005 土曜日の夕方のピザ会議
1話読み切りのショートストーリーです。
どの話からでも、姉妹の何気ない毎日を楽しめます。
※水、日、更新中!
土曜日の夕方。
仕事もバイトも部活も被らず、めずらしく全員が揃っていた。
「ここに第524回、清音家の家族会議を行いたいと思います」
いつにもまして真剣な表情の夕夏。
ダイニングテーブルを囲む3人の中央には小さな紙片がひとつ。
『お好きなピザ1枚70%OFF!』
新しくオープンしたお店のクーポン。
普段なら高くて嫌遠するピザも今日だけは射程範囲。
年に数回のコスパの悪い外食が楽しめる日!
「お肉!この肉スペシャルにしようよ!」
スマホを姉2人に見せる花夜。
そこには焼肉や唐揚げが乗った、超こってり超ボリュームなピザが。
「私は油っぽいの苦手なの」
夕夏がついっとスクロールしてシーフードミックスを指差す。
「やだよそんなの!今日も沢山走ったんだからカロリー!」
「サラダ油でも飲め!」
「児童虐待!」
「私もまだ児童だわ!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ清音家の年下ふたり。
毎日繰り返される光景に、長女が一人大きく嘆息をしてボソリと言った。
「……マヨコーン」
これが大人の正解。
とんでもないドヤ顔だった。
「ま、まあそれは置いておいて」
「う、うん。ごめんね真昼お姉ちゃん」
「なんでよ!?美味しいよマヨコーン!」
「僕がトーストで作ってあげるから!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ清音家。
「僕は成長期!」
「あんた去年から1mmも伸びてないでしょ。私は3cm伸びたわ」
「成長済みにも人権を」
それからしばらく言い合いは続き、すっかり夕飯時になった清音家。
誰のかはわからないけど、お腹がさっきから鳴り続けていた。
疲れ果てた夕夏がスマホを取った。
「もうこの唐揚げとエビののハーフピザを注文するわ」
「お肉へるけどもう僕むり」
ぎゅるるるる。
「私のコーン……」
「バランス悪いし僕サラダでも作るね、コーン多めで」
「お持ち帰りならドリンクサービスだって。真昼ねえ車出して―」
決まると早いがけっきょくバタバタしていた。
30分後
「……唐揚げピザおいしっ」
「僕エビのほうが好きかも」
「……ムシャ……ムシャ」
「真昼ねえが無言で食べてる」
「気に入ってくれたんだよ」