全て燃やした。一匹残らずな」
「あぁー、良かった。あんなのに囲まれるなんて思わなかったよ」
「今のは少し怖かったね。サリーは蜘蛛苦手だし」
「あれは虫が苦手なやつでも無理だろ、俺も長くは見てられなかったぜ」
正確に言うと蜘蛛は虫じゃないけどな。まぁ、魔物だし細かいことはどうでもいいだろう。
「この先も何があるか分からない。気を引き締めて行くぞ」
「おう」
「お願いだから、二度とこんな部屋はやだよ……」
(サリー、それは完全にフラグだぞ……)
とは思ったものの、さすがにそこまで上手くフラグが立つわけないか。
□
(前言撤回、さっきのサリーの発言はフラグとして完璧に成立していたらしい)
「もういやぁぁぁぁっ!」
「ダリス! サリーが壊れる前に早くさっきの岩壁を出せ!」
「了解!」
俺の指示に従い、ダリスは素早く岩壁を作る。
「サリー、早く隠れて!」
「アレク、後は頼んだぞ!」
「嗚呼」
(とは言ったものの、またこの数が相手か。正直、連戦で魔力が尽きかけている。さっきのような一度で全滅させられるほどの大技は打てないし、あれより威力が低いものでも何度も打てはしないぞ……)
「仕方ない、とりあえずは目の前の奴らからだ。『渦炎』!」
ボォォォゥ!
(これで3分の1程度は削ったか、半分は削ってやろうと思ったんだがな)
カサカサ、カサカサ
(チッ、数が多すぎる!)
カサ、カサカサ
「っ! しまった!」
魔法を放った直後、一瞬の隙を付かれ、左右から蜘蛛達が背後の岩壁へと迫る。俺に勝てないと判断したのか狙いを後ろのサリー達に変更したようだ。
(サリーは今戦える状態じゃない、アリシアも攻撃面では力不足だ。となると戦えるのはダリスだけ。あいつ一人でこの数は捌ききれない!)
蜘蛛たちは俺には目もくれず、ダリス達の元へ。助けに行こうにも、次から次へと増える大量の足に阻まれ、なかなか前に進めない。
万事休すかと思った、その時だった。
「『烈風刃・竜巻』」
「『氷刃乱舞・滅』!」
激しく渦を巻く風の刃と無数の小さな氷の刃が残る蜘蛛を次々と討伐していく。
「あらぁ? 誰かと思えば、アストレアの皆さんやんなぁ。こんな所で偶然やわぁ」
「挨拶は後にして、今はあの目障りな害虫を一秒でも早く駆除しましょう。あんなもの見たくもない……」
そこに現れたのは、柳色の着物を来た見覚えのある茶髪の少女と、それに付き従うように隣に立っていた空色の着物の少女――
「お前達は、ソルヴァレスの……っ!」
「なんや、覚えててくれたん? そら、嬉しいなぁ」
「カエデさん、私の話聞いてました?」
「全く、ユキノはせっかちやなぁ。久しぶりの再会なんやから、少しは楽しまんとあかんでぇ?」
カエデとユキノの二人だった。
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「組織を追放され、絶望した重力魔道士。この世界で生きる気力を無くしたので二度目の人生に希望を託し転生します! 〜人の世界を救った英雄のはずなのに組織から裏切られた俺は、二度目の人生を幸せに生きたい〜」
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