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妖界放浪記・長編  作者: 善童のぶ
二章 妖都征圧阻止編
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三十四話 頼りの綱の2人

お久しぶりです。

こちらもなるべく進めていきます!

妖都に着いた俺達は地下の在処を探っていた。

やけに静まった妖都の散策は危険だが、全員で分かれて探していた。烏天狗と女天狗は西と東で分かれ上空から。悟美と紗夜は北を。俺と雪姫で南を探す。

俺も足と体力はかなり上がったので、全速疾走しても疲れねえ。寧ろ、走るのが退屈に思えるくらいだぜ。

「見つからねえな。地下なら地面壊すとかで探せると思うんだが?」

「特殊な空間を組み込まれているから、地面をただ破壊するだけじゃ見つからない。化け狐が言ってたでしょ?」

「確かにな。何か方法とかねえのか?」

「……ちょっと試してみる」

雪姫は立ち止まり、地面に手を置く。手を置いた場所から冷気が染み込み、地面を凍土へ凍結する。

凍結した箇所なら雪姫が簡単に操作する事ができる。地下空洞まで簡単に道を開き、俺達はそこへ飛び込んで侵入する。



悟美と紗夜は地下へ通じる場所の箇所を見つけていた。

悟美と紗夜は探しものには非常に敏感だ。嗅覚、聴覚を駆使し、地下に通じる穴をある程度把握する。

これは悟美が持つ人間離れした感覚。人一倍以上の勘を持ち、地下に通じる空洞を探り当てた。

「紗夜、私から離れて…」

「悟美ちゃん…?ねえーって⁉︎なんで地面を殴ってるの⁉︎殴る所じゃないよ⁉︎」

普段は挙動不審な紗夜が叫ぶ。

ドーンと爆発音を響かせ、三節棍で地面を陥没させていく。悟美は物理手段で不可侵の地下へ強行突破するつもりだ。

その光景に、思わず隠れていた者達が外に出てくる。妖怪や人間もそうだが、中には監視している分華の分身もいた。

(あの女……まさかな?)

分華は悟美を一度見たことがあるも、分身が破壊された記憶が曖昧であった。見間違いだと思い、妖怪達の影から手裏剣と短剣を構え、影から悟美に目掛けて放つ。

殺傷重視に特化した猛毒の手裏剣と短剣。擦りさえすれば象も死に至る。


しかし、悟美にも恐ろしい幻影者(かのじょ)が憑いている。


紗夜は殺気を感じ取り、その視線は既に隠れる分華を捉えていた。一瞬で武器を弾き、紗夜は消えた。

「なぁ………ほえ?」

思わず声を上げた。それが分華の命取りとなる。

分華の首は一瞬にして切断された。それを知る時間もなく分華は葬られた。

音となく、移動した痕跡すら気付けなかった分華は絶命する。しかし、これが分身体であるのは紗夜も気付いている。

「だ!ダメですって。悟美ちゃんに手をだ、出したから悪いのです‼︎」

言葉とは裏腹に容赦ない紗夜。その様子を見て、悟美は笑顔でお礼を言う。

「シシシッ!紗夜ありがとう」

悟美は集中して地面を破壊していく。

大胆に破壊しているように見えるが、実際は違った。

悟美の《狂乱》には身体能力以外に作用する効果がある。あらゆる異能や妖術、結界に『攪乱』を与え、全ての力の正常を乱す力を有する。それがあるため、悟美は地面に付与される不可侵の結界を破壊できる。

紗夜はそれを邪魔させないように、次から次へとくる分華による暗殺を無効化し、確実に妖怪達を確実に一瞬で葬る。

破壊する者。守護する者。それぞれが役割を果たし、目的を達成させる。

信頼している者同士、その信頼度は常軌を逸する。

僅か1分で結界を破壊した。悟美は紗夜を置いて一人で穴へ落ちていく。

薄暗い空間に降りた途端、悟美は妖怪に囲まれた。悟美と紗夜に対し、妖怪は数百人。とても太刀打ちできる人数ではないと誰もが思う。

支配された妖怪の戦闘能力は飛躍し、異能を所有する人間より厄介だ。しかし、その代償として、秋水による意識剥奪で自我が封じられている。今の妖怪達は侵入者を惨殺するための駒に過ぎない。

