閑話 教室めぐりの旅 ~生徒活動室~
閑話とはいえ、すごく大事なお話です!!!!お願いだからスルーしないで下さい!
では、良ければ本編、行ってみよう!
一階を粗方めぐり終え、二階に上がってきた三人。なお、一階にあった事務室や職員室、校長室は、鍵が掛かっていて入れなかった。
「ファンタジーの定石通りなら、あの鍵が掛かってた部屋のどれかに、ラスボスがいると思うでござるよ!」
変にテンションの高い雨音が、ウキウキしながら言う。
「確かにそうだろうけど...それって言ったらダメなやつじゃないの?物語の流れ的に...。」
「うん...ファンタジーの定石を自ら壊しに行ったね...。」
雨音の型破りな発言に引き気味な二人。
「んで、どこからいったものかな。」
二階にある部屋は、三年生の教室、図書室、生徒活動室の三種類だった。
「どうする?今回も一番近い所から戦法で行く?」
「まぁ、それが一番無難だと思うよ。」
「なら、一番近い生徒活動室でござるか。」
今回も一番近い所から戦法で攻略していく三人だが、目の前にあるのは生徒活動室。定住地になっていそうな教室ワースト3くらいには入っていそうな教室である。しかしそんなことはもはや
お構いなしに、三人はずけずけと生徒活動室に入っていった。
「生徒活動室ほどネタに困る部屋って、珍しいと思うんだ。」
生徒活動室に入ると、孝弘がめんどくさそうに立っていた。
「え?何でここにいるでござるか...?」
雨音が、少し不安そうに、しかしにやけながら問う。
「ああ。お前が無理してないか、少し心配でな。様子を見に来たんだよ。」
「グホォッ....!!(吐血)」
微笑みながら答える孝弘に、瞬間K.O.を貰った雨音。
対して雅は、露骨に警戒している。
「まぁ、さっきのも半分あるんだが、もう半分は野暮用でな。ここのポンコツな作者があまりにもポンコツなせいで、生徒活動室のネタが浮かばなかったんだとよ。でも、何にもなしじゃあつまんねぇからって、俺を寄越したんだ。ったく。少しはネタ考えろ貧弱脳ミソ。」
おぉう辛辣...。すまん。でも読者の皆様、生徒活動室って難しくないですかね?いいネタ浮かびます?浮かぶならコメントで教えて欲しいんですが。(貧弱脳ミソ、いよいよ露骨なコメ稼ぎに出る。貧弱でスミマセン)
あからさまにめんどくさそうな孝弘に、警戒の色を隠そうともしない雅。
「おいおい。そんな嫌そうな顔すんなよ。あ、俺が言えた事じゃねぇか。」
「アンタ、何を考えてるんだ?」
「おっと。口を開いたかと思えば、随分と強烈な物言いだな。というか、何を考えてるって、何の話?」
警戒心むき出しの雅に、軽い口調で返す孝弘。
「アンタの考えてることがわからない。あの薬を飲むとき、すぐに危険じゃないことを教えなかったり、僕たちのいる場所をわざわざ日向に教えたり、それに、まだこの世界について、色々と知っている風じゃないか。その底の知れない腹の中で、一体何を考えてるんだ?」
孝弘に抱いていた疑問の数々を、思い切りぶつける雅。
「...フフフッ。ハハハハッ!面白いねぇ!随分と疑心暗鬼なやつだと思ってたけど、まさかそこまで俺を疑ってたのかい?」
いつも細かった目を目一杯開き、歪に笑う孝弘。
「それなら話は早いな。アンタの疑いは大方ビンゴだよ。俺は普通の人間じゃない。ただ、アンタの思うような裏のある行動ではない所もあるぜ?例えば薬の下りだが、命の悪い癖が直ったのか確かめておきたくてね。もし直っていないなら、一発キレておけば、いい薬になると思ってね。日向に接触したのは、アンタらの影響がどれほどかを把握するためだ。ここに縛られたやつは、アンタらに接触すると、なぜか解放された。その力の出所がどこなのか知りたかったのさ。それを知れれば、アンタらにも有益な情報になるだろう?」
確かに、一応筋は通っている。しかし、雅の感じた違和感はそれだけではない。あまりにも鋭い観察眼。底知れない威圧感。そして、今引き出されたよく回る頭。恐らく今言っていた理由は、虚実半々。あいつには、三人の脱出とはちがう、何か別の目的がある。そして、恐らく三人の知るなかで唯一、この世界のすべてを正確に理解している。どこまでも底の知れない男である。
「フフッ。君も随分な観察眼を持ってるみたいだねぇ?君も、騙すのが得意なクチなのかい?」
雅は意表を突かれた。こいつ、ありえないくらいに人をよく見ていやがる。
「君みたいなタイプとは、仲良くなれそうなんだが、なかなか上手くいかないもんだねぇ。さて、君には少し、俺が知ってることを教えてあげよう。嘘つきを見破ったご褒美だ。」
へらへらしながら語る孝弘。
「気づいてるかも知れないが、この世界は現実とは隔離された世界だ。ただ、アンタらは何度か、現実とこの世界を行き来している。そうして現実との繋がりを確保することによって、この世界を仕切ってる奴の支配から、ゆっくりと時間をかけて、脱していったのさ。命のやつが開発した薬によって、僅かに残された闇さえも、消し去られた。アンタらがもう一度完全に乗っ取られるには、なかなかに時間を費やさないといけないだろう。ただ、この空間にいるというだけで、アンタらの魂は、奴に侵食されていく。アンタらの思っているほど、時間は残ってねぇのさ。」
衝撃発言が多すぎて追い付けない。何度もここを行き来している?時間はあまり残っていない?
