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勇者です。なぜかクエスト条件が変わっていたのでティンクルベアにリベンジします

今日は所用で遅れました

明日は遅れるかもですが、当面毎朝投稿は続けます



 リザのパーティ加入によって、初めてクエストに成功した俺たちはその後もいろんなクエストに挑戦していた。

 薬草採取クエストからちょっと手ごわそうなモンスター討伐までリザのおかげでサクサクと進めることができた。宿屋の仕事もあって毎回、参加というワケにはいかないけど着々と冒険者として成長してきた。


 とくにロスする回数が少なくなったのはマジでありがたい。

 ロスしてしまうと強制的に街の大聖堂からなのでその分、収入が減るのだ。

 

 と言っても、大幅に収入が増えた訳ではない。

 毎日の食事に宿代、借金の返済だけでもギリギリだ。


 もっと収入の高いクエストやモンスター狩をしてみてもいいのだけど、なかなか挑戦する機会に恵まれない。

 今日を生きるので精いっぱいなのだ。


 はじまりの街へ着いてからおよそ1か月。

 そろそろ初心者から脱却したいところだ。


「ハヤト! コレ、コレ見てよ!」

「どうした。また、変なクエストでも引っ張ってきたのか?」


 ラピスはとにかく変なクエストを探すのが大好きだ。

 よほど、スライムと戦いたくないのだろう。


 この街の付近だとモンスターはスライムばかりなので必然的にスライム類の討伐クエストが多い。

 ぬめぬめスライムはリザの要望もあって何度か討伐しに行っているがそれ以外でスライム系のクエストを受けることはない。


「違うわよ。リザが入る前にやってたクエストの条件が更新されているのよ」

「クエスト条件が更新?」


 条件が更新されることはままあるらしい。

 クエストを発行しても誰もやってくれないときや依頼主の都合によってありうるらしい。


「そうなのよ。ほら、ティンクルベアっていうモンスターの討伐クエストってあったでしょ」


 ああ、あのトラウマモンスターか。

 聞く話によるとティンクルベアはこの辺りでも危険なモンスターに数えられているらしく、他の冒険者も敬遠している。

 あのダモクたちですら生息地域に近寄らないらしい。


 リザがパーティに加入してからクエストの条件を満たせなくなったため、俺たちも挑戦しなくなったのだ。


「どれどれ」


 ラピスに連れられるままティンクルベアのクエストを確認しにいく。

 文字をラピスやリザ、酒場の冒険者たちから教えてもらったおかげで最近はなんなくクエスト内容を読めるようになった。

 『農民』の俺でもやればできるんだぜ。


「えーと、『ただし、ジョブが『農民』『魔法使い』『狩人』の三人組パーティに限る』」


 ん? どゆこと。

 もしかして、もしかしなくとも俺たち指名されている!?


「ね、すごいでしょ! 私たちついに認められたのよ」

「マジかよ!! ついに俺たちにも指名クエストが来たのか!」


 しかも、クエスト報酬が上がってる!

 1日で稼ぐ金額の10倍!

