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混沌
血の海に浮かんでいた。
とっくに黒くなった海に、また紅の液体が流れ込んでくる。けれど、それらもすぐに黒く染まった。
冷たくて熱い液体に流され、揺られ、沈みかけては浮かぶ。吐き気がするような血の臭いには、もう慣れた。
音がしない。感覚といえば、自分が浸っている液体の温度だけが頼りで。
自分という概念があやふやになる。
真っ暗だ。暗い。黒い。見えない。光がない。
手を動かそうとしても、血がこびりついて、絡まって、動けない。
汚れすぎた両手。
きっと、自分の血よりも、他人の血の方が全然多いのだろう。
どうして、こんなことをしてたんだっけ?
そもそも、ここはどこ?
何のために、僕は××を××?
何かあったはずだった。大切なもの。でも、もう溶けて消えた。
消えてしまった。
だから、どうせ意味なんてないんだろう?
再び、真っ赤な雨が降ってくる。溶けるような熱さが肌を焼く。
痛いような気が、した。
もう良い。もうどうでも良い。
いっそ、このまま。
そして、ギリギリで浮かんでいた僕の体が、黒い海の中に沈んでいった。




