表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

失望

夏休みが終わり、秋になり治の通う田舎の学校でも進路相談なるものがあった。


「とーちゃん、来週中学校で進路相談ち、言うとんあっとけど、、来てくるっね?」


「とーちゃんが、行ったっちゃ分からんばい、、先生と治が良かごて決めんね」


「・・・・うん・・・」


治は不安であった、、まだ中学生、それも初めての高校受験、、

いや、、初めての人生の分かれ道の選択、、


暗闇の向こうに何があるのかさえ分からない、、、


それを、「自分の問題だ」と正論で諭された不安。。


治にしても自分の父親の事を良く分かっている。

高校の事や勉強の事は全く分からない筈、

しかし、、


一緒に来てほしかった。


母親はと言うと、、、もっと酷く、、


「ダメダメ、、かーちゃんじゃ、先生に笑わるってん、、治ん方が分かっじゃろ?」

「かーちゃん、邪魔になっだけじゃけん・・」と取りつく島すら無い、、、


「親は無くとも子は育つ」


そんなのは嘘だと思った。


治はその日から、親に相談をしなくなった。

何事も一人で決める子供になった。


面談当日。


「治高校はどこを受けるんだ?」


「鹿児島R校ば受けたかとばってん。。」


「ん???とうちゃん、かぁちゃんは知ってるのか?」


「任せると言われた」


「そうかー、私立だけど学費とかは?」


「しょーがきん・・ち言うのば受けたかとばってん、先生どがんかな?」


「うん!治の成績ならたぶん大丈夫だろう!」

「調べていてあげるよ」


「はい!」


治はまさに天にも昇る気持ちで返事をした。


数日後の夜。


治はいつものように古い家の2階の屋根裏にベニヤ板貼り付けただけの、

「自分の部屋」のこれまた古い丸い食卓で勉強していると。


下でいつものように焼酎を飲んでいる父親が、


「治!!ちょこ、降りてこんかぁー!!」と機嫌悪そうな声で怒鳴っている。


子供の頃から怖い父親であったので、さほど気にせずに1階に下がって行った。


そこには酔っぱらったいつもの父親が座って、、

その横に、中学校の治の担任である「都会の先生」が驚いた眼をして座っている。

治は内心、、「とーちゃん、、かっこわるかぁー」と思いながら。


治は立ったまま、「なんね?」


「先生に聞いたとばってん、うんや鹿児島に行きたかとてや?」


「うん・・」


「どがんして、そがん大切な事ば言わんとやーーー!!」とすごい剣幕。。


治は慣れてるが、、都会の先生は正座してガチガチに固まっている。


治は「言うたっちゃ、分からんじゃろ」・・内心は(聞いてくれんやったやろが・・)であったが、、


すると、、父親が手元にある焼酎の入ったコップを治に投げつけて、、


「こん馬鹿が!お金やどがんすっとか!!」


コップは治には当たらなかったが、焼酎がかかった、、治の嫌いな焼酎の臭いがした。


「国から出してもらうけん、よかと」


「うんや、なんば言いよっとかーーお金借りてまで高校ごちゃっとこ行かんでよかっちゃーー」

「馬鹿が!!もう高校ごちゃっとや行くなぁー船に乗れーーー」

「銭んば借りてまでして、行ったち言うたら、村中ん者んか、笑わるっとぞーーー馬鹿が!!」・・・・

と凄い怒り様である。


「都会の先生」は横で、、固まっているだけ。


治は先生に助けてもらいたかったが、、

先生は「治良くお父さんお母さんと相談して決めなさいよ」とだけ言うと、

逃げるように帰って行った。


治は「恥ずかしさと」「見捨てられた悲しさと」で、何も言わずに自分の部屋に上がって行った。

その日はそれ以上の話は無かった。


しかし、治は色々と考えていた。

「全く見えない、想像すらできない未来と言う暗闇の向こうを・・・」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