悟美はそんな彼らに何も関心を抱かない。

別に軽視しているわけでもなく、憐れみの視線を送るわけでもない。ただ、地下の更に先を見つめる。

妖怪が有象無象溢れる地下空間に降り立ち、三節棍を地面に擦る。

自由を与えられた今、悟美が彼らを標的にすることはない。

自我を封じられた妖怪など、自分達の相手にならないからだ。

「紗夜、ありがとう」

悟美のお礼を伝えた後、殺気立つ妖怪は次々と倒れていく。意識は消え、全員無力化したのだ。

紗夜は悟美の影から現れる。

「あ、あの!私…ちゃんとできました…か?」

弱々しく聞く紗夜。悟美は笑顔で微笑む。笑顔を見て、紗夜は胸を撫で下ろした。

「じゃあ行こうかしら?殺して良い人はなんだっけ?」

「あ、はいっ!秋水…と名妓。後は…貞信です」

「え〜?全員殺しちゃ駄目なの〜?」

「ヒィッ‼︎」

不満げに笑う悟美、酷く怯える紗夜。二人の会話は不思議にも成り立つ。

「シシシッ!やっぱり紗夜はいいわ。分かった、三人だけ殺しちゃっていいのね?紗夜はさっきの人ともう一人を生け捕りってことで合ってる?」

「合ってる…大丈夫‼︎」

「えへへ!じゃあ幸助君達は置いてって、私達が殺しちゃいましょ。どうせ來嘛羅に頼まれちゃったことだし、今日は楽しんじゃお〜」

悟美は來嘛羅の『契り』を自分から引き受けた変わり者であるが、彼女にはその程度のことで恐怖などしない。それどころか、この状況を心底から楽しんでいる。

一方、紗夜はずっと怯える仕草をするばかりであるが、明らかに実力者としての力を持っている。下手をすれば、悟美よりも強い。

異能の力を隠すのは、妖怪の妖術と異なり、願望から開花した力。その力を看破するには、特殊な存在または異能や妖術による解明が必要となる。來嘛羅のように見抜ける者は僅かしかおらず、閻魔大王ですら見抜く力は所有していない。

異能は口にしなければ大抵は対処が難儀であり、伝承ある妖怪が持つ妖術とは異なり、伝承に基づかない力を持つ人間は厄介なのだ。妖術に対する対策は施せても異能の対策は困難なのだ。

悟美と紗夜は互いの性格が噛み合わない。なのに、長い年月を共に過ごせるのはそれなりの訳があるのだ。互いに信頼し、互いを思いやる。

互いに親しい感情を向け合い、互いを理解し合える唯一の姉妹のような存在。

狂人な悟美と臆病な紗夜。この二人が仲違いすることがない限り、彼女達と敵対するべきではない。




來嘛羅は動く。『空間転移』を行い、宵河に転移する。自身の姿を『妖怪変化』で秋水の姿に擬態する。

「やれやれ。こんな忌み嫌われる服をしおって。論外じゃが仕方がない。口調も全て真似ぬと不味いじゃろう。男言葉は苦手なのじゃがな…」

他者に擬態したのに文句を呟く來嘛羅はある地下空間に入る。

その姿を見た者達は酷く怯えた。自分で首を絞めようとする者。失禁して立つ力を失う者。髪をむしり殺意を向ける者。どれも目を疑いたくなる光景だ。それほどまでに、秋水によって虐げられてきたのだ。

