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次の瞬間……銃声が轟く。
だが……。
久米に命中した筈の銃弾は次々と床に落ちていく。
これが……久米のチート能力の1つだ。
獣化能力者の中では東アジアでもトップ3に入る戦闘能力の持ち主と言われてる久米だが……トップ3の残りの2人、韓国の熊社長と台湾の白き雪豹は、下手な魔法結社の首領クラスの「魔法使い」よりバカデカい「気」を近接戦闘に利用する「降魔武術」の使い手だ。
しかし、久米は……バカデカい「気」は持っていても、それを意図的にコントロールする「技術」や「能力」を持ってる訳じゃねえ。
その代りが……これだ。
獣人形態になった久米の毛皮には、とんでもない防御力が有る。
それも、一時的に毛皮の物理特性を変えられるらしい。
例えば、相手が刃物使いの時は、毛皮が斬撃や刺突を防ぐのに適した性質を持つモノに変化し、敵が銃を使ってる場合は、銃撃を防ぐのに適した性質に変る。
その上に、獣化能力者特有の高速治癒能力も「獣化能力者の中では東アジアで最強クラス」だ。
たしかに、久米を物理で殺す方法は有るかも知れねえ。
……だたし、たった1匹の狼男をブチのめす為だけに、装甲車か軍用パワーローダーを屑鉄に変えられるほどの武装が必要になるだろう。
久米の敵に回った奴らにとっちゃあ、コスパが悪いにも程が有る。
そして……今、どうやら、久米は単に銃弾を防げるだけじゃなくて……ありがてえ事に、毛皮の防御特性を跳弾も防げるようなモノに変えてくれてるようだ。
「弾種は拳銃弾。でも、連射は出来るようなので……」
姐さんが床に落ちてる銃弾を見て言った。
「ここに当たりゃあ痛えけど防げますが……弾数が多いんで俺達が出てくのは……」
俺は着装したボディアーマーを指差しながら、そう言った。
「自殺行為ですね」
「俺がこっちの連中をやる。あんたらは『魔法』で」
久米は左の方を指差しながら言った。
「わかりました」
次の瞬間、久米が部屋のドアを閉めながら猛ダッシュ。
俺と姐さんは……「魔法」で相手の位置を特定。
そして、「気弾」を放つ。
大昔のマンガに出てきた「かめはめ波」とやらとは違って、「気弾」は「呪詛」の一種。
姿が見えてても、気配を隠すのが巧い相手に当てるのが難しい代りに、気配さえ捉える事が出来れば……壁やドアを透過し、狙った相手にダメージを与える事が出来る。
俺と姐さんが攻撃した4人は……気絶。……実際に見た訳じゃないが、気配からすると……あれ?
どうなってる?
久米が攻撃する手筈になってる残り4人は、まだ無事……。
「あ〜ッ‼」
次の瞬間、「教授」が慌て出し……。
「教授」が指差してるモノ……それは……。
「落ち着け『教授』。ガスマスクしてるだろッ‼」
ドアの隙間から部屋の中に入って来る正体不明のガスだった。




