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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

現実世界に戻りたい人が戻れない話

作者: テクテク

イケメンの設定は皆さんの考えるこれだったら現代に帰りたがるだろう設定でどうぞ。

『ふぐ、うぅう……うぐぅ…』


わた…俺の目の前で、以前あったことのあるオッサン(神)がめちゃくちゃ大号泣していた。


ーなんだこの状況…



オッサン(神)は四角い透明なパネルを見ているので恐らくそこに流れているだろう何かを見ているのはわかる。

ただ、このオッサン(神)が泣いてるということ自体が分からない。神様って泣けたんだな…。


『ううぅ……ユーミスちゃんが、ユーミスちゃんがぁ…』


そして先程から神が俺の、いや『私』の名前を呟いているのがさらにわからない。

『ユーミス』とは、俺がついさっきまで名乗っていた名前なのだ。


何故男である俺が女のような名前を使っていたかは少々複雑な話だ。

目の前にいる別世界の神が自分の世界に知的生命体として寿命の長い魔族と繁殖力の高い人族を作り、それを管理していた。

しかしある時人族が圧倒的な数で持って魔族を蹂躙し始めたことを受け魔族を大幅に強化すると、バランスは完璧に崩れ今度は人類が徐々に押され始めてしまう。それで今度は人類に英雄的な才能を持つものが偶に生まれるようにしたのだそうだ。



しかし、いつまで経っても才能を持つものが台頭してくることは無かった。結果としてどんどんと人族の生活圏は後退していく。


《これはやばい》

神はそう思ったそうだ。

なので知り合いの神の世界でちょうど死の境をうろちょろしてた俺をレンタルして投入とあいなった。


俺は設計立案、指示管理をしていたエリート会社員であり、充実した毎日をおくっていた。女性関係でもenjoyしまくってたので生き返ることを条件に出したらキッチリ仕事をこなすだろうと思ったのが選ばれた理由だそうだ。

そして正解である。



俺は説明をきちんと受けてから契約書に署名をした。

契約内容はおおよそ以下の通りだ。


・英雄が男なので性別は女になる。

・だらだらこっちで生きられても困るので寿命がある程度決まっている。

・目的は英雄の覚醒。

・男の精神だと色々きついと予想されるので記憶を保持したまま精神の女性化

・契約終了後の精神の男性化

・肉体的な関係を誰とも持たないようにするサポート

・何もない素の状態では厳しいだろうと思われるので生まれや能力の優遇

・契約終了後は元の世界、元の時間に回復した状態で戻る

・働きによっては元の世界でも優遇措置をとる。

・失敗してもペナルティなどは課さない。



以上だ。

俺は頑張った。ゆうかちゃんの巨乳。みやちゃんのひんぬー。メイちゃんの魅惑のヒップライン。エトセトラetc.


全てが俺に力をくれた。



俺の行動の内容としてはこうだ。



その少女は力こそ全てな情勢の時代に武功を挙げて成り上がった新興貴族の家に生まれ、自身も才能を持つが不治の病に侵された。


貴族の女として死んだも同然になったので田舎に送られたが、そこでわがままを発動して冒険者活動を始めようとした事で護衛にやとわれた英雄とご対面。

20代前半の青年。向こうの世界ではとっくに一人前の大人だ。


日頃から真面目に冒険者として働いていた事で仕事を斡旋された英雄は、最初は失礼な小娘だといやいや相手をしていた。

しかしその少女の優しさや輝くような快活な笑顔、誰もいない(英雄は護衛なので気付かれないように監視している)場所でのみ見せる儚げな表情に今にも倒れてしまいかねない辛そうな状態を知り、次第に少女を放っておけ無くなる。


その後も様々冒険を重ね、前向きな少女の言葉と行動、しかし日に日に調子が悪くなっているように見える少女に英雄は心を掻きみだされ、苛立ちすら覚えるようになる。


ある時、唐突に陥ったピンチを少女の隠していた力で切り抜けた折に少女が倒れ、彼女がもう長くないことを知る。そして、隠していた力を使えば使うほど、加速度的にその時間は少なくなっていくことも。


もう冒険はやめるように言う家族の静止を聞かない彼女に英雄は怒り、これまでにない口論に発展。

その結果、英雄は彼女の本当の思いやまだ残る幼さ、それすら忘れさせる気高さ、誇り高さに触れる。



英雄は、彼女の本質を知ったのだ。



今まで通りの、しかし確実に違う関係で冒険をする2人、少し照れくさい空気すら流れていた。

英雄は彼女との残りの数年を大切するつもりだった。少女の心が、その在り方がとても尊く、どうしようもなく好きになっていた。彼女をただの護衛対象ではなく、自分のパートナーとさえ認めていた。