支配して後は死ぬまで飼い殺し。いや、それ以上の扱いを受けていた。まさに畜生に等しい扱いを受けている彼らが地下空間に閉じ込められている。

來嘛羅の決意は決まる。その瞳は敵を睨み、弱者を憐れんだ。

「なあオマエら、オレ様が怖いか?」

來嘛羅は声帯も変え、彼らに問う。ここまで酷い仕打ちがよくできるな、と。そう彼らに同情した。

怯え、もはや救いなど与えられる状況ではなかった。

妖怪には様々な感情を抱く。それは人間と変わらず、人間に勝るとも劣らない。

妖怪は人間を餌としか見ない。それは間違ってはいないし、それを今更否定もしない。

しかし、そんな妖怪だって罪悪感を抱く。苦しむ者、それも人間であるならば尚更だ。


人間は餌である以前に………。


「おい貴様!止まれ‼︎何者だ⁉︎」

門番をしていたであろう妖怪が槍で來嘛羅を威圧する。擬態はしているといえ、秋水とは違う妖力を纏っている未熟な変装は妖怪には簡単に見破られてしまう。

來嘛羅は特に言葉を発することなく、妖怪の頭を吹き飛ばす。

「黙れ。指図される筋はないぞ?」

拳を横に振るうと、他に寄って来ていた妖怪達数百を斬撃のような攻撃で葬ってしまう。

宵河にはまだ敵がいるが、それより早く済ますべく使命を遂行する。

「オレがオマエらの力が欲しくなってな。試したいことがあるんだよ。オマエらには死んで貰う」

來嘛羅の言葉に周りが騒つく。

老若男女が閉じ込められている地下は狭く、劣悪な状況で数十年生きる者もいる。秋水に認められた人間以外はこの地下から出ることができない。自由などいつ見たかという者までいる。誰もが衰弱し、抵抗も出来ないほどの弱者へと成り下がったのだ。

來嘛羅は優しい言葉を投げかけることはしない。言葉によって彼ら、己の決意を変えてしまう恐れがある。優しさが仇となり、万が一にも躊躇うことがあるからだ。

完璧な人間も妖怪も存在する筈がなく、來嘛羅も感情に敏感な妖怪なのである。ただ、感情が年月に伴い起伏する機会がないだけで、本心から剥き出すことなど滅多にない。

だからこそ、憐れに成り下がった畜生に過去に見ない憤怒と哀愁が向けられる。

幸助に抱く気持ちの真意は不明だが、少なくとも、九尾狐として人間を食らった時ですら、苦痛を与えぬように全てを奪った。

他者を無碍に愚弄するなど、來嘛羅には許せぬ仁義。

秋水の弱点を抉るために仕方がなく。そして、幸助達に後を託すために。そう言い聞かせて己は閻魔となる。

せめて、地獄を見ることなく永遠に自分の中で眠ってくれるように……。

「……じゃあな」

悲痛な思いを胸に抑え、次々と人間達の魂を食らっていく。手で触れた者は生命活動が途絶え、その場で倒れる。触って数秒で一人ずつ死んでいく光景は、人間達に強烈なものを与える。

