プロローグ
最低でも一週間に一回投稿できればな〜と思っています( ´͈ ᵕ `͈ )
最初の10話くらいはできるだけ毎日投稿していきます(๑•̀ㅂ•́)و✧
次の更新は今夜10時です
古今東西、あらゆる世界における神々が住まう幻想郷。
人智を超えたはるか先にある不可侵の領域。
その地をふむことが許された神々たちとその御使い以外、決して触れられぬその楽園ーーー通称「クラストリカ」の中心部。
いくつもの荘厳な建物が並び立つ中、一際目を引く大きな白亜の塔、その最上階にて。
「・・・・・・退屈だ」
ーーー1人の少女がその見目麗しい顏を不満げに歪ませていた。
壁や床のみならず、調度品に至るまで白で統一された中、それでもなお一際輝く白銀の髪は首の後ろでひとつに結えられ、腰にゆったりと流れている。
けぶるようなまつ毛に縁取られた黄金の瞳に薔薇色の唇、顔を構成する全てのパーツがまるで奇跡としか言いようがないほど完璧に配置されている。
年の頃は10、11の幼さでありながらその中性的かつ神秘的な美貌は既に完成された芸術品のようである。
部屋と同じ純白の軍服身にまとった少女は太ももまでの短いズボンから除くスラリとした足を組み吐き捨てた。
「くそっ・・・・・・退屈すぎる!」
その美貌から放たれたとは思えぬ暴言に、少女の斜め向かいの机に向かっていた青年が顔を上げ、これまた整った顔を歪ませた。
「クロノアール様。なんという言葉遣いをなさるのです」
肩までの淡い青をとかしたような銀色の髪に同色の瞳。白い少女と同様に中性的ながら、こちらはどこか儚さを感じさせる優しげな顔立ちであり、少女程ではないものの美青年と言っても過言ではないだろう。
そんな青年の窘めるような口調に、少女ーーークロノアールは益々顔を顰めた。
「なんだ、シルヴィ。言葉遣いの注意なんて、君はボクの母親か?ママなのか?よし、今度から君のことをママと呼んでやろう」
「何故そうなるのです!?せめて父親・・・・・・いえ、そういう問題ではなく!」
ケッとでも言いそうなクロノアールに対し、青年、こと、シルヴィは顔を引き攣らせた。
「君が母親か父親かは心底どうでもいい。問題は今、ボクが退屈なことだ!」
「退屈なら仕事してくださいよ、私に丸投げしないで!」
見てください!と言わんばかりにシルヴィが指さす先には、机に山と積まれた書類の束だった。
「え、やだよ。ボク仕事嫌い」
「取り付く島もない!そもそも仕事嫌いって理由で人に仕事丸投げしてたあなたに驚きですよ!」
「だって嫌いなものは嫌いだもん」
自分がおかしいのか?と言わんばかりの表情に、シルヴィは益々顔を引き攣らせた。
「もう、いいです・・・・・・ここ数百年で諦めましたから。クロノアール様・・・・・・いえ、神帝陛下はそういう神でした・・・・・・」
ガックリとうなだれる姿は涙を誘う上、その原因であるクロノアールに同情の気配がない事がより一層哀れである。
シルヴィがここ、クラストリカにこの少女ーーー神々の頂点に立つ神帝ーーーの御使い、という名の従者として生まれ落ちてはや数百年。
仕事嫌いな主の理不尽な我儘にはとうの昔に諦めと共に慣れたのだ。
仕方ないから後で主の好きなケーキでも貰ってこよう、そうすれば機嫌もなおるだろう・・・・・・そう心に決めた時だった。
「うん。よし、決めた」
「はい?」
明らかに何かを企んでいるらしきクロノアールの顔に、正直嫌な予感しかしない。シルヴィの長年の経験が全力で警報を鳴らしている。
ーーーそして残念ながら、そんなシルヴィの予想はたいていの場合当たるのである。
「決めたぞ、シルヴィ。明日から有給休暇をとろう!」
「はぁ!?」
恐れ多き神々のさらに上に立つ最高神、神帝付き御使いとして生まれながらに最高の振る舞いと言葉遣いを極め、その立ち振る舞いはクラストリカでも随一と称されるシルヴィの滅多に聞かないような素っ頓狂な声が響き渡ったーーー。