 これはもうやるしかない。


「すみません。ラピスさん、ハヤトさん。遅れました」

「リザいいところに来たな。今日から挑戦するクエストが決まったぜ」

「え? 今日から?」


 とハテナマークを浮かべるリザ。

 無理もない。

 これまでは一日で終わる簡単なクエストばかりだったからピンと来ていないのだろう。


「ああ、これだ」

「ティンクルベア討伐……ティンクルベアですか!?」


 さすが地元民。ティンクルベアをご存じとは。

 口からレーザー光線を吐く超危険なモンスターだから当たり前といったら当たり前だけど。


「あの……私たちの実力で勝てるでしょうか」

「問題ないさ。リザがいればなんとかできる」


 ここ最近、3人での連携プレイもうまくできるようになった。

 そもそもティンクルベアが倒せない一番の理由が接近戦したら即ロス、ラピスの魔法が通じないってところだから『狩人』のリザさえいれば百万力だ。


「えと、ですが……」

「もうリザったら、ロスしたことないからって臆病風に吹かれたらダメよ! それでも勇者パーティの一員なの!?」

「あはは、やっぱり私も勇者パーティの一員なんですね」


 肩を落としつつため息まじりに言葉を漏らすリザ。

 リザにはラピスがあの大精霊ラピスで俺がその勇者であるという話はしてある。


「そうよ、だから誇りを持ちなさい」

「は、はい! 頑張ります!」


 というワケで3人でティンクルベアに挑戦することとなった。

 もう初心者とは思われたくないのでまずは事前情報を調べるところから始めた。


 情報は冒険者において最も重要だ。

 駆け出しの冒険者が集うこんなはじまりの街であっても薬草がたくさん採れるポイントやモンスターの生息域などが高値で取引されている。


 情報を集めるならギルドか酒場と相場が決まっているのだが、この街ではギルドへ行っても初心者ばかりで大した情報は得られない。

 そのため、必然的に酒場での情報収集が主体となる。


 酒場にはダモクのような熟練のクエスト冒険者や元冒険者が多く集うため、情報集めとしては最適だ。


 俺たちはいつも使っている酒場へ足を踏み入れる。

 昼間だというのに繁盛している。これも店主の人柄のおかげなのか。


「おっラピスちゃんにリザちゃん。今日もカワイイね」

「おいおい、おっちゃん。俺には挨拶なしかよ」

「はんっ昼間っから酒場に来るような貧乏冒険者にする挨拶なんてねぇ。たまには高いモン頼みやがれ」

「悪かったな。貧乏冒険者で。じゃあ、美味い牛乳を頼む。3人分な」

「あいよ。見ての通りリーシャはいないけど何の用だ」

「目的はリーシャじゃなくて情報収集」

「ほぉ、もういっぱしの冒険者気取りか。一日目でカモられて借金背負った田舎モンだったお前が懐かしいぜ」


 ホント、この酒場には一日目からお世話になっているな……つか、『ドンペリ』頼んだからめっちゃ店に貢献した気がするのは気のせいか?


「そうかそうか、じゃあ。頑張れよ『農民』冒険者」

「サンキュー」


 俺の冒険者ジョブが『農民』であることはもうすでにこの街の冒険者なら誰でも知っているほどだ。

 まったく、狭い世界ってのは恐ろしいな。


「よし、じゃあ。手分けして情報収集だ」

「はいはい、わかったわよ」

「が、頑張ります!」


 3人でまとまって情報収集したって意味がないので手分けすることにした。


 ……。


 数十分後。

 情報収集をひとまず終え、各自集めた情報を報告することにした。


「お前ら、情報は集まったか? 俺はなんとティンクルベアの大好物を教えてもらったぜ!」

「へぇー。私は弱点属性と普段の習性。あと、実際に討伐したことのある冒険者からどの辺りが剣が通りやすいか聞いたわ」

「あ、私は雨の日の行動や視力とか視界がどの程度あるのか聞きました」

「WHY? なんでお前らそんな簡単に情報集められんの!?」


 なんだよ、俺が10人くらいあたってようやく手に入れた情報がティンクルベアの大好物だってのになんでお前らはそんなに聞けてるんだ。


「そりゃあ、知性と魅力の差よ。みんな私の大精霊としての魅力を感じてるのよ! リザはそうね……私には及ばないけど、カワイイわ」

「あ、ありがとうございます」

「なっとくいかねー」


 男女差別反対!

 っといってもこんな時間から酒場にいる冒険者なんておっさんばっかだ。

 俺みたいな貧乏冒険者なんて……チクショウ。


「あ、いじけたわ。ネガティブスイッチはいちゃったかしら」


 まぁ、それはともかく。情報をいろいろ聞けたのはでかい。

 みんなの情報を整理して対策を練ってそれから挑戦だ。


「?」

「どうしたラピス?」

「気にしないで、なにか妙な気配がしただけだわ」

「妙な気配ですか? いまさっきマリーさんがいたような気がしましたけど」

「マリー?」

「はい、とっても嬉しそうな顔をしてました」


 マリーさんは大聖堂の聖女だ。

 日々冒険者を復活する仕事に励んでいるとても優しい人だ。

 珍しいこともあるもんだ。


「まぁ、気にせずティンクルベア対策しようぜ」

「そうね!」

「はい!」


 ラピスもリザもやる気出してるみたいだし、これなら案外すぐに攻略できるかも。

 ティンクルベアめ、リベンジされるのを待ってろよ。

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