恋心
ある日の昼休み、治は先日見た「購買部」にジィを連れて行ってみた。
初めて見た日と同じように沢山の生徒がいた。殆どが上級生だと感じた。
ジィが「何ば買うと」と聞いてくるが、別に何を買うわけではないから、
「別に見に来ただけばい」と言う。
帰ろうとしたその時後ろから、「おさむー」と女性の声。
振り返ると憧れのバレー部の「先輩」だった、入学式の通学路で会ったっきり会って無かったから、
治は嬉しかった。
購買部の周りにいた人達の数人が声の方を見ていた。
先輩が笑顔で治に近づき「どがんね?学校は?」と聞いてきた。
「うん、、」と治は言う。
「この子、私の友達の京子!この前会ったから知ってるよね!」と横の友達を紹介してくれた。
入学式の日は全くその京子と言う2年生の女生徒には治は気が付いてなかった、と言うより顔を見てなかった。
「こんにちわ~~」と京子が笑う。その笑顔を見て治は、ビックリした。
小柄で、ショートカット、目が大きくて、色白。セーラー服姿が可愛い。
治は先輩に対しての憧れとは違う何かを瞬間的に京子に感じてしまった。
「一目惚れ」であった。
京子は「伊藤君凄いんだってねー」と言う。
「何がね?」と治。
「頭良いんだって?」
「そがん事、無かよ」
「皆知ってる事やもん」と笑って京子は言う。
治はこの時初めて
「男」として「京子」を好きになっていたのだった。