そんな日常の次男
次は、我が家の次男くんについて紹介します。
十人キョーダイの上から二番目。
長男くんをリーダーに見立てたなら、サブリーダーの位置に就くみんなの纏め役、次男くん。
コードカラーは水色。
普段ちゃらんぽらんなところがある長男くんに代わり、日常的にキョーダイの代表となっている、正直長男くんより敬われている感ある我が弟です。
これといった渾名は無いです。
普通に名前に+『兄』と呼ばれています。ちなみに全弟達から固定です。
そのあたり、長男くんとの信頼の差が出ています。
ははっ、頑張れグレたん!
性格は温和。
全体的に落ち着いていて、いっつも微笑んでいます。王子のように優雅に。
言動もどことなく上品で、お勉強も運動も出来ます。
文武両道ってヤツですね。
他の弟達と同じ場所で育ったのに、まるで上級階層の貴族生まれのような立ち振る舞い。
考え方も良識的で、争いを好まない心優しい性格です。
キョーダイ限定だけど。
そうです。例に及ばず、コイツもブラコンです。
グレたん程じゃないけど、かなりブラコンです。
いやマジで。
人間表裏があるもんだな、と否応なしに痛感させられるようなブラコンです。大切な事なので三回繰り返させて頂きました。
もう一度言います。ブラコンです。
まあでも善良的で人当たりも良くて親切でリアル少女漫画の王子様であることに変わりないんですけどね。
でも次男くん、腹に物凄いもの抱えてるんですよ。しかも自覚無しにニュートラルに。
具体的を上げると――――まず街中で弟の一人が迷子になります。
捜したところ、弟がとある女性に保護されていました。
次男くんは弟を保護してくれた女性に懇切丁寧にお礼を言い、別れたところで弟に言います。
「駄目ですよ紫。迷子になったとしても知らない女性について行っちゃ。彼女がタチの悪い病原菌だったらどうするんですか」
まあ、誰もが「ふぁっ!?」ってなるよね。
お前さっきまでスッゴイ丁寧な対応してたじゃん、とか思うよね。
病原菌とか何、そんなこと思ってたのとか思うよね。
何この手のひらの返しよう。
え? じゃあさっきのお前のあの対応何だったの? って思ってる傍らで、とっても綺麗な目をして次男くんは続けるんです。
「特に女性なんて何を持ってるか分かりません。だからくれぐれも女性に近付かないでください。あれは汚らわしい生き物ですから」
とっても、プリンスな笑顔で言うんです。
そうです。この例でも分かるように、次男くんは女性が嫌いなんです。
なんでも歳上の女性が嫌いんだとか。
ちなみに自分より歳下の女の子は別にそんなに嫌っていない風を装ってますが、お兄ちゃん知ってるんですよ?
この前迷子の女の子を迷子センターまで送った時も、その後念入りに手を洗っていたこと。
つまり彼、水色の次男くんは潔癖なまでに異性が嫌いということです。
ついでに言うと異性どころじゃなくて同性でもそんなに好きじゃない。
言い方を変えれば他人に対する心の壁が半端じゃなく高くて堅い。
理由は「何を仕出かすか分からないから」。
だから次男くんは自分のことは自分でするし、与えられた役割も全部自分でします。
一種の人間不信で、自分とキョーダイ以外の他者を信用出来ないそうです。
かくいうお兄ちゃんも最初の方は本当に業務的会話しか次男くんとしていませんでした。
だってあの子、ナチュラルに腹が真っ黒なんだもん。
悪意はないけど、善意もないんだもん。
そんな次男くんですが、深く関わろうと思わなければわりと円満な人間関係が築ける常識人です。
いい子だよー? 心の壁さえ無ければねー。
あと、弟に頼られるや暴走しがちになるクセさえ無ければ。
前にも言いましたが、次男くんはグレたんに劣らずブラコンです。
長男くんに対しては心の底の尊敬の念と普段のちゃらんぽらんなところに対する軽蔑とでプラマイゼロになってるけど、弟達に対する愛は負けず劣らず。
例えば――――イチゴが食べたいと零した弟に、翌日大量のイチゴをどこからか持ってきて渡した時。
「ありがとう水兄」と笑顔で言われ、弟が他の兄弟にもお裾分けしに庭に行った後。
お兄ちゃんと次男くんしかいないリビングで、爽やかプリンススマイルで弟の背中を見送っていた次男くんは、そのままその場に崩れ落ちて床を殴りながら。
「俺は……っ!!! この瞬間の為に生きている…………!!!!!!」
と、そのまま十分ぐらい胸を押さえて悶えてました。
いやマジ引いたわー。お兄ちゃん超引いたわー。
グレたんみたいにオープンじゃない分ドン引きしたわー。
ちなみに弟達にはそういうブラコンな面隠してるっぽいけど、一部にモロバレてるのに気付かず普段プリンス笑顔で乗り切る分引くわー。
「キョーダイの笑顔の為に生きている」と真っ直ぐな目で言う次男くん。
まあ、女性嫌いだったり他人が嫌いだったりするけど、悪いやつじゃないんです。悪いやつじゃあ。
ただ、週末にお兄ちゃんの寝床に来てこの一週間で誰のどこが可愛かったとか尊かったとか、惚気るのやめてもらいませんかね。
お兄ちゃん、寝れないの。真面目に。
頼むから、お兄ちゃんを寝かせてください。