(2)
「おい、『折角のチート能力を活かしきれなかったメスガキわからせ失敗おじさん』」
「渋谷区」のデブは、そう俺に声をかけた。
「う……うるせえ……」
「なんですか、それ?」
「おい、『教授』、何も訊くな‼ 何か、そのデブが言っても忘れろ、いいなッ‼」
「気にすんな。俺や、そのマヌケみてえな体育会系の脳筋同士でよくやる……マウントの取り合いだ」
「は……はぁ……」
畜生……そう言や、このデブと連れの「新宿区」の女、あの場に居やがった……。
俺が刑務所にブチ込まれるハメになった……あの……。
「あんたら雇うには、誰に話を通しゃあいいんだ?」
「俺達?」
「あんたは要らん。正確には、例の狼男と坊主頭の姐さんだ」
「何で、俺は要らねえんだよ?」
「そりゃあ、『折角のチート能力を活かしきれなかったメスガキわからせ失敗おじさん』だからだ」
「うるせえな」
「渋谷・新宿区で、ちょっと厄介な事が起きててな……。借りれるんなら、商売敵の手も借りてえんだよ」
「なのに、何で俺は要らねえんだよ?」
「あの渾名を自分のチ○コに刺青で書いとけ。そうすりゃ、オ○ニーする度に理由に思い当るんじゃねえのか?」
「チ○コに全部書けるか、あんなクソ長い渾名……」
「まぁ、たしかに、あんたのあの能力は凄かったが……」
「……『凄かったが』?」
「俺が終りまで言ったせいで嫌な過去を思い出してえか?」
「……いや……」
「そうか。あんだけ凄い能力持ちながら『本土』の『正義の味方』にブチのめされた。それも『正義の味方』デビューから1年経ってねえ新米にな」
「おい、その話の流れで、俺のトラウマを抉るか?」
「まぁ、いいや、あんたをおちょくっても……反応が予想通り過ぎて面白くねえ……」
「おい……一体、そっちで何が起き……」
その時、操舵室の方から大きな音がいくつも……。
『緊急連絡。割れたガラスが落ちてくるかも知れないから、すぐ、安全な場所に退避。もちろん「お客さん」の安全を最優先で……』
続いて、俺達の無線機から姐さんの大声。
「おい、お前ら、甲板の前の方に……」
「その人達、日本語が通じませんよ‼」
教授は、そう言いながら……教授は英語でベトナム人達に話しかけ……。
しかし、俺達をヤクザか何かだと思ってるらしいベトナム人達は中々従おうとせず……。
待て……そう言や……おい、日本語が通じない連中を、どうやって日本国内のフカヒレ加工場で働かさせてたんだ?
もし、仮にこのベトナム人達を「返せ」と言ってる者の雇い主達も……こいつらをどっからか攫って奴隷労働させてたとしても……何で、わざわざ使い勝手の悪い連中を奴隷にしてんだ?
だが……次の瞬間、俺の疑問は轟音と共に脳裏から消え去った。
「お……おい……」
「あ〜、紹介しよう。このフェリーにやってきた兵隊さん達の現場指揮官らしい……武中尉さん……だそうだ」
操舵室から窓を突き破って落ちてきた久米の野郎と、久米の野郎に羽交い締めにされてる東南アジア系らしい顔立ちに、女にしては筋肉質の体、着てるのは戦闘服、って出で立ちのヤツは……無事だった。
「お前の毛皮……どんだけ万能なんだよ……」
あの高さから落ちて2人とも無事な理由は……久米の野郎のチート能力「毛皮の防御特性を変える」で毛皮をエアバッグ代りにしたかららしかった。




