マリカ
対戦は明日行われることになっており、本日の試験は終了となった。
ケンは帰り支度を整えると、すぐに帰宅した。
明日は本番だ。この一か月、この日のために修行してきた。明日に向けての最終調整のために、ケンはランニングで帰ることにした。
途中、ケンが公園に寄ると、そこにはマリカが植物たちと戯れていた。
「マリカ? 何やっているんだ」
「あ、ケン君。こうやって植物たちの様子を確かめているんだ」
マリカは草木を触り、様子を確かめている。機嫌が良いのか、普段と違いにこにこしている。
「……ケン君、明日はよろしくね」
「ああ」
「今日握手したときさ、手がすごいゴツゴツしてて驚いたよ。相当努力しているんだなってことがわかったから」
マリカはケンに向き合った。
「……この学校の生徒は皆、あまりそういった努力をしないから、なんか新鮮で。皆すごい素質を持っていると思うんだけど、努力することがあんまり好きじゃないんだよね」
「それ、ばあさんからも聞いたな」
「ばあさん?」
「あ、いや、何でもない」
ケンとシグナの関係は他の生徒には知られていない。別に隠す必要もないのだが。
「それに加えて、皆自分よりすごい人を見ると適わないと思って諦めちゃうんだ。だから霊力値が極端に高いイブキに挑戦する人なんていないの。でも、ケン君は自分より強いヨハンを見ても、諦めずに勝つための努力を怠らない。だからイブキも君のことをかっているんじゃないかな」
マリカは正直な感想を言う。
「ケン君は私たちに勝つために努力してきたのはすごく伝わってくる。でも、私たちにも勝つ目的はある。だから、明日は本気で戦うよ」
「もちろんだ。言っておくが、俺はしぶといぞ。体力と我慢強さには自信があるからな」
「うん。じゃあ私は帰るね。……さようなら」
マリカは立ち去った。
「……なんか、いつものマリカとは違ったな。俺も気を引き締めないと」
ケンは再びランニングを再開した。