「うわあああああ‼︎」

最期まで生にしがみつくかのように、耳を遮りたくなるような悲痛な叫び。

死にたくないとばかりに來嘛羅に襲いかかる者も数人はいた。

しかし、來嘛羅は心を鬼にして生を奪った。

「憎い人に殺される…でも、天国へ行けるなら、どうか……私を殺して下さい…」

泣きながら頭を垂れる者。その者にも容赦なく生を奪う。

加護を受けずに駒とされ、命尽きるまで自由を奪われる筈だった者達は皆、その手によって生涯を閉じた。

加護を受けていれば殺すことはできなかった。加護を望んで破棄を願う者、加護を授けた妖怪を一度殺すことのみで破棄が行える。

來嘛羅は姿を解除し、死体と化した肉体を丁重に扱う。

「すまぬな。じゃが、妾の中におれば永遠に幸せな夢を見れる。辛い目に遭い、地獄に堕とされるというのは酷かろう。家族や想い人に会えると良いな…」

静かに笑みを浮かべる來嘛羅の目には、僅かにつたう涙が光る。

涙を払い、その表情に夜叉やしゃが宿る。

「さて……監視の妖怪を皆殺しにするかの」

金瞳の目は狐目へと変わる。この状況に加担した妖怪を許すつもりはない。


天罰を下す時が来たに過ぎない。


來嘛羅は宵河の遥か上空に飛び、強力な結界を張った。逃げることも隠れることもできず、善と悪を選別する。

人数は20人。來嘛羅が天罰を与えるのは20人である。

地に舞い降り、1人目に問う。

「あ、あなた様は⁉︎」

「其方よ。何故なにゆえ人間を虐げられた?」

その者は來嘛羅の神聖な霊力に驚いて答えられない。

答えを求めているわけでない。來嘛羅は心を探っているのだ。

その者が人間に抱く心は“不快”。

見抜いた後、來嘛羅は魂を砕いた。

「人間を蔑む行為は許さぬ。機嫌を損ねた者には改心するまで、その心を砕いてくれよう‼︎」

宵河ではこの日、20人の妖怪が魂を砕かれ、その魂は輪廻転生して記憶が全て消えたのだった。中には、元々人間だった妖怪も存在し、砕けた魂は地獄へ送られた。

だが、宵河の他にも幾つかの拠点を知る來嘛羅は止まらず、秋水に加担した妖怪を狩りに空間を跳ぶ。


來嘛羅は人を無碍に扱う行動原理を嫌う。人間界で伝承として恐れられた彼女は人間嫌いにはなれなかった。

人間を嫌うつもりならば、とうの昔に、全ての人間を滅ぼすためにその力を振るっていただろう。閻魔大王は人間嫌いに等しい憎しみを抱く。それ故、地獄から一度も出ることが許されていない。

人間界に思わぬ存在がいけば災いとしかならない。來嘛羅もその一人であったが、国を滅ぼすのではなく、国を思いのままに傾けたかったに過ぎない。自由奔放に国を傾けることは罪であるが、それは彼女の価値観では全く異なる。

本当に人間を滅ぼすのなら、その時は、妖怪の命も尽きてしまう。

人間を滅ぼすという考えを抱くのは、閻魔大王や他の太古に生きる妖怪などが該当する。

來嘛羅は覚悟する。

「妖界に相応しい新風が入り込んだ。妾は一石投じただけじゃ。妖怪が人間を助け、憎き人間を滅ぼすことで憂さ晴らしになったのじゃろう。これで閻魔も黙っておれぬ。さあ己の業を恨むのじゃな閻魔よ。人間を蔑ろにしようとする業こそが大罪だと知れ」

人間同士の争いが行われたのは初めてだった。來嘛羅は初めから仕込んでいたのだ。

幸助という人物を視た時から、この結果みらいに持っていこうと上手く動いていたのである。

枷から解放された妖怪の恐ろしさ。それは未知なる恐怖の始まりでもあった……。




俺は雪姫と一緒に30分で結界に干渉し、結界を破壊した。

道を通った後に結界が待っていたが、俺の刀剣の力で中和していきながら雪姫が結界の破壊に全力を尽くした。かなり強度であったが、悟美達よりは早くこじ開けられたに違いない。

