〜〜〜はてこい〜〜〜 アンダースペル
第七話
夜も更けて、店はいつもの常連客達で一杯、しかし視線は隣の美女に集まる。でもそうか、ボクが壁になっているから、誰もちょっかいを出せない。マスターの狙いどおりだ、理由が判った。まぁ、いいけれど、お酒も進んで聞いてみた。
「ボクは昭和63年の3月生まれだけど、レイコさんはいくつなの? 生年月日は?」
ずっと微笑をたたえた彼女の顔が少し曇り、下を向いてしまった。早まって失敗したかなと思ったら、ボクの耳元に顔を寄せて囁いた。
「1989年の、1月 …日なの。」
考えた。年下なのが嬉しいけれど、「(西暦で言うか? 何か問題でも!?)」と。でもボクはイッコ上、ピンと来た…
「あ、そうか! 平成元年生まれになり損ねたのか!? 昭和最後のオンナなの? あはは(笑)」
「そういう言い方止めて下さい!(笑)」
ココはジャズバー、笑いを堪えながら彼女が小声ながらも強い口調で一気に捲し立てる。
「あのね私、自分が大好きなの。名前も、今時じゃないけど気に入っているのよ。メイクもファッションも流行なのチェックしてるし、食事も考えて、フィットネスやエステに行ったりとか。仕事もお付き合いもちゃんとしている。変えようと思ったら何でも変えられる。でもね、誕生日だけはどうにもならないのよ! もう、だ い な し!(笑)」
お互いに笑いを堪えるのが苦しい。饒舌になったレイコがとうとう素の自分をさらけ出したような気がした。ずっと笑いながら話しが続く…
「ショウさん、何か楽器とか演りそうですよね?」
「ギターを少しだけ。さっきのはロニー ジョーダン、ボクはロニー ショウちゃん(笑)」
「あはは(笑)」
「スタンリー ショウちゃん、ってギタリストも居るよ、アレは反則だけど。」
「反則って何それ!? 罰ゲーム的なものなの?(笑)」
そして終電の時間が近づく。お酒の力もあり、つい調子に乗って口が滑った。
「あのさ、近くに安い宿があるけど、もうちょっと飲んで、泊まって行けば? でもウチならプライスレス! ワインもあるし!(笑)」
「…。そうね、お世話になっていいかしら?」
「(え!?)いいよ…」
聞き耳を立てている常連客達は、「(まさか、お持ち帰りするのか!?)」と思っている。お会計をして、羨望の眼差しを受けながら店を出て帰路に着いた。
そこから先は記憶があやふやだ。彼女をベッドに寝かせて、ボクは床で毛布を被ったけれど、レイコはまるで子供を受け入れるかのように布団の端を開いて誘う。そして確かにセックスをした。覚えているのは雪のような白い肌と、ベルベットのような柔らかな感触と、官能的な吐息だけ。でも翌朝に彼女は居なくなった。
昼近くに目が覚めて、「美女と一夜だけのエッチが出来てラッキー!」だなんてとても思えない、残念感しか無い。自分がこれほどバカだと思っていなかった。連絡先の交換もしていない。ただ、ベッドには何故か懐かしいと思える彼女の匂いが残っている。ホントにいいオンナとの情事が、嬉しいどころか悔しい、心底後悔をした。
続く
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