私は一体何なのだ!
トイレの使い方を知っていたことと、私が知っているトイレで良かったと思いながら、ユニット式のバスルームの洗面台で手を洗っていたが、私は洗面台の鏡を見ないようにしていた。
だって、これこそ自分じゃないのだと頭の中でアラームが鳴るのだもの。
何、この美少女。
真っ直ぐなさらさらとしたピンクっぽい金髪に、猫みたいな透明感のある水色の瞳が輝いていたのだ。
「もう何なのよ。」
そして、丸出しで全身脱毛したような体は無駄な脂肪が、腹とか腹とか腹とか一つもなく、綺麗としか言いようがない。
「そう、美少女でモデルみたいな綺麗な体。喜ぼう。そう、喜んだ方がいい。美少女でどうするなんてそんな事を悩むより、体を隠せるタオルかパンツ一枚でも見つける方が得策だ。」
私は取りあえずの次の行動が決まった事で少々落ち着き、長い髪を手で梳くくらいの無意識の行動まで起こせるぐらいになっていた。
「うわ、背中になんかある。」
背中を覆っていた髪がさらりと動いた事で、私の背中の様子がチラリと鏡に映しこまれたのである。
鏡に映った背中には、大きな乾いた皮膚が重なったような瘤がある。
「なんだ。これは!」
脅えつつ、体をひねりながら鏡に映したそれは、グロテスク極まりなかった。
まるでエイリアンが皮膚の中に入り込んだかのようにもぞもぞと動いているではないか。
「え、いや、ひいっ。」
バタン。
ドアが開き、先程迄私の横にいた男が正面姿になって私に自分のシャツらしきものを捧げ持っていた。彼は私から顔を背けていたが、私としてはお前こそ服を着て下半身のそれを隠せという気持ちである。
男性の裏側は素敵だと思う時もあるが、正面の下半身は見たくないな、ハハ。
「あの、ありがとう。」
私が彼からシャツを受け取ると、彼は私を見返すどころか返事も返さずにドアを閉めた。
ふぅ、本当にどうしよう。
取りあえずシャツを着ようと振り向いたのが悪かった。
私の背中には透明な虫のような羽が生えていたのである。
「ぎゃあああああああああ。」
「どうした!」
「きゃあああああああ。」
男の正面顔は髪色に似合うミント色の眼を持った、彫りの深い俳優のような素敵なものだったが、いい加減にパンツを履けよ!