百四話 それぞれの恋愛事情
「はぁ、終わった。何もやる気が起きない……」
「これからの学院生活、どうやって過ごせばいいんだ……」
翌日、クラス内の掲示板に貼られた席替えの結果を見た俺は、席に着いた後直ぐにやる気が削がれ、机へと突っ伏していた。更に、俺が突っ伏した数秒後には隣の席から後ろ向きな言葉も聞こえてきて最悪の気分だ。
「お前らなぁ、席替えぐらいでこの世の終わりみたいな顔してどうするんだ」
(隣からアレクの声が聞こえる。へぇ、隣はアレクだったのか。……アレクかぁ)
「はぁー」
「そのため息もやめろ。こっちの気分まで悪くなりそうだ」
「いや、アレクが隣かぁと思っただけだよ」
「何だ、俺が隣だと都合でも悪いのか」
「別に、そういう訳じゃ……はぁ、アリシア。どうして遠くに……」
「そんな言うほど遠くも無いだろうが。たった二つ前の列だぞ」
「今までと比べたら遥か遠くだよ……」
アリシアと授業が受けられないなんて。あれ、そもそもどうやって授業を受ければいいんだっけ……あははー、もう考えるのやーめた。
「俺は考えるのを辞めた。これからは大木として生きていくんだ」
「はぁ、まったく、二人してそんな事でどうするんだ」
「……二人?」
そう言えば、さっきもお前らって言ってたような……
「左を見てみろ、お前と同じような奴がいる」
「は?」
その真意が分からず、俺が机に突っ伏していた顔を横へ向けると、そこには見慣れた髪に見慣れた制服、だがその見た目は新鮮という違和感ありまくりのシンが俺同様に机へ伏せていた。
どうやらさっきから聞こえてくる後ろ向きな言葉は全てシンから発せられていたものらしい。
「新生活開始早々サヤと離れるなんて、今後どうすれば……」
「シン……分かるぞ、分かるぞその気持ち!」
「レオ、やっぱり君なら分かってくれると思っていたよ!」
「お前ら、変な所で同調するな」
「ふっ、相手の居ないアレクにこの気持ちは分からねぇよ」
「想い人が居ないって言うのも気が楽でいいね」
「よし、分かった戦争だ。お前ら表出ろ、相手してやる」
「おぉ、いいぜやってやろうじゃねぇか。なぁ、シン!」
「いくら君でも、十年間修行した俺達の相手じゃないってところ見せてあげるよ」
ま、修行前でも俺とアレクの戦績は俺が勝ち越してたけどね!
と、俺達の間で今にも一戦勃発しそうな空気でいると突然横から声がかけられる。
「お前ら、俺よりはいいだろ……」
「うおっ、ダリスか。いきなり驚かすなよ」
「お、お前、何があった? かなり暗いぞ」
「お前らはまだいいよ、仲のいい奴らで固まってるから。俺なんてあそこだぞ……」
そう言ってダリスが指刺したのは前列の1番窓際。周囲はダリスがあまり話したことの無い人で囲まれている完全アウェーの席だ。
「あ、あれは……」
「なんと言えばいいか……とりあえず、どんまい」
そう言って励ましてやるとダリスは余計に方を落としながら自分の席へと去っていった。何故だかその後ろ姿はいつもより小さく見える。それでも俺よりでかいけどね。
(大丈夫だダリス。きっとお前にもいい事あるって!)
