百五話 食堂での一時
三分の二辺りまではアレク視点です。
「で、これは一体どう言う状況だ?」
「俺に聞かれてもよく分かんねぇよ」
「うーん、普通じゃない状況って言うのははっきりしてるね……」
今は昼休み。昼食は七人で食堂に行こうと話していた俺達だったのだが、今は訳あってダリスとサリーの三人で食堂に着いたところだった。その訳というのも……
「サヤ……」
「どうしたのシン。寂しかったの? ふふっ、可愛い」
片や自身の膝の上に想い人を座らせ、後ろから抱きつき。
「アリシア」
「レ、レオ君? あ、あの、これはちょっと、恥ずかしいと言うか……」
片や隣へ座り、その肩をしっかりとホールドして抱きついている。そんな二人の馬鹿が原因である。
「お前ら、魔法まで使って光の速さで教室を出たと思えば……」
そう、俺たち三人は、授業が終わるなり光の速さで各々彼女と想い人をかっさらっていった二人を追って、この食堂まで三人で来たのだ。
「仕方ないだろ俺達は必死に我慢したんだ昼休みぐらい好きにさせてくれ。あ、でも相手の居ないアレクにはこの気持ちは分からないか」
(こいつ……っ、早口なのが余計に腹立つな)
「サヤ……」
「逆にシンはそれ以外に何か言え無いのか……」
「まぁまぁ、仕方ないよアレク君。二人とも学院内でこんなに離れてる時間が長かった事無かったんだから」
「と言ってもな……お前ら、それで普段学院から帰ったあとどうしてるんだ……」
ましてや、よくもこれで十年間の修行に耐えられたな。
「何故か学院外では大丈夫何だよな。アリシアと居れない空間の方が普通って言うか、休日とか学院外で一緒に居れる日は特別と言うか、逆に同じ空間に居れることが当たり前の学院で、こんなに長時間一緒に居れなかったことは無かったから、その反動かな」
「心構えと言うか、気持ちの問題ってことか……」
「そういう事」
理解は出来ないが納得はした。レオがそんな理由という事はシンも似たようなものだろう。
「俺の場合帰った後も基本的にサヤと一緒だから、寝る時以外でこんなに離れたことは無かったかな。それこそ、こないだの事件が数時間離れたのは初めてだったから」
「そ、そうか……」
(道理であの時のシンは対抗戦の時よりも荒れていた訳だ)
後にレオから聞いた話だが、医務室で神竜国へ行くことが決まった時、シンの暴れようは物凄かったらしい。恐らく長時間彼女と離れることが初めてな上に攫われたというシチュエーションが重なりそうなったんだろう。
「その割にはよくあの修行に耐えられたな、シン。俺なんて途中何度もアリシアに会いたくなったのに」
「あの時はサヤを助ける事しか頭に無かったからね。かなり頭にもきてたから他のことを考える事が少なくて済んだんだ」
「なるほどな」
(それも全て、愛の力という事か)
「とりあえず、俺達も何か頼んでこよう。混んでからじゃ面倒だからな」
「そうだな、俺はもう腹ぺこぺこだ」
「あ、私はお弁当持ってきたから四人と先に食べてるね」
「分かった。行くぞダリス」
「おう」
そうして俺はダリスと共に昼食を買いに向かった。
□
「で、もう一度聞くが、これはどういう状況だ?」
「さぁ、俺にはもう着いて行けねぇよ……」
俺とダリスが昼食の乗ったトレーを持ちながら五人の座る席に戻るとそこにはさっきまでよりも糖度の増した空間が広がっていた。
「はい、シン。あーん」
「あーん。うん、美味しい」
「ふふっ、食べてるシンも可愛いよ」
「そこはかっこいいって言ってよ」
いや、何だ、かっこいい咀嚼顔って。そんなのあるなら見せてみろ。
「アリシア、俺もあれやりたい」
「えぇ!? で、でも、周りに人も居ますし、恥ずかしいです……」
「アリシアは俺にあーんするの嫌?」
「そ、そうじゃないですけど、恥ずかしいですし。誰も居ない所でなら……」
「それなら、はい。空間魔法で周りから見えなくしたから、これなら大丈夫だよね?」
「そ、そんな事も出来るんですか? やっぱりレオ君は凄いですね……そ、それじゃあ、あーん」
いや、全部丸見えだが?
