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真・恋姫†無双〜冷静と情熱の狭間〜  作者: §K&N§
第一章 終わりの始まり
1/14

prologue

皆さんこんにちは!


§K&N§と申します。


よろしくお願いします!

 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ…………


 心電図の規則正しい電子音を聞きながら、病室のベッドの脇にある椅子に深く腰掛け、俺はじいちゃんの手を両手で握っていた。


「じいちゃん……」


 おもわず声が漏れる。


 ベッドで静かに眠るじいちゃんは、医者の話では今夜が山らしい。


 思い返せば、俺はじいちゃんがいなかったらどうなっていたんだろうか?






 9歳の時に、両親と俺と妹が乗る車にトラックが突っ込み、両親と妹はこの世を去ったが、神の気まぐれか、俺だけが生き残った。


 その後、親戚達と共に葬儀をしたけど、俺を引き取ってくれる人は誰もいなかった。


 もともと俺の両親は駆け落ちをして結婚したので、親戚からしたら俺は厄介なお荷物だったらしい。


 周りから冷たい視線を受ける中、そんな俺を引き取ってくれたのがじいちゃんこと、北郷一心ほんごう いっしんさんだった。


 じいちゃんは俺の父親の叔父に当る人で、性格は正に現代の生きる侍そのもの。


 北郷家の先祖が開祖である北郷御影流剣術の師範代をしていたが、弟子もおらず、独身のまま鹿児島の山奥で修業に明け暮れ、親戚達からもうとまれていたようで、厄介者は厄介者に任せるのが一番だったらしい。


 そして俺はじいちゃんに引き取られ、一緒に鹿児島で暮らすこととなったんだけど、引き取られた当初、俺は事故のショックで心を閉ざし、誰とも関わろうとしなかった。


 そんな俺が立ち直ったきっかけは、じいちゃんが師範代を務める北郷御影流剣術を始めたことだった。


 地元の学校に通いながら、じいちゃんと共に剣術の修業に明け暮れる内、次第に心を取り戻し、5年の歳月を有したが、俺は両親と妹の死を乗り越えることが出来た。


 また、毎日剣術の修業に明け暮れる内に、どんどん腕も上がっていき、つい半年前、15歳の誕生日に北郷御影流の免許皆伝をじいちゃんから言い渡された。


 免許皆伝を言い渡した時、じいちゃんは喜んでくれたし、何より俺自身認められたことは本当に嬉しかった。


 そんな矢先、じいちゃんが道場で倒れた。


 救急車を呼び急いで病院に向かい、診察を受けた。


 その結果は心筋症。


 長年に渡る激しい修業が心臓に負担をかけ、もはや心臓が限界らしい。


 そして今に至る。









「うっ……」


 目の前のじいちゃんの瞼が微かに開く。


「っ! じいちゃん!」


 おもわず身を乗り出し叫んだ。


「一刀か……」


 普段のじいちゃんからは想像も出来ない程弱々しい声をあげる。


 じいちゃん……もう永くないな……。


 くそっ、泣くんじゃねぇぞ俺!


 笑顔で見送ると決めただろう!


「じいちゃん……体調はどうだ?」


 俺は努めていつも通りを装う。


 正直、気を緩めたら泣きそうだ。


「……一刀」


「……何だ?」


「私はもう永くないのだろう?」


「っ!?」


 おもわず息が止まる。


「私の体のことは……私が一番わかる」


 やめろ。


「お前が立派な剣士になるのを見届けられないのは残念だが……まあ、致し方ないな」


 やめてくれ!


「……フッ、何を泣いておる?」


「えっ?」


 気付けば一粒の雫が頬を流れていた。


「一刀……私はお前に免許皆伝を言い渡した。だが、その証となるものをまだお前に授けていない。そうだな?」


「あぁ……」


「そこで、私はお前の師匠として、道場の神棚に奉ってある刀をお前に与え、それを免許皆伝の証とする」


 ゾクリとした。


 じいちゃんのその言葉は、俺が真の意味で北郷御影流を継承するということに違いないのだから。


 あの刀にはそれだけの価値があるのだ。


「……一刀、死とは人間であればいつか必ず訪れる別れだ。だが、それよりも大切なものがある。何だかわかるか?」


 じいちゃんは臨終間際とは思えない程鋭い眼差しでそう俺に尋ねた。


 だけど……俺にはわからねぇよ……。


「死んだら終わりじゃねぇか……」


 もう涙は止まらない。


 声も震えている。


「それは違う。終わりではない。私が死んでもお前がいる。お前は私のわざを、剣士としての心得を引き継いだ。一刀、お前はもう、北郷御影流を修めた侍なのだ」


 衝撃的だった。


 俺が……侍?


