子ライオンに「もふれ、カス」と言われました
ある日、道を歩いていたら猫科がいました。
猫科です。
猫じゃないです。
「・・・」
見なかったことにして通り過ぎたら、前に回り込んできました。
「もふれ、カス。ヒューム(人族)は獣人を見たらモフらずにはいられないんだろうが。モフってもいいんだぞ。お前なら許す」
「・・・」
そう言われても、成猫よりデカい猫科に言われると怖いです。
豹やチーターよりも小さい。でも、猫科です。
デカすぎ。
けれど、口調は尊大でも、モフれ、ですよ。
大きさは怖いですが、俺様ならぬ、俺ちゃまです。
ツンデレか!
あざとかわいいツンデレ俺様か!
いえ、あざとかわいいツンデレ俺ちゃまです。
許せる。
寧ろ、もっと言え!
くぅ~。このかわいい生物、なんなんだ。
刺客か。完全に殺しに来ている。
かわいすぎて死ねる。
くお~。
「俺様がモフっていいと言ってんだから、モフれ! ライオンをモフる機会なんて、滅多にないんだぞ!」
「いや、それはちょっと・・・」
デカいと思ったら、子ライオンでした。
デカいはずです。(※作者注:動物園でお披露目される生後数か月の子ライオンは既に大型の成猫より大きいです)
子ライオンとはいえ、ライオンをモフるなんて、怖くてできません。
「モフれよ~! 番いなんだから、モフれ、カちゅ!」
「・・・!」
目に涙を溜めて言われました。ついでに最後、噛んでる。
「ごめんなさい、モフります! 番いかどうか、知りませんがモフらせて下さい! だから、泣かないでください!」
成猫より大きくても、子どもであることに変わりはありません。
泣きそうな子どもを放っておくことはできません。
モフりました。
モフりましたとも。
自称、番いの子ライオンは泣かずに言いました。
「もっと、モフれ、カス」
「番いだというなら、カスなんて言わないで」
「なら、名前を教えろ」
「え?」
番い詐欺だったら、どうしよう。
番い詐欺というのは、番いを自称して、番いだからと好き勝手やって、『やっぱ、番いじゃなかった』と 言いだして、それまでの時間と精神的被害と経済的被害を与える結婚詐欺です。
でも、もう、モフっちゃったし。
番いじゃなかったとしても、それがわかるまでモフる特権をフル活用しよう。
ライオンをモフる機会なんてないし。
番い詐欺だと言われるまで、モフり倒そう。
ここまでの思考時間0.001秒。
「私の名前は――」
◇◆
あれから5年。
番いじゃなかったと言われることもなく、成人した子ライオン(元)と結婚まで至りました。
どうやら、本当に番いだったようです。
PS. 成長と共に、あの尊大な口調は治りました。




