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私が召喚されたわけ

 大昔に地球という生命豊かな星があった。


 人々は発展して恒星間ワープ走行という技術を手に入れることも出来たが、その頃には皮肉にも星は寿命を迎えていた。

 そこで地球人は広い広い銀河へ新天地を求めて漕ぎ出でて行ったのだが、しかし、人間の住める星は少ない上に、地球から脱出した全員を賄える星も無い。


 新たな新天地を求めるには人間の寿命は短く、船に乗せられる資源にも限りがある。


 そこで考え出されたのが、人の魂を呼び出して再構築するという技術だった。


 人間の記憶を司る脳の一部だけを取り出して船に乗せ、新世界に船が辿り着けば、着いた先で船が人体を再構築し、クローンに記憶を植え付ける。


「途中まで良かったのだけどねぇ、人為的干渉によってエラーが起きちゃったんだよね。」


 私の前にテーブルを挟んで座っている男は、わざとらしい仕草で肩を竦めた。



 私はサマエルに誘拐されて大き目の戦艦に連れ込まれたが、その後は狭い尋問室のような部屋でサマエルと向かい合わせに椅子に座らせられているという状態が続いている。

 彼は私には避けられない運命が待っているのだから、これから何が起きるのか知っておくべきだと話してくれているのだ。


「えらー?」


「そう。人は失われた力を取り戻し、そして、人で無いものをも生み出した。」


 私はエセルの狼の姿を思い浮かべた。


「人で無いものって君の事。ノーパン男は失われた力の方のただの召喚士。大昔の地球には、獣を召喚するだけでなく、獣にも変化できるドルイドって奴がいたんだってさ。というか、あれがあの人。俺は一応繁殖行為で増えた方の人間。ええと、再生された人間からね、彼のように失われた魔法とやらが使える人間が多く出てね、それならば、機械ではなく、彼らに死んだ人間を召喚させてはどうだろうかとお偉方は考えたわけ。」


「あなた方は獣の管理ではなく、呼び出された人達の管理という移民管理の方なのかしら。」


 サマエルは大きく溜息を吐き出すと、疲れた様に背中を椅子の背もたれ沈めさせた。


「だったらもっと良いのだけどね。召喚術で呼び出された人間が人たり得なかったという事実でね、俺達はそんな人々を捕獲して、登録して、人として生きられるならばその専用の施設で、無理であれば殺処分、という汚れ仕事なんだよ。」


「――そう。私は選別施設に送られるのね。」


「もっと悪い。」


「もっと?」


「うん。君はシルフィード号の鍵穴に入れられる。」


「え?」


「シルフィード号は二十年前に見つかったばかりの衛星型移民船でね、そこには人の記憶だけでなく、様々な地球の動植物の情報も詰まっている。俺達はそれが欲しい。けれど、その船の解放は乗船者だけなんだよ。長い航海のために遺伝子操作で人体を改造した人々。けれど、長い航海で船の中で熟成したスープになってしまった人々だ。」


「私が、それ?いいわよ、皆の為になるのなら鍵を開けるわよ。でも、どうしてそれが最悪なのかしら?」


 サマエルは初めてといえるほどのほほ笑みを私に見せ、その顔は百歳を過ぎた老人の様だと思った所で、彼は君もスープになるから、といった。


「まだ誰も鍵を開けられた事は無い。みーんな鍵穴に放り込まれた時点で溶けてしまうんだ。言ったでしょう。召喚で呼び出された人々は人たりえないと。ただでさえ遺伝子操作した人々の魂なんだ。鍵穴に拒否されてそこで終了。けれど君は女王だ。何とかなるかもしれない。」


「どうして私が女王だって?」


「背中の羽が六枚ある。」


 うげげ。


 女王様と呼ばれてもぜんぜん嬉しくないシチェーションだったのは、この私くらいじゃないだろうか。

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