表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

言わなきゃよかった

作者: 大森ギンガ

「私のことどう思ってる?」


あれは夏の終わりだった。


ちょっと涼しくなり始めた頃で、セミすらも泣くことに飽きているように感じた。


そんな日にあんなことを聞いたのは、本当に間違いだったと思う。


そもそも聞かなくたってよかった。



あの人はいつも通りで、たまに話しかけてくれて、たまにノートを貸してくれて、たまにこっちを見てる気がしただけ。


それでもう十分だったのに。


でも、次に進まなきゃいけない気がした。

理由もなく勝手にそう思い込んで。


それで言ってしまった。

聞いたら多分何かが変わると思って。


「わかんない」って言われた。

その顔がすごく普通だった。

怒ってもいないし、照れてもいないし、何かを期待してた様子もなくて。

ただ、そんなこと考えたこともないみたいな空白の返事だった。


その瞬間、私の中のいろんなピースが、音も立てずに崩れた。


それから何があったわけでもない。

でも話す回数は減ったし、ノートも貸してくれなくなったし、目が合うたび、気まずそうな空気だけが間に挟まるようになった。


「私のことどう思ってる?」


たった一言だった。

でも、その一言はなんでもなかった日々を過去に変えるには十分すぎた。



今でもたまに思う。

言わなければ、あのままずっと曖昧でいられたのにって。


でも、あの日の私には曖昧でいるっていう選択肢の重さがまだ分かってなかった。



好きだったんだと思う。

でも、確認しようとした時点でもうそれは恋じゃなくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