結界を破壊する間に敵に襲われる心配があったのだが、何故か襲われなかったのは奇跡だった。

暗い地下はとても広い。妖都の地下だから、それ同等に広いんだとか。降りた俺は、雪姫と一緒に秋水の奴を探し始めた。

かなり前に地震のような揺れがあった。悟美が既に侵入していることを見ると俺達はとっくにバレてるだろう。

できれば妖怪に会いたくねえな。殺すのはしたくない。

音がよく響く地面なのか、建物がなくても遠くの音が聞こえる。

この感じは、悟美達が暴れてやがるな?この調子だと……。

「問題なさそうだなあいつ。紗夜は兎も角、悟美は心配する要素ねえしな」

「そうね。幸助、この近くに誰かが潜んでる。気を付けて」

「バッチリだぜ。上手く隠れているようだがこの場所よく聞こえるんだよ!出てこい‼︎」

俺は気付いてた。あまりにも冷たい視線を感じた。尋常じゃない気配と人間離れした正体。

「幸助、声出したら余計に悪い」

「おい!てめぇが秋水ならぶっ飛ばしてやる‼︎出てこいっ‼︎」

俺は隠れている場所だと思う方角に向かって叫んでみた。

相手が痺れ切らしたみたいで、柱の陰から姿を現した。俺は秋水だと期待した。

「君が幸助っていう人ね?随分ガキ畜生な人間なこと」

開口一番、俺は女に文句を言われた。

「その口ぶり、俺の敵だな?じゃあ相手してやるよ!」

刀剣を構え、相手の出方を見た。

「そうでした!貴方様は秋水様に殺されるべき方でした。楽にするために絞め殺すと致しましょう」

俺の体が鷲掴みされたように宙に浮いた。女は得意げに笑ってやがる。

「ぐっ!てめぇ…」

「大人しく瀕死になってくださいな。そして、秋水様の生贄となれば良くて」

「ぐあああああっっ‼︎」

俺は握り潰される痛みに叫んだ。叫びが女を興奮させるみたい。

「良いですわ!もう少しで…ふふふっ」

女が俺に油断しているうちに雪姫が奇襲を仕掛ける。静かに踏み込み、刀は直ぐ女の首に迫っていた。

これで一人……。

キィーンと何かに遮られた。雪姫が驚いている。

「残〜念。雪女が私を殺せると踏んでたのでしょう?しかし、雪女如きに背後を取られるぐらい、最初から考えてましたわ」

読まれていたみたいだ。

「なるほどね。読まれてしまったみたい」

「お好きな人間は死にますわ。ばいっば〜い!」

一気に力が強くなった気がした。不味い…。

「ふざけっ—あっ………」

「幸助っ⁉︎」

俺は何かに握り潰されてしまったのだ………。



雪姫の迫真の叫びのお陰で誤魔化すことに成功。

「うわぁ、あっぶね!危うく死ぬところだったぜ」

潰されたのは俺の分身だ。

雪分身ユキブンシン』を予め発動させておいて、俺は雪姫に用意して貰った『雪鏡ユキカガミ』に潜ませて貰い、雪姫が女の背後を取った時は遥か奥まで走って向かっていたのだ。攻撃してたのは俺の『雪分身ユキブンシン』で潰されたのは本体じゃない。

あんな力、俺じゃあ対抗できる気がしなかった。寧ろ、あいつの方が強えんじゃねえのか?


 


幸助に騙された女である名妓は激怒する。

「ガキの分際でこの私を騙しやがったな⁉︎あー!巫山戯ないでくれないわ!あんなガキに騙されただなんて知られたら大変だわ‼︎」

名妓は頭を掻きむしり、途轍もない苛立ちを見せる。目が充血するほど、名妓には屈辱的だった。


だが、それは名妓だけに限らない話だった。


雪姫も同じく激怒していたのだった。分身とはいえ、幸助が目の前で殺されかけたのに酷く怒っていた。一瞬の冷気によって、目に映る光景を氷景に変えた。

「人の子よ、あなたは私の大事な人を殺そうとした。しかも、幸助を子供扱いして罵倒したこと、無闇に人を殺そうとするその姿勢、私が一番嫌いな人種ね」

辺り一帯の気温が氷点下へ移行。名妓は寒さで体が震える。

「雪女…伝承の通り嫉妬深いわ。あんなガキ相手に欲情する妖怪なんてたかが知れてるわね。秋水様があんなガキを自分の手で殺したい訳、よく理解できませんわ。妖怪は恋に盲目という言葉がお似合いですわ。特に、雪女なんかは嫉妬のあまり人を殺して生気を奪い、赤子を人に渡して抱かせるとか馬鹿みたいですわ」

名妓は気を散らさせるために言葉を並べる。精神的に煽るように雪姫に聞かせ、こちらが有利になるように目論む。

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