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「いいかげんにしてよ」
背後に居る奴に言ってみた。
さっきの酒場を出てから、ずっとつけられてる。
こいつは、そんなに尾行が上手くない。
あたしは、すぐに気づいた。
警戒しながら、しばらく泳がせてみたけど、このままだとあたしの今夜のベッドまで、ついて来そうだ。
一応、ハンドガンには手を伸ばしておく。
「オーケー、オーケー」
路地の暗闇の中から、月明かりの下に男が出てきた。
痩せてる。
身のこなしからすると傭兵か?
男は両手を上げて武器を持ってないことを示した。
油断はしない。
「俺はハインツ。あんたさっき、酒場の店主にアルゴのことを訊いてたな」
「さあね」
「とぼけても無駄だぜ。この街の先にある廃墟をアジトにしてる『狂犬』アルゴさ」
これは図星。
あたしは「狂犬」を追ってる。
あたしが復讐しなきゃならない親父とアルゴが一時期、仲間だった事実を突き止めたから。
別件(ゴリラみたいな野盗リーダーを倒してパスワードを手に入れた件)を追ってる途中で、この話にたどり着いた。
酒場で情報収集してたのを聞かれたか。
カウンターの端に、そういえばこの男が居たな。
「実は俺もアルゴを狙ってる。協力し合わないか?」
「あたしと? こんな女一人と組むなんてどうかしてない? もっと荒っぽい奴らと組みなよ」
「ハハハ。あんたが、ただの女じゃないことは知ってるぜ、ミーコさん」
あたしを知ってる?
少し、嫌な予感。