一日目
カレンダーの数字が新しくなったからといって、運命がリセットされるわけではないらしい。
明日が臨時休業だという近所のスーパーは、まるで略奪にでも遭った後のように殺風景だった。もぬけの殻になった棚を見つめながら、私は「神様にまで見放されたのか」と溜息をつく。仕方なく、売れ残った萎びた野菜と、安売りもされていないレトルト食品をカゴに放り込んだ。これだけで、今日と明日を食い繋がなければならない。
レジは、同じように食い扶持を求める人々で澱んでいた。 ようやく自分の番が来て、財布から小銭を出す。指先が妙に冷えていたせいか、一枚の100円玉が指の間をすり抜けた。
硬質な音を立てて、100円玉が床を転がる。
「あ……」 咄嗟に拾おうと腰をかがめた時だった。
横から伸びてきた、シミだらけの老婆の手が、私よりも早くその銀色の硬貨を掠め取った。
老婆はそれをさも「自分が落としたもの」という顔で平然と懐に入れ、そのまま何食わぬ顔で袋詰めのコーナーへと消えていった。一瞬の出来事だった。周りの客は自分の会計に夢中で、レジの店員は無機質な手つきでバーコードを読み取り続けている。
叫ぶほどの額ではない。けれど、あれがあればコンビニで安いチョコのひとつでも買えたはずだった。私の100円を飲み込んだ老婆の背中を見送りながら、私はただ、支払いを終えたばかりのスカスカのレジ袋を強く握りしめた。
────残り、364日。先は、恐ろしく長い。




