残響が邪魔をする。
あなたの声は聞こえてる。
あなたの声も届いてる。
それでも、残響が邪魔をする。
たどたどしい残響が邪魔をする。
遠近の法則も何処か行く風、吹き溜まり。
わたしだけの個室のはずなのに、過密の反響に慌ててる。
耳をすましてもいないのに、全方位のひそひそ話。
親近の隔てもなく、カタカナになる雑音が絡みつく。
わたしだけの密室のはずなのに、品薄の記憶に焦ってる。
いつも、あなたの声は聞こえてる。
いつも、あなたの声も届いてる。
立ち止まるけど、わたしの声は生まれない。
思いとどまるけど、わたしの言葉も生まれない。
沈黙は、名残惜しい濡らした便り。
それでも、無実の残響が邪魔をする。
白と青の縁取りの、親愛なる残響が邪魔をする。
生まれない声が、わたしの言葉と閉じ籠る。
生まれない言葉が、わたしの声と混ざり合う。
まるで、閉め出された残響が、あなたの声の邪魔をする。
あなたの声に応えたいのに。
沈黙は、目に余る行間の橋渡し。
届くはずのあなたの声を、親密な残響が邪魔をする。
届いたはずのあなたの声も、親愛なる残響が邪魔をする。
いつも聞き返すけど、わたしの声は生まれない。