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第20話 何もない?



 扉には放送室、と書かれていた。

 ここは廃墟としか説明されていないから詳しいことは分からないけれど、学校だったが、大型ショッピングモールだったか、それとも何だっただろう。


 この場所に人があふれていた時に思いをはせながら、内部へ踏み入る。


 部屋の中には何もなかった。

 首をひねりながら、放送室を回っていく。


 特にかわったものはない。


 ちょっと血しぶきが散らばっていたりするけど、少年の亡骸があるとかそういうわけではない。


 あるのは、靴とか服とか。

 そんなのが転がっているだけ。


 それなら後は、ここに置いてあるスタンプを手に推して、非常階段を使って一階の廃墟入り口に戻るだけだ。


「あっけないな」


 だが、これ以上怖くならないなら、それに越したことはない。


 安心して胸をなでおろしていると、放送室の扉がバタンとしまった。


「な、なんだ!」


 扉の方を見てみるがその近くには誰もいない。

 なら、外にいる誰かが閉めた?


「ケ ケ ケ ケ ケ ケ ケ!」


 すると、扉の向こうからけたたましい笑い声が聞こえてきた。

 女の子の声だ。

 それは先ほど聞いた声と同じで。


「あ、いない」


 あの妙にタフな精神をした女の子が。


 もしかして、あの子スタッフ側!


「モウ、デ ラ レ ナ イ ヨ!!」


 すると、一瞬で周囲の景色が変わっていった。

 壁や床が、グロテスクな肉色に変貌していく。


 ぶよぶよとした質感が、足から伝わってくる。


「うぇ、気持ちわるっ」


 唐突な変化は、それだけじゃない。

 何かの液体みたいなのが流れ込んできている。


 その液体を踏みしめた靴が、じゅっと音を立てて溶けた。


 溶 け た!


 僕は慌てて、液体の無い場所へ逃げる。


「しゃ、シャレになってないだろ!」


 演出以前の問題だ!


 これでは、怪我をしてしまう。


「だ、出してくれ! もう降参! ギブアップ!」


 僕はすぐさま白旗をあげるけれど、部屋の外からは笑い声が聞こえるだけ。


 認めたくない。

 でも、これってつまりそういう……?


 本物の怪奇現象!?


「うわぁぁぁぁ、ちょっと待てよ、待ってくれよ。こういのって気づいた後にじわじわ追い詰めてくのがセオリーだろ。鈍かったんだからそこらへんは融通しろよ」

「やだ」


 あ、そうですか。

 そこだけマジに返答しなくても。


 なんて言ってる場合じゃない。

 なんとかここから出ないと!



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