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1、発覚

初投稿です

スローペースで書いていきたいと思います

よろしくお願い致します。


「ただいまー…」

今日もガチャリと返事の帰ってこない静かな空気が流れる部屋に帰ってきた。スーパーで買ってきた安売りシールの貼られたお惣菜を狭い部屋のテーブルに雑に置いて、ベッドに飛び込み1人大きなため息をついた。



「はぁー………どうしてこうなるんだろ」



自己紹介をすると、私は大学生である。田舎の実家から大学のある都会に移り住んで1人暮らしをしている。入学して今日で数年が経ち、普通なら学校にも慣れてきて友達がいてたまにサークル活動したりしてそれなりに楽しい学校生活なのだろうが、相反して私の気分は憂鬱である。というか20数年生きてきた人生で気分爽快で毎日が幸せ!ハッピー!!なんてことがあっただろうかと振り返る。


思うに私の今までの人生は、自己嫌悪に満ちていた。


親がそれなりに裕福で所謂お嬢様育ちをした事が逆にアダになり、テレビも満足に見たことが無く常識外れな面が多かった為、小学校では変人扱いされ、会話に入れず昼休みはいつも1人で本を読んで過ごした。

中学校・高校では、小学校での教訓を活かそうと自分を押し込めて無理矢理周りのテンションに合わせたりした結果個性を見失い、そんな状態で本当の親友を作れるはずもなく。高校デビューして親しい友達を今度こそ、と意気込んだら自分の物言いの加減が分からず相手を傷つけてしまい、またもや孤立してしまった。そうして思春期を他人との接し方がわからないまま過ごし、成人を迎えてしまったのである。


大学は…と自分自身に期待したが、もともと理系が苦手なのに、医療職家系の親の勧めで勉強させられギリギリ合格した薬学部の勉強量に苦しむ事になり、できる周りに圧倒され萎縮してしまい、自己嫌悪をこじらせて周りとうまくしゃべれないでいるとすっかり存在感のない地味な存在になってしまっていた。

そして、今日、

彼氏から振られてしまった。

しかも大勢の前で。


他に守りたいと思える女の子ができてから、ごめん!別れてほしい。とか言ってたがその後その守りたい女の子とやらに陰で「1人で可哀想だからお情けで付き合ってやってたけど、一緒にいて正直つまらなかったんだよね」とか言ってたの聞いたぞ、あのクソ屑男。私の目のつかない何処か遠くで死に晒してほしい。それに私は確かに孤独だが1人は別に苦ではないし、誰もお前の助けなんか必要で付き合ったわけじゃなかったからな。

イライラして枕を何度もベッドに打ち付ける。


そしてふと思った。


(なんか、この状況って悪役令嬢が婚約者に理由つけて他に恋人がいるからって断罪されるのに似てるなー)


今までろくに遊ぶような友達がいなかったので、娯楽は何に走ったかというと専ら本を読むことが好きな本の虫である。古典文学やら現代小説やら幅広く読むが、ライトノベルなども含まれる。流行りの異世界転生ものの中でも悪役令嬢ものは最近流行ってきたように思う。

と。まあ私は悪事を働いた覚えはないので、悪役令嬢じゃないのに周りから勘違いされて悪役令嬢になってしまう理不尽なやつだろう。よくある悪役令嬢ものの展開なら、悪役令嬢が婚約者をざまぁさせたり権力を得て見返すものだろうか。


「現実はそうもいかないよなー」


令嬢という境遇は似ているが。

しかし今までの人生を振り返るとどう足掻いても断罪されてしまう運命の悪役令嬢っぽいな、と自虐的になるのも無理はない気がする。


いかんいかん、悪いことばかり考えては人生好転しないんだ。余計な事は忘れて、もう眠ってしまおう。とりあえず眠って、また明日も頑張って生きていかなきゃいけないんだからー。



ーーーーー





「ーーー、さま」



「ーーティアさま、」




「ミリティアさまっ!!!」




うわぁ!誰かが耳元で大きな声を出していたのでびっくりして飛び起きる。

声の主に目をやると、明らかに日本人じゃないメイド服の女の人がこちらを見ていた。

誰を呼んでた?ミリティア??でも視線は私に向いたままだし、周りを見渡すが何故かそこはロココ調の豪奢な部屋で、私とメイド服の女性以外に人は見当たらなかった。私はミリティアなんて名前じゃない。

一体誰を呼んでるの?



「ミリティア様!そろそろ起きてくださいませ!学園に遅れてしまいます」



学園??私がミリティア???

訳が分からないまま促されるまま鏡面台に座らされる。そこでヒッと声を上げた。


鏡に写っていたのは、肩下まである綺麗な黒いストレートヘアー、白過ぎず健康的な肌色だが透き通った肌、宝石の様に煌めくガーネットルビーの瞳、頬は薔薇色、圧倒的な美少女だった。


「誰?」


私が発した言葉を目の前の美少女も発する。

もしかして私が、この美少女???!?

途端、膨大な記憶が流れ込んできた。


黒髪の美しい少女が記憶の中で動いている。

見るにこの少女もあまり恵まれた人生を送ってはいないようだ。公爵令嬢として生まれるも人見知りで友達ができず、近づいてくるのは少女の家の権力を利用しようとする下心のある者だけ。そんな環境下で人間不信に陥って性格もきつくなってしまい、友達も恋人も出来ない孤独な日々。

そして一番新しい昨日の記憶は、大勢の生徒がいる学園の庭。婚約者と見られる男子生徒の後ろには涙を堪えた女子生徒が見つめている。


「ルクスグランディア王国第二王子、オルエス・リ・ルクスグランディアは、ここにミリティア・レ・フェアグレイブとの婚約を解消させて頂く!そして貴殿の彼女にした行いは卒業後法廷で問いたださせて頂くとする!」



断罪されてる令嬢、だと?!



そして、すべてを知った私は一つの結論に至る。ミリティアと自分の似た境遇。そして同じ時間に恋人から振られる(婚約破棄される)この状況。



もしかして私、




「やっぱり私、悪役令嬢だったのー?!」




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