「良いか一刀、お前が学んだ北郷御影流もまた、そうして代々受け継がれたものなのだ。私が受け継いだそれもお前に渡せた。私はそれで満足だよ」


 そう言ってじいちゃんは穏やかに笑う。


「でも…俺はまだまだ未熟だよ?人に教えられる余裕なんてないよ」


 そう、未熟なのだ。


 俺自身、侍と呼べる程、精神もわざも完熟していないと思ってる。


 ましてやそれを俺が誰かに伝えていくなんて……。


「ハッ!そんなこと、今のお前に期待してなどいないわ。それにお前は、免許皆伝になったからといって、修業を止めるか?」


「それはない。断言出来る」


「ならばそれで良い。お前自身が誰かに教えていけると思った時にやればよい。それまでは自らを高めよ。お前はこれからなのだからな。それに、たとえここで私の肉体が滅びても、魂はお前と共にある。だから大丈夫だ」


 ニッコリと笑いながら、じいちゃんは一通り言いたいことを言うと、疲れたように目を閉じた。


 俺はこれから……そうだ。


 俺は何をすべきか、これからゆっくり考えていけば良い。


 もう涙は出ない。


 悲しくないと言えば嘘になるが、それより今じいちゃんに伝えなきゃいけないことがある。


「じいちゃん……」


「……何だ?」


 じいちゃんがこちらへ振り向く。


「この6年間、貴方から学んだことは俺の誇りです。本当にありがとうございました」


 じいちゃんの目を見てそう言って、深々と頭を下げた。


 じいちゃんは驚いた顔をしていたが、すぐに笑顔になって、


「あぁ……安心した…………」


 そう呟いて、穏やかな顔をしながら永い眠りについた。














 じいちゃんの葬儀は、亡くなった翌日に近所の方々が中心になって行ってくれた。


 葬儀の様子を見て、あらためてじいちゃんがどれだけ近所の方々に慕われていたかがよくわかった。


 それから一週間、親戚達に連絡をして回ったが、誰ひとりとしてじいちゃんの墓参りに来なかった。


 まあ、俺もじいちゃんも、あんな薄情な親戚に来られても嬉しくないけどね。


 そして一週間経った今、白い胴着に黒い袴を着た俺はじいちゃんの道場にいる。


 理由は一つ、じいちゃんから授かった刀、「千代桜ちよざくら」を神棚から降ろすため。


 台座に乗り、神棚の刀を手に取る。


 ずっしりとした重量感は刀自体の重さだけでなく、歴史の重みもあるのだろうか。


 それなのに、ぴったりと俺の手に吸い付く感覚もある。


 鞘はワインのように赤黒いが、漆塗りなのか赤黒さを引き立てるように艶やかで、鍔には龍の彫刻が施してあり、職人の技が際だっている。


 そして、柄の部分には刀の名と同じ桜色の当て布が巻いてある。


 じっくりこの千代桜を見たことはなかったけど、あらためてこの刀を手に取り、正直俺は気圧されている。


 これが受け継がれ続けた重み。


 だけど、俺はコイツを離すつもりはない。


 じいちゃんの葬儀の時、俺はじいちゃんの誇れる侍になると決めた。


 そのためには、今までのような木刀だけの鍛練じゃダメだ。


 北郷家に代々伝わるこの刀を使いこなしてこそ、真の意味で北郷御影流の継承者になれると信じている。


 台座から降り、俺は道場の真ん中で立ち止まると、柄に手をかけた。


 ……じいちゃん、見ていてくれよ。


 俺は……じいちゃんを超えてみせる!


 高ぶる気持ちを抑えるように深呼吸をすると、俺はゆっくりと千代桜を抜いた。


 シャリン、と金属が擦れる独特の音が道場に響いた。


 そして、抜いた千代桜の刀身を見た時、俺は言葉を失った。


 微かに青みがかり透き通った刀身は、鏡のように磨き貫かれており、その刃は触れたもの全てを切り裂くと思えるほど鋭利である。


 なんて美しい……。


 素直にそう思った。


 だが、その時、異変は起きた。


 キィィィィン!


 刀身からまばゆい光がほとばしる。


「えぇっ!?ちょっ!?いきなり何が!?」


 待て待て待て!


 何だこれっ!?


 ってか、これ刀に吸い込まれる!?


「うわぁぁぁぁぁ!!!」


 断末魔が道場に響く。


 光が止んだ時、そこにはもう誰もいなかった。


今作品の一刀君はそこそこ強いです。


ただ、現段階では一般兵より強いといった程度。


当然将軍クラスには太刀打ち出来ません。


徐々に強くしていきたいと思います。


そして、ネタバレになってしまいますが、ここの一刀君の一番の売りは、御遣い補正がないことです。


まあ、要するにここの一刀君は天の御遣いなんていう胡散臭い存在にはならないということですな( ̄▽ ̄;)



ならべくご都合主義にはしないように気を付けますので、どうか皆さんも楽しく読んで頂けたら幸いです。

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