「アンタらに残ってる時間は、多く見積もって2日って所だな。それまでにここから抜けられなきゃ、最初からやり直しってことだ。」
「でも、命の薬があれば、少しは時間稼げるんじゃないの?」
かなでがふとでた疑問をぶつける。
「無理だな。あの薬は、本当に微量しか効果がない。アンタらの闇を消し去れたのは、自分たちで頑張って消したのが大きかった。他の奴らに効いたのは、アンタらに接触して、アンタらが自力で削った量と同じくらいまで消されたからだ。定住地を見た雨音ちゃんなんかは、自分の闇も知った事で、多少他の二人よりも侵食が進んでる。もう、三人とも薬が効く範囲を出ちまってるんだよ。」
またも爆弾発言が飛び出した。
「雨音ちゃんの侵食が進んでる?なら僕らは、定住地を見ない方がいいってことなのか?」
「受け止める覚悟がないならな。アンタらは、今アンタらが思うより、キツイ過去を持ってる。ある程度ぼんやりと思い出せてるんだろうが、真実はそんなもんじゃない。だが、受け止める覚悟があるなら話は別だ。現に、雨音ちゃんはその闇。っても、思い出せた範囲だけだが、そいつを受け止め、前に進む覚悟があった。あんなにへらへらしてるが、とても強いやつだよ。あいつは。」
孝弘は、彼の言葉で吐血をして幸せそうに気絶している雨音を見ながら、優しげな顔で語る。
「そんだけの覚悟が、アンタらにもあるのかって話だ。どうだい?アンタらは。そんだけの覚悟を持ち合わせているのかい?」
いつの間にかまた閉じられていた糸目をスッと開きながら聞いてくる孝弘。
「アンタなんかに確認されるまでもない。」
雅は真っ直ぐ孝弘の目を見て言う。
「雨音ちゃんも頑張ってるんだから。それに、過去を朧気にしたまま、そこから逃げるような真似はしたくない。」
かなでも、はっきりした口調で返す。
「そうかい。なら、好きにするといい。」
いつもの糸目に戻り、孝弘はそう返した。そして、気絶している雨音の方へ歩みより、
「そろそろ行くよ。頑張ってな。」
雨音の頭を撫でながら、優しく声をかけ、部屋を後にした。
"普通の人間じゃない。"
あの存在感は、彼のその言葉を納得させるだけの重みだった。そして何より、あの観察眼。あいつの目は誤魔化せないだろう。すると、雅のことも...。
考えるだけで怖気が走る。
「...んん...?」
どうやら、雨音が目を覚ましたようだ。
「あれ?孝弘君は...?」
「倒れてる間にどっか行っちゃったよ。」
かなでが優しく声をかける。
「そうでござるか...色々と話がしたかったのでござるが...。ん?どうした雅氏。難しい顔をして。」
「...え?ああ。ちょっと考え事をね。それより大丈夫かい?まさかしっかり吐血するとは思わなかったよ。」
「ああ、吐血って言っても、実際は鼻血が口から出てきただけでござる。心配かけてすまなかったでござるよ。」
あいつが雨音ちゃんに向けていた笑顔...。あれが嘘とは思えないが...。だがあいつは信用できない。雨音ちゃんを守るために、警戒しておくに越したことはないか...。
「さて、そろそろ次に行くでござるよ!」
雨音の掛け声で、生徒活動室を後にする三人。しかし雅の頭の中は、あの男...。孝弘の事で一杯だった。
「やぁ。随分と焦ってるようじゃないか。君らしくもない。」
暗い空間の中、邂逅した二つの影。孝弘は、もうひとりに軽い口調で語りかける。
「そう?いくら僕でも、焦る事くらいあるよ。」
もうひとつの影は、口調こそ優しげなものの、怒気を含んだ声で返す。
「フフッ。意外だなぁ。アンタも怒ることがあるのか。」
「御託はいいよ。一体、何をしに来たんだい?」
「ハッ、そう怖い顔をするなよ。オーケイ、本題といこうか。」
孝弘は、真剣な顔になる。
「そのうち、あいつらはここにやってくる。だから、少し良いことを教えてやろうと思ってね。」
「良いこと?」
「ああ。あの三人の中に、眼鏡をかけた緑髪の子がいるだろう?あの子は、君が攻略しやすいタイプの子だ。あの子を手玉に取れれば、他の二人も手を出せないだろう。あの三人は、仲がいいからね。」
「その言葉、嘘はないんだろうね?」
「勿論だとも。俺、君の為に色々としてきただろう?今さら嘘をつくメリットが、どこにあるんだい?」
「...そうだね。その情報、ありがたく頂いておくよ。」
この世界を巡る不穏な影は、暗い闇の中、不敵に笑うのだった。
続く...。