表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お兄ちゃんと愛しきキョーダイ達  作者: 文房 群
お兄ちゃんの愛しきキョーダイ達
5/19

そんな日常の三男


 我が家のイタズラっ子、三男くんを紹介します。

 

 

 長男、次男と続きまして紹介させていただきます、三男くん。

 コードカラーは銀色。

 キョーダイの上から三番目で、長男くん、次男くんと揃ってうちでは『兄組』と呼ばれています。

 フリーダムな一番上、しっかり者の二番目と来て、三番目の三男くんは上二人に比べたら自己主張もそんなに強くないし、わりと影の薄い感じかな? ――――だなんて。

 当初お兄ちゃんは思ってたりしましたが、そんな印象は出逢って一秒で掻き消されるインパクトのある個性が彼にも揃っていました。

 

 

 三男くんは、マッドサイエンティストでした。

 

 

 所謂愉快犯で研究オタクで社会不適合者で、他人を被検体だとしか思っていないような人でなし。

 マッドサイエンティストという言葉を聞けば大凡の人がそう答えると思われますが――――まさしくその通り。

 三男くんもそれまでに存在したマッドサイエンティストに劣らぬ、マッドサイエンティストでした。

 

 まず基本的に自室から出てきません。

 いや、食事とかトイレとか有事の時には出てくるけど、それ以外で部屋から出てくることはまずありません。

 キョーダイ会議とかイベント事には出てくるけど。

 基本家に引きこもってるヒッキーです。はい。

 

 たまに部屋から出てきたと思えば、我が家のどこかにトラップを仕掛けて、誰かが引っかかる様子を見て超嘲笑ってます。

 しかもただのトラップじゃなくて、妙な後遺症の残るトラップ――――自作のお薬の実験をして、その経過を観察してます。

 なんでも三男くん、自室で一時的に身体の作りを変える薬やら、ホルモンの分泌を低下させたり促進させたりする、十代の脳みそじゃ到底考えつかないような研究をしてるそうで。

 お兄ちゃんのみならず他のキョーダイ達も、実験体として良いように使われちゃったりしてます。

 

 例えば――――廊下を歩いてたら、三男くんの仕掛けたトラップに嵌って魚のように網で掬われたところで、霧状の何かを顔に吹きかけられて。

 気が付いたら――――髪が腰まで伸びてた、なんてことがありまして。

 え!? ナニコレ!? とかお兄ちゃんが驚いていると、床下から作業椅子に座って現れた三男くんが手元のメモ帳にガリガリなにやら書き込みながら、お兄ちゃんを眺めて。

 

 

「ん~と、部位限定で毛髪を活性化させる薬剤は問題無し、っと…………あっ。ごきょ~りょく感謝しま~す」

 

 

 そのまま床下へと、ボッシュートという名の逃避。

 網に引っかかったままのお兄ちゃんは無論、放置。

 せめて下ろしてけよおおおおお、とお兄ちゃんが心の中で絶叫したのも刹那、別の場所からまるでトラップに引っかかったかのような悲鳴が聞こえました。

 そんな感じの、三男くんです。

 うっわぁぁい、良くも悪くもマイペースゥ!


 とまあ、そんな『兄組』三番目のお兄ちゃん、三男くんですが。

 彼の性格は、マッドサイエンティストなだけに、言わずもがな。

 

 

 嫌なヤツです。

 

 

 基本的に人を見下して見下して更に見下しまくった言動で、嫌味ったらしい皮肉を最悪なタイミングで吐きます。

 しかも、わざと。

 その場の空気をぶち壊し、一人「ヒヒヒッ」とほくそ笑む。

 更には他人の暴かれなくないトコロを容赦なく暴いては貶し、蔑み、おちょくり、茶化し、怒りを煽ってはその反応を楽しみます。

 ね? 嫌なヤツでしょう?

 お兄ちゃんも最初の頃は超やられました。

 しょっちゅうやられました。

 その度に精神すり減りましたが、三男くんの事をよく分かってる弟組のお陰で持ち堪え、今ではやり返す程になりました。

 というか、ある程度やり返したら心なしか皮肉がソフトになりました。お兄ちゃん的比率で三十パーセントほど。

 どうやら三男くん、兄弟に対しては皮肉もソフトクリームのようにソフトになるようで。

 長男くんや次男くんには容赦なく皮肉を吐きますが、弟達に向けては表現が柔らかくなります。

 やっぱりマッドサイエンティストでも、弟達には甘いようです。

 わりとちょっかいかけてるし。


 しかし、どうしてそこまでも嫌な性格のヤツなのか。

 その理由は三男くんの普段の言動からひしひしと分かるように。

  

 

 彼、そもそも『人間』というものを見下してるんですわ。

 

 

 「何それ中二病ですかフハハハハ!」的な答えではありますが、事実そうなのだから仕方がない。

 なんというか、お兄ちゃんも本人じゃないので詳しいことは分かりませんが。

 三男くんは、『人間』そのものを見下しているようです。

 なので口癖のように「これだから人間ってヤツはさ~」や「人間だもんね~」など、明らかに遥か高みから見下してる発言があります。うっわ性格悪っ。

 

 でも、三男くんって『見下してる』だけなんですよね。


 なんていうか、馬鹿にしてるけど、凄いと思ったものは素直に認めるし、尊敬もする。

 初対面の人とかに口では色々言うけど、ちゃんといい所も悪い所も見てる。

 そのあたりは次男くんと違って、まあ、結局は人間が好きなんだよね。

 

 その事を指摘したら一週間ぐらい拗ねられたけど。

 全く素直じゃないんだからぁ三男くんは!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