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進路(高校)

中学3年生の夏、治は悩んでいた


高校進学、、どうしよう、、


治は3人兄弟の一番上、、中学3年の春までは

「就職」と言う選択肢に疑問すら感じたことは無かった。


遠洋漁業か都会に集団就職で出ていくか、、

母親は「治が良かごてせんね」としか言わない。

父親は全く言わない。


高校進学など全く考えてなかった。

3年生になり、新しい先生が転勤して来て、その先生が3年生の担任になった。


その先生が「多種多様」な「都会の風」を運んで来てくれた。


初めて、「校外模試」と言うものも経験した。


真っ白な紙のテスト用紙が治たち生徒には驚きと言うよりも感動だった、

普通は茶色い、消しゴムですぐに破れるテスト用紙しか知らなかったから、、、


3年生の4月にその先生が「県下一斉校外模試」を受けさせてくれた。

たぶん費用もかかったのだろうが、、、そのお金がどこから出たのか治は知らない。


受けたのは治とヒロちんとあと2名の4人だけ。


後は誰も受けない、、


小さい学校だから、みんなすごく仲がいいもちろん喧嘩はするが、

いつも一緒に遊ぶ。

でも、、勉強などは全くしない。


治の村は普通だが、生徒の中には「隠れキリシタン」の村の子供たちもいたし、、

「落ち武者(たぶんそうだと思う、、)」の子供たちもいた。


差別だとかそんな事など分からない素朴な田舎の子供たち。


隠れキリシタンの村に遊びに行くとどこの村にも古いけど立派な教会があり、

子供たちも真面目に「ミサ」には顔を出す。


学校の先生の言う事は全く聞かないやんちゃな子供でも、神父様の言う事は直立不動で聞く。

もちろん親もそうである。


中学生になると、祈りの言葉を皆覚える、、全く勉強しない奴らが、登下校の時間も惜しんで

小さい本を読みながら歩いている。


そして覚えたかどうかのテストがあるのだが、、

それにめでたく合格すると「聖母アリア様」の小さな「ロザリオ」を神父様から頂ける。


だから、中学3年生にもなると男も女も首からシルバーのチェーンでロザリオをぶら下げている、

それは取りも直さず「信仰心の表れ」であることはみんな知っていた。


その村のお墓などは一風変わっていて、普通の墓石の上に十字架が付いている。

仏壇?も和洋折衷みたいな感じ、、


高校に入ってから、「キリスト教の弾圧」を学んだ時に妙に生々しく友達や村を思い浮かべた。

同じく高校に入ってから「源氏と平家」を学び「壇ノ浦を知り」

落ち武者を学んだ時も「源氏に負けた平家が落ち武者となり逃げて来て、隠れ住んだ。」

それが友達のルーツだと思うと「友人」の歴史を深く考えた、、もちろん中学時代はそんなこと何も考えなかったのに、、


治の中で知識と現実が混同し出した頃でもある。


学問が妙に生々しく感じて「身近」なものとして治の体の奥深くに入り込んで来る。


中学生までは全く感じなかった、学問の側面を感じだす頃でもあった。



初めて受けた県下一斉でその「問題」は露見した、、


ある朝のホームルームの時である。

「都会」の担任の先生がいつものように教室に入ってくる。

級長の「きりーつ」「れい」で一日がスタートする。


いつものように先生の話が始まる。


「今日は皆に嬉しい報告があるよ!!実は先日4人が受けた県下一斉模擬テストの結果が出た。

その結果、、治がなんと!県で16番だった!!」


先生は嬉しそうに、、それも大層に、、皆を見渡して言った。

だが、、生徒の殆どは何を言っているのかさえ分からない、、といった反応。


当の本人の治はと言うと、、

「へ~~1番じゃなかったんだ、、」と言う軽い驚きぐらいであった。


模擬テストを受けた3人は、各々が治の顔を見ている程度。


治の横の席のヒロちんが、、「治すごかねー」と口を開いた。

それに答えるように先生が、、「県で16番は凄い!治この調子で頑張れ!」と治に向かって言葉をかける。


ある生徒から、、「治は天才じゃけん、あたりまえばい」と声が出る。

それがきっかけで、生徒たちが、かって気ままな事を話し出す、

「治より頭ん良か人っちゃおっとな?」と言う女子。

「治かっこんよかねー」と言う隠れ治ファン、、


殆どの生徒がそれぞれの言葉に多分納得してる様子であった、、


治はこの中学校の生徒の間の「誇り」でもあった。

後輩などは昼休みに勉強教えにもらいに来る。

勿論放課後などは4~5人が教室にやってくる。


バレー部のほうは弱小中学だった為に、、

一回戦であえなく敗退、、2セットストレート負け、、、、9人制だったが、

サーブを最後の一人が打てないぐらいの圧倒的点差で敗退。


クラブが終わってからは、、毎日放課後になると後輩の「治参り」が日課となる。。


でも、殆どが「女子生徒」だった。



「都会」の先生の驚きはその後も続く、、次回の模擬テスト「15番」その次「20番」その次「14番」・・


しかし、、その先生の驚きの原因は順番ではなかった、、テスト内容である。

ずべての模試での数学の点数である。全て「100点」・・・

そのテストは各学校で行うのだが、、

本当の驚きは、全てのテストで治が数学のテストを解くのに掛かった所用時間であった。

50分の制限時間のテストを治は毎回15分ぐらいで事も無げに終わらせる。消しゴムすら使わない。

それでいて満点。

先生の驚きはその点だった。

勿論、社会と理科も全て「100点」国語は漢字が全く駄目で、、「90点前後」、、

英語は苦手らしく「80点」取れるか取れないか、、と言う感じで他の4教科は制限時間をしっかり使って解いている。

数学だけが15分で解きその後はボーーっとしている。


「治、数学好きか?」と先生が聞くと治は「はい!!」と嬉しそうに答える。


その先生が進学を治に薦め、親も先生が説得してくれたお陰で。

治は高校進学を決意する事になる。


一人で考えていたら出てくることの無い結果であった。


その日から治の高校に向けての「高校調べ」が始まった、、

受験勉強など全く気にもしていない。

何故なら、就職と心に決めていた治だが、毎日勉強はしっかりやっていたからだ。

だから、特別にやることも無かった。


心配なのは、「高校って何?」と言う疑問と「どこの高校に行けばいいの?」と言う選択だった。


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