「そうだ、話は変わるけど、アレク君は好きな人とかいないのかい?」
「そう言えば、アレクのそういう話はあんまり聞かないな。公爵家の息子なら婚約者ぐらいいるんじゃないか?」
「そうだな、確かに縁談を持ちかけられることは今までにも何度かあったが、どの相手も受け入れてはいないな」
「へぇ、またなんで? 相手も貴族ならそれなりに良い子は多いだろ」
「まぁな。だが、貴族同士が付き合うと言うことはそれこそ行く行くは結婚をするという事だ。平民のように取っかえ引っ変え出来るというわけでも無いからな」
なるほど、貴族ともなるとそう言う事になってくるのか。
「そうなれば途中で別れるという事ができない限り必然と相手とは長い付き合いになる。それなら見た目だけではなく少しでも相手の性格も見て選びたいだろう。それに、自身の生涯のパートナーを顔で選ぶような奴も嫌だからな」
「て言うことは、今までの相手はアレク君の顔だけを見て縁談を申し込んできたってことか」
「そう言う事だ、だから今のところそう言った浮ついた話は無いな」
ふーん、そう言う事だったのか。
「なら、知り合いとかはどうなんだよ。顔見知りだし相手の事もよく知ってるなら可能性はあるんじゃないか?」
「そうだな、確かに知り合いの方が判断するにはいいが、そんな相手そう都合良くいるか?」
「うーん……」
そうして俺達三人は候補を絞り出すようにしばらく考え込む。と言っても、シンはこの学院に来たばかりでまだ俺達以外との交友関係も出来上がっていないためそうそうに諦めていた。そこで、俺の頭に一人の女子が思い浮かぶ。
「サリーは? 同じ貴族だし、クラスメイトだし、そこそこ付き合いも長いだろ」
まぁ、サリー側に婚約者がいたら無理だけど、今のところそう言う話は聞いた事がない。
「サリーか、盲点だったな……」
「確かに、サリーちゃんならいいんじゃないかな。サヤも優しいって言ってたし」
「……」
いい案が出たと思い、俺とシンが勝手に盛り上がっていると当のアレクは黙り込んでしまう。
「どうした、アレク?」
「あ、あぁ。いや、何でもない。それよりこの話はもうやめにしよう」
「? 随分と急だね」
「まぁいいだろう。そんな事より、そっちはどうなんだシン」
「どうなんだって?」
「まだ付き合ってないんだろう」
ん、ちょっと待て、今なんて言った?
「……っ、どこからそれを?」
「俺の情報網を舐めるなよ。それと、女子の口には蓋は出来ないと知っておけ」
「ちょ、ちょっと待て、え? お前達ってまだ付き合ってなかったの? あんなに日頃からイチャイチャしてるのに?」
「レオ、それはお前も人のこと言えないぞ」
「今は俺の事なんてどうでもいいんだよ! それに、俺とアリシアは付き合ってるし」
「……知ってるかい、二人とも。想いって言うのは言葉にしなくても通じ合えるものなんだよ」
「いや、それは口にしなきゃダメだろ」
「相手は待ってるかもしれないぞ」
「うっ……でも……」
そもそも、結果なんて分かりきっているのに何でいつまでも言わないんだ?
「でもじゃない。この際だから今行ってこいよ、ほら、今直ぐ」
「い、いや、それはちょっと……ほら、授業もそろそろ始まるし!」
「勇者が告白程度で勇気も出せなくてどうすんだよ。ほらほら、サヤちゃんも待ってるぞ。最悪授業なんて気にするな」
「いや、それは気にした方がいいんじゃ……」
「いえいえ、そういう事なら気にしなくて大丈夫ですよ。メルト先生は私が説得しておくので」
ガタガタガタッ!
俺達が話している所へ突然別の第三者の声が割り込まれた。咄嗟に反射で席を立った俺達はその声の主を見て、誰が割り込んできたのかに気づく。
「なんだ、グレンさ……先生か」
「先生、気配を消して近づいてこないでください」
「これはこれは、すいませんでした。何やら面白そうな話をしていたので。それで、行かないんですか、シン君」
「いや、行くも何も、もう授業が……」
「だから言ってるだろ」
「そうですよ、最悪授業は何とかな――」
「る訳ないでしょうが。何言ってんですかあんた」
そう言ったのはグレンさんの背後からやってきたメルト先生だ。
「おや、メルト先生。随分と早かったですね」
「当たり前でしょ、もう授業始まってんだから」
どうやら俺達が話し込んでいる間に授業は始まっていたようだ。しれっとアレクは席に着き授業の準備をしている。
「ほら、お前達もさっさと準備しろ。グレン先生も、しっかりお願いしますよ」
「えぇ、もちろん。仕事はきっちりこなしますよ」
そんな事もありつつ、俺達の二学期最初の授業が始まった。
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「組織を追放され、絶望した重力魔道士。この世界で生きる気力を無くしたので二度目の人生に希望を託し転生します! 〜人の世界を救った英雄のはずなのに組織から裏切られた俺は、二度目の人生を幸せに生きたい〜」
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