逃亡
バサン。
私は雪の中に投げ込まれたようだ。
投げ込んだのはエセルではなく、サマエルの方だ。
彼は死ぬぞ!と叫ぶと私をエセルから剥がし、それだけでなく服まで脱がし、あとは乱暴に外の雪景色へぽーんだ。
確かに熱くて死にそうだったが、私の体は冷たい雪に吃驚して心臓はドキドキと鼓動して、心臓こそ止まりそうだった。
飛び出して来たエセルに雪から掘り出されて抱きしめられたが、私は感謝どころかエセルの腕の中でサマエルに対して叫んでいた。
「殺す気なの!」
「感謝してよ。そして、連絡だね。」
「ローグ。」
「がっかりですよ。支局長、いえ、もう完全にただの召喚士エセルバート・グレインですね。あなたは虐殺を止められる女王を召喚しておいて、管理局から隠そうとしているなんて。」
「ローグ。」
「あなたが見逃したジョセフィンとあのシルフィードは、結局はどうなったのか教えましょうか。ジョセフィンはシルフィードに喰われましたよ!あなたも食われたいのですか!」
エセルは抱きしめている私をチラリと見て、うむ、と言った気もするが、サマエルに振り返ると、大丈夫、と答えた。
「大丈夫って。」
「俺はミミだったら食われてもいいかな。」
「ちがう!あんた!違うって。普通にシルフィードが肉食の異星人だったって話です!パンツと一緒に脳みそも捨てて来たんですか!」
「もう。酷いなぁ。はぁ。」
彼は私を抱き上げるとそのままロッジに歩いていき、ぴしゃんとローグが家に入る前に窓を閉め、そして、ロッジを浮き上がらせた。
「きゃあ!」
「大丈夫。ちょっと宇宙空間に行くだけだから。」
全然大丈夫じゃないじゃない!