表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JOKER  作者: 二見
プロローグ
5/55

イブキ

「はあっ、はあっ」


 およそ一時間ほど戦い続けただろうか。ケンの体力は限界近くまで来ていた。その場に座り込み、体を休めていた。


「でも、これくらいやらなきゃ強くなれないからな……」


 持ってきたお茶を飲みながら、ケンは頭の中で今後のスケジュールを立てていた。

 そんなときに、不意に後ろから、


「ずいぶん無茶な修行をしているんですね」


 と声がかかった。

 ケンが振り返ってみると、そこには学校で見覚えのある少女がいた。


「あれ、クラスで見たことがあるな。君は?」

「私はイブキ。クラスの委員長をしています。一週間ほど前からあなたの修行を見ていました。何というか、バカみたいな修行をしているんですね」


 そういいながら、ケンのもとへと近づき、隣に腰を下ろす。


「ああ、よろしく。そんな前から見られてたのか」

「学校での会話から、あなたが強くなりたいのはわかりました。なぜそんなに強くなりたいのですか?」


 イブキの質問に、ケンは真剣に答えた。


「……第一は、ヨハンたちに追いつきたいから。ちょっとしか戦ってないけど、俺と彼らにはかなりの差があることはわかったからさ。あの実力が羨ましかったんだ。そしてもうひとつは……」

「もうひとつは?」

「……何だかわからないけど、強くならなきゃダメな気がするんだ。なんか、そう告げられている気がして」

「……よくわかりませんね」


 ケンの回答に、イブキはしっくりきていない。当のケンにもわかっていないのだから無理はない。


「それより聞いたけど、君は規格外の霊力があるんだろ。それを存分に使えたらさぞ気持ちいいだろうな」

「そう簡単なものじゃないですよ。自分の中にある霊力をすべて使えるわけじゃないんです」

「へえ?」

「以前全力を出そうとしたら全身に激痛が走りました。おかまいなしに霊能力を使い続けていたら、体中から出血したんです。流石にやばいと思って直ちに使用中止しましたけど」

「……それは、すごいな」


 大きすぎる力をもっても大変なんだな、とケンは思った。


「まあそれはともかく、私はあなたに期待してますよ。できれば戦ってみたいですね」

「言っておくけど、俺はクラス内対抗戦で優勝する気だからな。誰であろうと負けるつもりはない」

「修行は間に合いますか?」

「間に合わせてみせる」

「……ふふ、頑張ってくださいね、ジョーカーさん」


 イブキはいたずらっぽく笑った。


「なっ……」

「俺はジョーカー。お前らの内にある邪を浄化する……」

「や、やめてくれ。恥ずかしい」

「あら、自分で名乗ったんでしょう」

「そ、それはそうだけど。だって本名を名乗るわけにはいかないだろ」


 普段の堅物さからは想像できない様子を見せるケン。


「そういう表情もできたんですね」

「え?」

「だって、いつも真面目な感じでしたから。近寄りがたいって思ってる人もいるんじゃないでしょうか」

「……俺ってそんな風にみられてるのか」


 イブキの言葉に、落ち込むケン。


「……なるほど、ただ不器用なだけだったんですね」

「確かに、コミュニケーションはあまり得意ではないけど」

「そうですか。今日はあなたについていろいろと知ることができましたね」


 イブキは立ち上がり、


「では、私は失礼しますね。あまり無茶な修行のしすぎで体を壊さないようにしてくださいね」

「ああ、ありがとう。また学校で」

「ええ。また明日」


 そう言ってイブキは去っていった。


「……よし、俺も帰るか」


 フラフラと立ち上がった後、ケンも帰路へとついた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