「アリシア、レオ君のいたずらに騙されちゃダメだよ。全部丸見えだから」
「えぇ!? も、もう、酷いですよぉ! そんな事してると嫌いになっちゃいますからね!」
「ごめんごめん、恥ずかしがるアリシアも可愛くてつい。こんど二人きりの時にしてくれる?」
「そ、それなら、はい……」
俺は一体何を見せられてるんだ?
「なぁ、サリー。こいつらをどうにかしてくれ。俺はもう砂糖が口から溢れだしそうだ」
「ごめん、私にもこれはもうどうにもできないかな……」
「はぁ、そうか……」
(まぁ、こればっかりはどうしようもないな)
これ以上考えてもどうにもならないと思い、アレクは冷めない内に頼んだグラタンを食べ始めるのだった。
□
「そういえば、さっきの話の中で気になったんだけど、シン君とサヤちゃんは同じ家に住んでるの?」
そう言えば、帰った後も基本的に寝る時以外は一緒に居るって言ってたな。
「そうだね、今までは隣の家どうしだったんだけどこっちの国に来てからは同じ屋敷に住んでるよ。さすがに部屋は別だけだ」
「いや、それは当たり前だろ。それより同じ家に住んでる事自体驚いたわ」
「確か実家はお家が隣同士だったんですよね。学院には実家から通ってたんですか?」
「うん。と言っても、前に住んでた村にある実家じゃ遠かったから家族と一緒に王都の近くに引っ越したんだけどね」
「その家もあっちの学院長が家族と住めるようにってわざわざ用意してくれたんだ」
シンが言うにはシンとサヤちゃんは村に住んでいた時にたまたま村の宿に泊まりに来たセイクリッドの学院長に学院の入試試験を受けないか進められ受けた結果首席と次席として合格してしまったらしい。
その際に、自分から試験を受けるよう誘っておいて何もなしじゃ悪いからと村から学院まで半日以上かかるということもあり、学院長が王都から最も近い町の郊外にある空き家を買い取り家族と一緒に住まわせてくれていたらしい。
「それじゃあ、本当に一日中一緒に居るんだな」
「そうだね、前の家に居た時はたまにリビングで寝ちゃったりして、そういう時は寝てる間も一緒にいたね」
「うん」
「へぇ、て言うことは、家でも二人はこんな感じなの?」
サリーがそう質問をするが、当事者である二人が当然それを答えられる訳もなく、誰も答えられないと思ったその時突然誰かの声がその質問に答えた。
「その質問には私が答えましょう」
この感じ、朝も似たような事があったような……
「はぁ、もう驚きませんよ。グレンさん」
「あら、それは残念ですね。それより、先生と呼ばなくてもいいんですか? レオ君」
「大丈夫でしょ、ここには俺達しかいないし。それで、何でグレンさんが答えられるんですか」
「それは簡単ですよ。二人の保護者役として私が一緒に住んでいるので」
「あーなるほど。……ッテェェ!?」
「あれ、俺言ってなかったっけ?」
いや、言われてないんですが?
「当たり前でしょう。子供二人をひとつ屋根の下で住まわせるわけ無いじゃないですか」
「そ、それは確かに……」
いや、まさか二人だけで住んでるとは思わなかったけど、まさかグレンさんが一緒に住んでいたとは。普通に親御さんと住んでるのかと思ってたな。
「まぁ、そんな同居人の私から言わせていただくと、二人は普段家でもこんな感じですよ。まだこちらに来て数日しか経っていませんが、もはや既に慣れてしまいましたから」
「そ、そんなにですか……」
その話をしている間も、二人はずっとお互いに昼食を食べさせあっていた。そんな二人を顔を赤くしながら見つめるアリシアと羨ましそうに眺めるサリー。
ダリスとアレクに関しては必死に聞かないようにお昼ご飯を食べることに集中しているようだ。
どうやら、その先の話については聞かない方が良さそうだ。そうして、俺もダリスとアレク同様に、残された昼食を食べ進めた。
尚もアリシアとの距離は変えずに。
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「組織を追放され、絶望した重力魔道士。この世界で生きる気力を無くしたので二度目の人生に希望を託し転生します! 〜人の世界を救った英雄のはずなのに組織から裏切られた俺は、二度目の人生を幸せに生きたい〜」
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