一次試験
ついに、クラス内対抗戦の日がやってきた。
体育館には、クラスの生徒たちが集まっている。
ケンはあれからずっと同じ修行を続け、戦闘力を鍛えてきた。今日はそれを発揮する日だ。
「……よし」
燃えているケンのもとに、イブキが近づいてくる。
「どうですか、特訓のほうは」
「順調だったよ。それに……」
ケンはイブキをちらりとみて、
「お前に助けてもらったしな」
といった。
「……楽しみにしてますよ」
そう言うとイブキは去っていった。
「おい、お前イブキといつの間にか仲良くなってたのか」
そんな二人の様子を見ていたヨハンとミスティが、ケンに話しかけてきた。
「以前ちょっとね。それより、わかってるよな」
「何がだ?」
「俺は本気で優勝を狙っている、ってことだ」
「……ふん。そうはさせないぜ」
ケンとヨハンの間に、火花が散る。
「でも、ケン君はまず一次試験を突破できるかどうかじゃない?」
と、ミスティが言った。
「一次試験?」
「クラス内対抗戦は、能力テストをする一次試験と、試合をする二次試験に分かれてるのよ。一次試験の成績上位者8名が、二次試験に進めるってわけ」
「なるほどな」
「まあ一次試験は霊能力の他にも、身体能力のテストもあるから、そっちで頑張れば突破できるかも」
「なら、そっちで頑張るだけだ」
ケンが徐に立ち上がる。
「どこ行くの?」
「ランニングだ。体を温めるためにな」
といって走り始めた。
「ずいぶん燃えてんなー」
「でも、一か月修行したくらいじゃ優勝は無理でしょ」
「そうか? 案外行けちゃうんじゃね。まあ俺は負けるつもりはないけど」
「もちろん私もよ」
「まあとりあえず、一次試験は適当にやろうぜ」
ヨハンはやる気のない声を出す。
「では、次はケン君。霊能力測定に入ります」
「はい」
「この機械に向かって、全力で霊能力をぶつけてください」
先生に呼ばれたケンは、目の前にある機械に向かって閃光弾を放った。
「えーと、数値は……840ですね」
「……ちょっとは、上がったかな」
全力を出して息を切らしているケンは、些細な数値ながらも上がったことに喜んでいる。
「じゃあ次は、身体能力測定に入ります。まずやることは……」
こうして一次試験は順調に進んでいった。
「では、試験の結果を発表します」
一次試験が全て終わり、生徒たちは教室に集められた。
「一次試験合格者は、ご覧の八名です」
合格者一覧が、紙で貼りだされた。
そこには、イブキ、ヨハン、ミスティ、マリカの名前があった。
ケンは自分の名前を探した。すると、一番下にケンの名前があった。
「お、俺も合格だ!」
「ケン、すげえじゃねえか!」
ヨハンはまるで自分のことのように喜んでいる。
「ほんとおめでとう。正直一次試験を突破できるとは思わなかった」
ミスティは少し申し訳なさそうにしている。
「お、おめでとう、ケン君」
マリカも控えめだが、祝福しているようだ。
「さて、では二次試験ですが、対戦表はこのようになりました」
先生は、もう一枚の紙を黒板に張り出した。
その対戦表を見てみると、ケンの相手はマリカだった。
「俺の相手はマリカか」
「あ、ケン君、よろしくね」
マリカはおずおずと手を差し出した。
「ああ、よろしく」
ケンはその手をしっかりと握った。
「……」
その手を握ったマリカは、何かを考えている。
「ケン君。マリカは普段はオドオドしているけど、意外と戦闘は強いから、油断しないようにね」
「心配するなよ。俺は手加減ができないからな」
「全力を出すことしか知らないだけだろ」
ヨハンがケンを茶化した。
その様子を、イブキが微笑みながら見守っていた。