そして、悲劇は訪れる。




魔族の大攻勢。

予想外の方角からの進行に人族は対応が遅れ、彼女たちはそれに巻き込まれていく。

集団で避難するもいよいよ追い詰められた時、少女は自分の家に伝わり、最も才能のあると言わしめた力を全力で行使する事を決意する。


必死で止めようと説得する英雄に痺れ薬を盛り、それでも「」止めようともがく彼をギルドマスター達に抑えてもらう。


彼女は言う。

このままでは多くの死者がでると。

なんとか出来るのは自分だけだと。

自分の命を使うならそれは今だと。


そして、まだ花開いてすらいない、理解もできていない淡い思いを英雄に告げる。

彼女からすればただの思いを告げただけ、周りからすれば告白以外の何物でもないそれを受け、呆然とする英雄。


そんな英雄を笑い、

『そもそも私死ぬ気なんてないし、勝手に殺すなばーか』

そういって、彼女は出ていった。



彼女の活躍は、轟く衝撃として翌朝まで続いていた。




その後魔族からの攻勢は勢いが削がれ、人族の援軍が到着するまで持ちこたえることに成功する。



結局、彼女が戻ってくることはなかった。



終わり。



完璧ではなかろうか?

最後の方はそれまでに得ていた情報と最後の方に見えた光からの予想だが、ほぼ間違いない。

これは英雄も覚醒不可避だろう。

そして少女として活躍していた時に使っていた名前が『ユーミス』だ。


力を使い果たして俺は死んだが、個人的な気分でもあいつの事を守れたのだから悪くない。

問題があるとすれば長い間『私』を使っていたせいで一人称に違和感があるくらいのものだが、それも時間とともに慣れるだろう。



あとは現代に戻るだけ、


…だと、思っていたのだが……。




「は?今なんと?」


『いやだから、まだ戻せないの』


「なんでですか?!」


『いやだって、君いつまでたっても役目はたさなかったじゃん。私だってずーっと我慢して君が現れるの待ってたんだよ?でも全然現れないし…。あ、この子見てみ?ユーミスちゃんって言うんだけど、君の代わりに英雄を目覚めさせてくれたすごい子なんだよ。めっちゃ不憫だし、なのにすごいいい子だし、もう私も惚れたね』


「いやそれ俺ーーー!」


『…えっ……』


「それが俺です!気づいてなかったんですか?!」


『ま、まじかぁ…え、でも…えぇ……。なんであんないい雰囲気になってんの…てっきり敵キャラで絡んでくると思ってたよ………』


「ま、まぁいいです。とりあえず仕事をしたということさえ認めてもらえればいいんです」


『あー……。ごめん、実はそれでもやっぱり無理なんだよね。ユーミスちゃんの亡骸を魔族の指揮を取っていた1人が魔王のところまで持っていっちゃってさ、魔族相手に大立ち回りした君を魔族として生き返らせようとしてるのよ。そうじゃなくても最後の生き様が英雄視されて英霊になることが決定してたりもしてさ…』


「……え、あの…じゃあどうなるんです…か……?」


『特別にこの世界への永住を認めます。向こうにも話通しておくので安心してね。いい感じに行けば神格化も出来てそこまで行けば分体を作って向こうにも帰れるから……よろしく?』


「ちょっと!勘弁してくださいよ契約守って下さい!」


『う、うーーん…でも……魂が宿らない状態で蘇生されちゃうと、人形のように使われた挙句英雄くんも殺されちゃうんだけど……』


「えっ…あいつが…ですか……うぐぅ……」


『ね?頼むよ…』


「…………うーーー……分かりました…とりあえずあいつが死ぬまでなら……」


『よし!よかった!!じゃあ行ってらっしゃい!』


「…納得いきませんけど、あいつが死ぬまでですからね……?」


『うんうん。とりあえずそれまででもいいからお願いね』


『はい…あ、ちょっと待ってください俺の精神ってもうちゃんと男性化されてますよね?』


『行ってらっしゃい!!』


『えっ、ちょっと!だまし〜……』




この後、敵として英雄と戦ったりキュンキュンしたりイチャイチャしたりして神へと至り、同じく神へと至った英雄に遂に堕とされて永遠にめちゃくちゃ愛されて世界に戻れないハメになった。





~完~






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